訪日客が増えれば「儲かる」のに、なぜ日本はチカラを入れてこなかったのか:水曜インタビュー劇場(観光公演)(5/7 ページ)
数年前、政府は「観光立国」を掲げ、ようやく重い腰を上げた。外国人観光客が増えれば「儲かる」のに、なぜ日本はチカラを入れてこなかったのか。その理由について、『新・観光立国論』の著者に話を聞いた。
おかしな論理がたくさん
アトキンソン: ドイツは4位だから日本よりも下だという説明も間違いなんですよ。技術などの要因だけでは、先進国の中の順位は説明できません。
でも逆の説明を受け入れる人は多いんですよね。ドイツは技術力はあるかもしれないが、GDPは4位。一方の日本は3位。ドイツよりも日本のほうが経済力があるので、日本の技術力はドイツよりも上――と。でもこのロジックはおかしい。
このような例は他でもたくさんあります。例えば、体操の内村航平さんが金メダルを獲得しました。内村さんは日本人である。だから、日本人はスゴいと。いやいやそうじゃなくて、内村さんがスゴいのであって、日本人全員がスゴいわけではありません。トヨタの技術はスゴいから全ての日本企業の技術もスゴいというロジックと一緒ですね。
土肥: そういえば、1960年代から70年代にかけて「体操王国ニッポン」と呼ばれていました。特に男子はオリンピック5連覇を達成、女子も東京オリンピックで銅メダルを獲得しました。でも、身近に「自分は体操をしている」という人がいませんでした。「体操王国」だったはずなのに。野球やサッカーをしている人はたくさんいたのに、おかしいですよね。
当時のデータを見つけることができなかったので、総務省が2011年に行った調査を紹介しますね。過去1年間にどんなスポーツを行ったかを聞いたところ「体操」はランク外なんですよね。ちなみに、21位の「柔道」は0.5%しかいません(平成23年社会生活基本調査)。
アトキンソン: 話がややそれましたが、日本経済が飛ぶ鳥を落とす勢いで成長するのは難しい。1950年代から70年代にかけて、なぜ高度成長を続けることができたかというと、人口がどんどん増えたから。しかし2060年に、現役世代は江戸後期並みになるので、いまから「観光業」にチカラを入れていかなければいけません。
土肥: しかし、これまでチカラを入れてこなかったので、考え方がズレている。アトキンソンさんは「ゴールデンウイークは廃止すべき」と指摘されていますよね。
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