Mobile:NEWS 2002年7月12日 07:59 PM 更新

ツインCPUが携帯にもたらすもの(2/2)


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 SH-Mobileは、当初2.5G向けからスタートし徐々に高機能な3G向けCPUも提供していく計画。コアにはSH3にDSPを組み合わせたものを使っている(6月25日の記事参照)。

 OMAPはARM9とDSPを組み合わせたコアを持つ。DSPを積極的に活用することで、リアルタイム処理への強さを主張する(3月18日の記事参照)。

 XScaleは、ARMコアをベースとしたIntel独自のアーキテクチャを持つ。DSPに頼らずCPUを高速動作させることで、ソフトウェア開発の容易さをうたっている(2月12日の記事参照)。

 NEC・松下のツインCPUアーキテクチャでは、ベースバンドチップとアプリCPUのインタフェースを明確に定めている。「物理的なインタフェースは、どんなCPUでもだいたい合う」としているが、「TIと日立のCPUは想定している。Intel系は考えていない」(瓜屋氏)とも。

 もっとも、インタフェースさえ合致すれば、「基本理念としてはアプリCPU側のOSに依存しないインタフェースを規定しようということで進めている」(NECネットワークス モバイルターミナルコアテクノロジー開発本部本部長代理の馬場野外明氏)。

各部品を組み合わせて作る時代に

 NEC・松下のツインCPU研究の具体的な内容は、3G端末向けW-CDMA方式の伝送系のコアチップ(ベースバンドチップ)だ。「インタフェースと合わせて、その成果物をライセンスする」(馬場野氏)予定。

 既に「機能的には動くことは確認した。ただし、ほかのところへライセンスするとなると、ドキュメントを揃えるなどの準備をしなくてはいけない」(瓜屋氏)状態だ。

 次期端末からはこの新しいツインCPUアーキテクチャを採用してくるもよう。ベースバンド側に関しても、「(従来のFOMAから)ベースは残っているが、お互いに改良を加え、新しいチップに反映させていく。NECも松下もFOMAとして既に一回出しているので、悪い部分を反映させていける」(瓜屋氏)と、次のFOMAではこれまでの問題点が大きく改善される見通し。端末の投入時期は今年度後半になるという。

 ベースバンド部をNEC・松下が開発し、外販する。そしてアプリCPUも、TIや日立の製品が揃っている──。そうなると端末メーカーは、それぞれの部品を買ってきて組み合わせれば、端末の中身ができあがることになる。

 現在の端末は、NTTドコモ・504iシリーズのJavaの速度結果を見ても分かるように(6月21日の記事参照)、使われている部品はバラバラ。どの部品を使い、どのくらいカスタマイズするかで端末の性能、そしてデザインが変わってきていた。これからは“どんなアプリケーションを載せるか”に差別化の要因が移っていく。

 端末メーカー自身も、増大するアプリケーション開発の負荷に、ハードウェアに近いレイヤーの作り込みは各部品メーカーに任せたい意向だ(7月5日の記事参照)。

 現在でも、通信系のコアの部分はユーザーが意識することは少ない。瓜屋氏は「(コア部分は)膨大な開発工数がかかるが、ユーザーの目から見えない」と語る。ユーザーが評価するのも、外観や、メールソフトのようなユーザーインタフェースの部分になってきている(7月10日の記事参照)。

 ツインCPUアーキテクチャの登場。それは、これまで以上にアプリケーションの作り込みが重要になる時代の幕開けを意味している。

ツインCPUのメリットは2つ──開発コスト軽減とパフォーマンスアップ

 これまでの携帯電話は、音声処理を行うベースバンドチップが中心にあった。チップにはARMなどのプロセッサ(8月22日の記事参照)が組み込まれており、数十MHz程度で動作。かな漢字変換やアドレス帳の動作から、WebブラウザやJavaなどもこのプロセッサ上で動作している。

 このうち、通信部分を司るCPUと、アプリケーションを動作させるCPUを別々に積もう──というのがツインCPUの考え方だ。

 1つの狙いは、開発コストの軽減にある。これまでの1CPU構成では、通信部分とアプリケーション部分のソフトウェア、ハードウェアを同時進行で開発する必要があった。「もともと(通信部分やアプリケーション部分で)レイヤー構造を取っている。しかし従来は、必ずしもレイヤーごとの“切れ”が良くなかった」(瓜屋氏)。

 その結果、1つの仕様変更がほかのソフトウェアに影響を及ぼしたり、通信部分が完成するまでアプリケーション部分の作り込みが行えない、などの問題が出ていた(1月18日の記事参照)。

 ツインCPU化して、それぞれのCPUの独立性を高めることで、開発が並行して進められるようになる。その結果「開発効率が上がり、開発期間とコストが下がる」(瓜屋氏)というわけだ。

 もう1つは、端末の機能増加への対応だ。テレビ電話に代表されるマルチメディア機能が要求される3G端末だが、動画像処理までベースバンドチップにさせるのは荷が重い。高機能なアプリケーションへの要求が高まる中、専用のCPUを積んだほうが柔軟性は高まる。

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[斎藤健二, ITmedia]

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