モバイルテレビで重要なのは“携帯ならでは”の番組編成──米Verizonのダーキン氏:MediaFLO Day 2007
「24」や「プリズン・ブレイク」といった人気ドラマと人気ニュース番組2本、そしてスポーツ番組──。Verizon WirelessのV CAST Mobile TVでは、同じチャンネルでもテレビとは異なる編成にすることで、“モバイルテレビならでは”の差別化を図っている。
MediaFLOを推進する米QUALCOMMが4月末に開催した「MediaFLO Day 2007」。MediaFLOを採用して映像配信サービス「V CAST Mobile TV」を開始したVerizon Wirelessのショーン・ダーキン氏と、モバイルテレビ向けのテレビ番組を手がけるJamba/Fox Mobile Entertainmentのミッチ・ファインマン上級副社長が、モバイルテレビを成功させるための重要なポイントを解説した。
モバイルテレビで重要なのは使いやすさ──ダーキン氏
ダーキン氏は、携帯で映像コンテンツを視聴する際に何よりも大事なのは「使いやすさ」だという。「ユーザーはテレビを見ようとするとき、ビューワプログラムを選択して起動して……というような煩雑な操作をしたくはない。自宅で観るのと同じように、ボタンを押してすぐに番組を見たいのだ」
こうした要望に応えるように、Verizonの新端末には専用のテレビボタンが用意され、これを押すとすぐテレビが起動する。
「チャンネル切り替えもリビングと同じ。EPGで見たい番組を選ぶこともあれば、テレビをつけた状態でチャンネルをザッピングすることも多い。だから、チャンネルはボタンを押したらすぐに切り替わらなければならない」(V CAST Mobile TVでは約2秒間隔でチャンネルを切り替えられる)。
番組の編成も重要だ。V CAST Mobile TVが提供している8チャンネルの内訳は、CBS、Comedy Central、ESPN、Fox、MTV、NBC Entertainment、NBC NewsそしてNickelodeonと、日本でも有料テレビ放送に詳しい人にはおなじみのメジャーチャンネルばかりだ。
エンタテインメント系、スポーツ系、音楽系、キッズ系と位置付けがはっきりしたチャンネルばかりなので、EPGを見なくてもだいたいどのチャンネルで自分の観たい番組を放送しているかの見当がつく。
そして、V CAST Mobile TVが本当にすごいのはここからだ。日本のワンセグを知っている人なら、当然、ケーブルテレビのFOXをつけても、V CAST Mobile TVのFOXをつけても同じ番組を放送していると思うだろう。ところがぜんぜん違うのである。
今のワンセグのように普通のテレビと同じではダメ
ダーキン氏はモバイル向けテレビの視聴傾向について、ラスベガスなどで行ったグループテストの結果を元に次のように説明する。「一般のテレビとモバイル向けのテレビでは、そもそもの視聴パターンが異なる。一般のテレビでは、夕食の準備が始まる午後6時半くらいからがプライムタイム(ゴールデンアワー)となるが、モバイルテレビでは基本的に1日中プライムタイムだ。視聴者がまず増えるのは昼食が始まる午前11時前後からで、その後、昼食時の1時から2時の間も視聴者が多く、続いて帰宅が始まる夕方頃からまた視聴者が増え始める」
そのため、いずれのチャンネルもV CAST Mobile TV専用の特別編成で番組を流している。例えばFoxはドラマ「24」や「プリズン・ブレイク」といった人気ドラマと人気ニュース番組2本、そしてスポーツ番組からなる特別編成だ。
ちなみにFoxにしても他社にしても、実際の携帯電話向け放送に関わっているのは、モバイル専業の子会社だ。例えばFoxはFox Mobile Entertainmentという子会社を設立、後にVeriSignの子会社、Jambaと合併しJamba/Fox Mobile Entertainmentとなった。
Jambaは現在、世界35カ所で推定10億人を対象にしたモバイル放送市場を視野に、コンテンツの制作やマーケティング、新規ビジネスの開発などを行っている。テレビで放映しているのとまったく同じコンテンツを流すのではなく、テレビ放送用に用意した素材を生かしつつ、より携帯電話での視聴に適した番組を制作しているのだ。
Jambaがこれまでに開発したコンテンツの中でも好評なのが「モビソード」(モバイルとエピソードをかけ合わせた造語)と呼ばれる番組形態だ。これは「24」や「プリズン・ブレイク」といった人気テレビドラマと併せて見るようにつくられたコンテンツで、内容はドラマの総集編やカットされたシーン、あるいはテレビ放送と並行して制作されるサイドストーリーなどで構成される。
例えばプリズン・ブレイクでは、1回2分のモビソードが26本制作され、米Sprintのストリーミング放送サービスで供給されている。
実はJambaが製作するコンテンツは、V CAST Mobile TV専用につくられたものではない。Jamba/Fox Mobile Entertainmentの上級副社長、ミッチ・ファインマン氏によれば、ドラマ「24」用のモビソードは、以前、日本の旧ボーダフォン用コンテンツとして配信されたこともある(2005年9月の記事参照)。
また、ファインマン氏は、小さな画面の携帯電話でも楽しめるように、人物などのクローズアップを多くし、暗いシーンが多いドラマではコントラスト比を上げるなどの映像加工も行っているのだという。
つまりVerizon陣営や提携コンテンツ会社が手がけようとしているのは、従来の放送コンテンツの二次利用ではなく、まったく新しい映像コンテンツ市場の形成なのだ。
関連記事
- 「QUALCOMM」に関連する最新の記事はこちら
- 「ワンセグ」に関連する最新の記事はこちら
- QUALCOMM、東京で「MediaFLO Conference 2007」を開催
“iPhoneを振った”米Verizonが投入するキラーサービス──「V CAST Mobile TV」
発売を2カ月後に控えた米Appleの「iPhone」に強力なライバルが出現した。米Appleが手を組もうとして叶わなかった米国2番手のオペレーター、Verizon Wirelessが、新たな映像配信サービス「V CAST Mobile TV」に対応した携帯端末を発売したのだ。- 米Verizon、MediaFLOを利用した「V CAST Mobile TV」サービスを開始
米Verison Wirelessは2007年第1四半期から、「MediaFLO」の技術を採用した携帯電話向けの放送サービス「V CAST Mobile TV」を開始すると発表した。 クアルコムジャパン、MediaFLOを実演
クアルコムジャパンが、ワイヤレスジャパン2006で携帯向け放送「MediaFLO」の実演をしている。小型のアンテナを設置し、実際に電波を発射して端末側で受信するデモが見られる。各地で進むMediaFLOの標準化
QUALCOMMの携帯電話向け放送サービス「MediaFLO」。mobidec 2006のセッションにクアルコムジャパンの前田氏が登壇し、同社のMediaFLO普及に関する活動報告を行った。「2.5GHz帯を全力で取りに行く」──ソフトバンクモバイル松本副社長
次世代の携帯電話ネットワークを構築するためには、周波数がいる──。ソフトバンクモバイルの松本副社長は、同社がNTTドコモやKDDIと対等に渡り合っていくのに、2.5GHz帯の周波数割り当ては不可欠との考えを示した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.