10年後になくなる可能性が高い職業とは(前編):コンビニ店員がなくなる確率は88%(4/4 ページ)
今回は、オックスフォード大学発表の論文に用いられている機械学習手法をもとに、日本で「なくなる可能性が高い職業」を具体的に考えてみます。
航空システムの最適化に向けて
続いて航空管制官について見ていきます。
航空管制官というのは、状況を俯瞰(ふかん)して、空港の航空管制塔などからレーダーや無線を用いて、フライト中のパイロットに適切なルートの指示を出したり情報を伝える仕事です。こうすることで空の安全は守られています。
多くの人たちの安全にかかわる仕事であり、また経験や知識に基づいて臨機応変な判断が求められる場面も多い職業だと思われます。
しかし、モナシュ大学クレイトン情報技術スクールの准教授であるデイヴィッド・ダウ氏が2014年12月4日に発表・寄稿した文章によると、人工知能は既にこうした領域にも及びつつあると言います。
既に今、仕事の多くの部分をコンピュータが担うようになってきている。単純計算や繰り返し計算はコンピュータに任せているし、GPSシステムもそうだ。そうして既に置き換えられているものがある一方で、人工知能が及びつつある分野もある。航空管制システムやミサイル軌道計算、自動運転車などがそうだ。
(筆者意訳。「 Machines already taking over」の1文目より)
自動操縦の技術は飛躍的に進んでおり、今や離陸以外の操作は条件さえ整っていれば自動操縦のみで行うことができるとまで言われています。非常に責任の伴う航空管制という仕事についても、今後は人工知能が担う部分が多くなっていくのかもしれません。
現在日本で行われている取り組みとしては、CARATS(将来の航空交通システムに関する長期ビジョン)というものが立ち上がっています。アジア・太平洋地域において、今後は航空機の需要がますます増える見込みですが、今の航空システムでは人間が処理する部分が多すぎて処理能力をオーバーしてしまい、重大な事故に結び付くリスクが非常に高い状況です。
こうした状況を変えるべく、CARATSは発足されました。具体的なビジョンについては、現在航空管制は限られたエリアごとに航空機を管理し、その現在位置を捕捉して将来位置を予測する仕組みとなっています。これを、航空機それぞれの軌道を把握する仕組みを作り上げることで、より正確に将来位置を算出することを目指すようです。そのためには、航空機の自動操縦技術の発達及び航空管制システムの情報処理効率化が必要不可欠となります。
まだまだ人工知能が航空管制システムの中で主たる役割を担っているとはいえないかもしれませんが、今後こうした取り組みが進んでいくにつれて意識せざるを得ないものになっていくことは間違いないでしょう。(Credo, 深澤祐援)
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