Symbian OS上でApacheやGaimが動く日が来る?──シンビアンの新たな取り組み(2/2 ページ)
携帯向けOS開発大手のシンビアンが3月8日、事業概況とSymbian OSの最新トピックを紹介する説明会を開催。新たな取り組みとしてPOSIXへの対応を紹介し、エンタープライズソリューションの拡大につなげるとした。
シンビアンが期待するのは、C言語のコンポーネントを持ってきて載せられることだ。「Symbian特有のC++言語が分かる技術者がごまんといるわけではなく、一方で端末の出荷台数は増え続けている。(Cで開発できるようになれば)Symbianのエコシステムへの参入障壁が低くなり、エコシステムが活気づくのではないか」(同)
Symbian OS上にCのAPIが載ることが、将来的には面白い試みにつながると山田氏は説明する。「マルチプロトコルのインスタントメッセンジャーをサポートするGaim、他のコンピュータをリモート制御するVNC、サーバコンポーネントのApacheやLightTPDが携帯上で動いたらどうなるか。いろいろな選択肢が増えるのは面白いのではないか」(同)。Windowsのデスクトップで動いているエンタープライズソリューションクライアントもPOSIX風に書かれているものがかなりあるといい、企業向け端末用途で使えるのではないかと期待を寄せた。
POSIXへの対応でセキュリティがさらに重要に
POSIXへの対応はアプリケーション開発の利便性が向上するというメリットをもたらす半面、アプリのインストール機会が増えることから、セキュリティ面の対応がさらに重要になると山田氏は指摘する。
Symbian OSを標的としたマルウェアはこれまで18種類が確認されており、189の亜種が存在するという。感染例は“トロイの木馬”が中心で、BluetoothやMMS経由の感染例がいくつか確認されているが、これまで大きな被害は出ていないという。
今後アプリやインストールベースの端末が増えると、その危険性が高まることが懸念されるが、Symbian OSは最新のv9から、OS自体のセキュリティを大幅に強化している(2006年9月の記事参照)。
Symbian OSがパートナー企業とのエコシステムを重要視するシンビアンは、OSで実装すべきセキュリティ機能の開発に専念する。Symbian Signedと呼ばれるアプリの認証プログラムやアンチウィルスソフト、暗号アクセラレータ、バイオメトリクスセンサーなどの相補的ソリューションの開発はサードパーティに任せるというのが基本姿勢だ。
プラットフォームセキュリティとして実装しているのは、インストール時のセキュリティ警告表示や、アプリの動作時にAPIを動的に監視/制御する仕組み、データケージングによるデータの保護など。「オープン化とセキュリティは相反するものだが、密接につながっていく」(山田氏)といい、これらを両立させてより多くの人がメリットを享受できるOS開発を目指すとした。
Windows Mobileは、まだ脅威ではない?
日本でWindows Mobile搭載機のラインアップが拡充傾向にあるなど、2007年のスマートフォン市場には新たな波が押し寄せている。こうした動きについてシンビアンの久社長は「Windows Mobileが一大勢力になるには、まだ時間がかかる」という見方を示した。
「携帯向けOSは、そう簡単にできるものではなく、またパートナーとのエコシステムの構築も重要になる。マイクロソフトはまだそのスキームに至っていない」(久社長)。Windows Mobileがアピールするサーバとの親和性についても、「Symbian OSはAPIでサポートしている」(同)と余裕を見せた。
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