訪日客が増えれば「儲かる」のに、なぜ日本はチカラを入れてこなかったのか:水曜インタビュー劇場(観光公演)(6/7 ページ)
数年前、政府は「観光立国」を掲げ、ようやく重い腰を上げた。外国人観光客が増えれば「儲かる」のに、なぜ日本はチカラを入れてこなかったのか。その理由について、『新・観光立国論』の著者に話を聞いた。
ゴールデンウイークなんていならない
アトキンソン: 日本にはゴールデンウイークという長期休暇があります。渋滞などのマイナス面はありますが、ほとんどのサラリーマンは「長期の休みがとれてうれしいなあ」と感じているはずです。しかしその一方でゴールデンウィークというものが、観光業を殺してしまっている側面もあります。
日本人の観光客がこの時期に集中するので、それ以外のいわゆる閑散期にどうすればいいのかという問題がある。ゴールデンウイークの需要を満たすために立派な設備をつくっても、閑散期には利用してもらえないので、設備投資に二の足を踏んでしまう。
ゴールデンウイークが廃止されれば、金融機関のように休暇を義務化して、国内の観光客は分散するはず。「オレは7月に長期休暇をとって沖縄に行く」「ワタシは10月に会社を休んで北海道に行く」といった感じで、分散される。そうなれば、観光に携わっている会社も積極的に設備投資ができるようになるのではないでしょうか。
土肥: 外国に比べて、日本人は有給休暇の取得率が低い。その結果、ゴールデンウイークのようなタイミングで一斉に休む人が多いのではないでしょうか。
アトキンソン: いえ、それは関係ありません。日本の祝日は世界で4番目に多いので、有休を取得する必要がないと思っているんですよ。逆に、欧州の人たちは日本に比べて祝日が少ないので、有休の取得率が高い。だから「有休を取得して、オレは7月にパリへ行く」「有休を取得して、ワタシは10月にロンドンへ行く」といった感じで、日本よりも休日が分散化しているんですよね。
ゴールデンウイークは大量の客をさばく必要があることに加え、日本人はルールを守るので、多かれ少なかれ観光業側の都合を客に押し付けている形になっています。日本人はあまり気づいていないかもしれませんが、訪日客の多くは「できません」「それは無理です」と否定されることに驚いています。
土肥: どういう意味でしょうか?
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