訪日客が増えれば「儲かる」のに、なぜ日本はチカラを入れてこなかったのか:水曜インタビュー劇場(観光公演)(7/7 ページ)
数年前、政府は「観光立国」を掲げ、ようやく重い腰を上げた。外国人観光客が増えれば「儲かる」のに、なぜ日本はチカラを入れてこなかったのか。その理由について、『新・観光立国論』の著者に話を聞いた。
外国人に喜ばれる「おもてなし」
アトキンソン: 例えば、レストランで食事をする際に、セットの食材の一部を違うモノに代えてほしいと言っても「それはできません」と言われてしまう。もちろんすべての店がこのような対応をしているわけではないですが、海外では「それをやるには、別料金がかかります」と提案されることが多い。「日本に来たんだから日本のシステムに従わなければいけない」と言われそうですが、欧米諸国に比べて日本は平等主義が強いなあという印象があります。なので、セットの食材の一部を違うモノに代えてしまえば、他のお客さんが不満を感じるかもしれない。不平等になってはいけないので、「それはできません」という対応になるのでしょう。
私は来日して25年も日本で暮らしているので、こうした対応には慣れました。しかし、初めて日本にやって来る外国人はどうでしょうか。会社を休んで、高い航空チケットを購入して日本に来たのに「できません」「対応していません」「それは無理です」「禁止です」ばかり言われると、なんだか融通の利かない国だなあという印象を持たれるでしょう。
では、どうすればいいのか。「お客」である外国人の言葉に耳を傾けるしかありません。「郷に従え」をあまりに全面に出してしまうと、「郷に入らない」にしかなりません。今、実際にそうなっています。
土肥: 考えてみれば「おもてなし」をウリにしているのに、「できません」対応はおかしい。
アトキンソン: 私は日本の「おもてなし」を否定しているわけではありません。これまでのように日本人同士であれば理解できることなので、何の問題もありません。しかし、経済成長が難しくなっているので、これからは「観光立国」を目指さなければいけません。そうなれば外国人をお客として扱わなければいけないので、日本人同士で成立していた「おもてなし」ではある程度で限界があるんですよ。
お客さんの話を聞いて、彼らは何を求めているのか、何に不満を感じているのか。そうしたことを理解すると、外国人に喜ばれる「おもてなし」が提供できるのではないでしょうか。
(つづく)
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