「サステイナビリティ」をテーマにNYで起業した女性が語る、企業が直面し始めた課題とは?:日米のビジネス事情の違いを知る(5/8 ページ)
米国でのビジネスに力を入れる日本人アントレプレナー(起業家)は、どんなことに興味をもっているのだろうか。ニューヨーク在住歴17年の女性起業家、関口匠子さんに話を聞いた。
関口: 今は私も起業をして、どちらかというと働く方々のお給料を考える側だから、人を切るのが一番簡単だということは、頭では理解しています。けれどそれって、切られる側の人たちの将来を考えずに、行うことなんですよね。その人たちには家族もいるわけなのに。明日その社員がピンクスリップ(解雇通知)をもらった場面を考えないようにするのは、すごく楽なんですけれど、私は、その行いをすることによって、その人たちにどんな将来が待っているのか、また次にどんな人材が来るのかを、先に考えるべきだと思っています。
私が今手掛けているビジネスでは、.comバブルの崩壊や、9.11、リーマンショックなどを経て、雇用される側が抱いてしまった不信感を払拭するために、「企業にできること」を提案しています。
不信を抱いた多くの人は、常に「リンクトイン(LinkedIn)」などを通じたセルフブランディングに余念がありません。一方、対岸にある雇用主は、今まで人材の使い捨てをしてきたのに、少し景気が上向いてきたこともあり、急に「さて優秀な人材はどこにいるんだ? どうやって採用する? どうやって働き続けてもらう?」が大きな課題となってきているわけです。
ここに、大きなギャップがあると感じています。実は、そのギャップはさらに大きくなりつつあ ります。なぜなら2015年、つまり今年からいわゆる、「ミレニアム」と言われる、20歳代後半〜30歳代前半(80年代〜90年代に生 まれている若い世代)が、労働の多くのパーセンテージを占める時代に突入したからです。長い間労働力の主体は、「ベビーブーマー」(概ね米国で、1946年から1959年までに生 まれた世代を指す事が多い)でした。しかし2015年に入り、今度は、「ミレニアム」が中心になってきたので、「ベビーブーマー」及び、「ジェネレーション X」(米国で1961年〜1981年に生まれた世代のこと)と呼ばれる人たちは、「いかにミレニアムを取り込めるか、 魅了できるか」を模索するようになったのです。
関: 時代が移り変わったということですね。
関口: ええ。「ミレニアムは何を買うんだろうか?」「どうやったらミレニアムの優秀な人材を採用できるんだろうか?」が、企業にとっての大きな課題となってきました。こうした時代背景を受け私は、「そのギャップをどうやって埋めたらいいのか?」を考えてみることにしたんです。ミレニアムは、「より意義のある仕事をしていきたい」という強い思いがあり、それは、私が個人的に追求してきたこととつながったんです。
そこで、問題解決法として、「企業は利益だけを追うのではなく、それを超えたような共通な大きなゴールを掲げて打ち出すことで、失った信頼を回復したり、社内外のコミュニティを創造したりできるんじゃないか」と考え、それをビジネスにしていくことにしました。
関: 具体的にどんなことをされているんですか?
関口: 主に「サステイナビリティ(持続可能性)」という考え方を企業価値に組み込んでいくコンサルをしています。例えば、「ステークホルダー」と呼ばれる、ボードメンバー、マネジメント、お客さま、従業員のマネジメントをし、長期にわたりより良いブランド(企業)イメージを持ってもらうよう働きかけたり、従業員の生産性を上げるために続けられることを考えたり。それから、サステイナビリティ自体の戦略を一緒に考えていくサービスも提供しています。
関: 関口さんがそれらの活動を通して考えている「ミッション」とは、どんなものなのでしょうか?
関口: 一番は、クライアント企業がより活発化し、従業員が自ら、「イノベーティブなことをしたい」と思わせるような文化を育てていくこです。
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