付加価値勝負へ向かう、携帯液晶〜FPD Internationalサイズ拡大や色数、高精細が一段落した感のある携帯向けディスプレイは、スピーカー機能、スキャナ機能などを取りこみ、“面積を生かして多機能化”する流れにある。「FPD International 2003」では、そんな液晶のほか、有機ELや電子ペーパーなども展示されている。
FPDの展示会「FPD International 2003」が29日、パシフィコ横浜で開幕した。大型FPDでは“世界最大”を巡る開発争いが見物だが(10月29日の記事参照)、携帯向けでは趣向を凝らした液晶パネルが増えている。
シャープは、CGシリコン上にオーディオ回路を内蔵し、液晶パネルから音を出すパネルを参考展示している(9月22日の記事参照)。音を出す方式は、英New Transducers Ltd.(NXT)からホシデンにライセンスされたDM(Distributed Mode)方式によって、液晶ガラスを振動させるものだ。
シャープがオーディオ回路一体型液晶パネルを展示するのは初めてではない。専用の小部屋を設け、周囲の雑音をシャットアウトした上で、来訪者ひとりひとりにパネルからの音を聞かせるという凝りようだ 「アプリケーションとしては携帯を考えている」とシャープ。展示されたのは4インチ程度のサイズのパネルだが、将来は小型化し画面を見ながら音も聞き取れるようにしたいと話す。 同様の方式で、液晶ディスプレイをスピーカーにすることを狙っているのがNECの子会社オーセンティックだ。FPD International 2003での展示はなかったが、既に2インチ大のパネルを開発し(7月3日の記事参照)、「落下などの品質テストも問題なく、通信キャリアや端末メーカーは搭載をOKしている」と完成度の高さをアピールする。 シャープが液晶を挟み込むガラス自体を振動させるのに対し、オーセンティックは液晶パネル保護用に使う表面のアクリル板を振動させるのが違い。オーセンティックは「シャープのやり方では音量が小さいのではないか」と疑問を呈する。オーセンティックのスピーカーが10センチの距離で80dbなのに対し、シャープは「70db程度は出ている」。携帯ではこの上にさらにアクリル板を付けるため、音量の低下は確かに懸念される。 液晶をスピーカーにする場合、パネルが小さくなるに従って低周波数の音を発生させにくくなるのも問題だ。シャープのオーディオ回路自体は「50Hzから20KHzまで出ている」というが、パネル自体の周波数特定は厳しい。 もっとも「音質は正直追求していない。音を聞き取れればいい」とシャープ。ひとまずは、CGシリコンに液晶ドライバ以外も組み込んだことに注目となる。
有機ELパネルでは最高精細──。4.3インチでVGA、188ppiのフルカラー有機ELパネルを展示したのは東北パイオニアだ(10月29日の記事参照)。エルディスが開発した「CGシリコンに似たTFTパネル」(同社)を使って高精細を実現した。
携帯では、シャープが2.6インチで300ppiのCGシリコン液晶を展示していた(CEATECの記事参照)。携帯機器では“ポスト液晶”と呼ばれて久しい有機ELだが、急速な液晶の進化の前でなかなか追いつけないのも現実だ アクティブ方式の有機ELパネルは、液晶にも使われるTFTガラス基盤上に、有機材料を蒸着して作る。液晶とは異なり各TFT素子の出力を揃えないと色むらが出るため、製造が難しい。 展示品のポイントは、高精細を実現するためにトップエミッションを使ったこと。従来のTFTガラス基盤側に光を取り出すボトムエミッション方式と異なり、基盤上部から光を取り出すトップエミッション方式は、「TFTの配線レイアウトを気にしなくていいので、(有機ELの)画素を小さくしやすく、解像度が上げられる」(説明員)。 ソニーの有機ELディスプレイもトップエミッション方式が特徴とされている(2001年7月の記事参照) また、ボトムエミッション方式のほうが制作はやさしいが、開口率の違いから、輝度はトップエミッション方式のほうが高くできる。ちなみに、トップエミッションかつボトムエミッションの両方──表からも裏からも画面を出したのが、同社の2画面表示ディスプレイ(デュアルエミッション方式)となる(7月2日の記事参照)。
もう少し先の未来に待っている電子ペーパーも、機能強化の道筋が見えてきている。米E Inkに出資している凸版印刷は、高速応答および高コントラストの電子ペーパーを参考展示している。
左が高速応答の電子ペーパー。右が高コントラストのもの 展示品の電子ペーパーは応答速度が40ミリ秒と液晶に迫る。これまで150ミリ秒と応答速度に難のあったE-Ink方式の弱点をマイクロカプセルの改良で実現した。 並んで、白の反射率を従来の35%から50%に向上させ、コントラスト比15対1を実現させたサンプルも展示している。液晶の白反射率が4%前後、紙の新聞紙が65%程度といわれる中で、かなり“紙に近い”見やすさになっている。 いずれも「より高い電圧をかければ上げられる。従来と同じ15ボルトで実現したのがポイント」(同社電子ペーパー事業推進部の檀上英利課長)。 今後のロードマップとしては、2005年以降にカラーを実現、その後折り曲げられる電子ペーパー、動画対応と進む予定だ。
最初のカラー版は「より白くしてカラーフィルターを使う」方向で検討している。色付きのマイクロカプセルを使った方法も考えられるが、塗り分けが難しくなるためよりコストの低い方法を取るという。 カラー化の難点は、従来から指摘されている通り(2002年4月の記事参照)、階調表現だ。展示品は2ビット(4階調)。階調を増やす改良を進めるほか、解像度を上げて「新聞のアミ点のようなやり方も考えている」(同社)。 折り曲げられる電子ペーパーについては、TFT基板の進化を待つ。TFTは基本的にガラス上に形成するが、昨今プラスティック基板を使う試みが盛ん(2002年10月の記事参照)。プラスティック基板が実用になれば、折り曲げられる電子ペーパーも実現できる。
東芝の“スキャナに変わる液晶ディスプレイ”こと、「インプット・ディスプレイ」も来場者の注目を集めていた。CEATEC JAPAN 2003で、既にカラー画像取り込みを一般公開している(10月6日の記事参照)
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