アプリの一部も共通化を検討――ドコモの共通プラットフォーム「MOAP」のこれから:Symbian Summit Tokyo 2007
携帯電話開発の現場は、高機能化とコスト低減という相反する課題を抱えている。これを両立させるための施策として、ドコモが2004年に開始したのが共通プラットフォーム「MOAP」の提供だ。ドコモの山田隆持副社長は今後、ミドルウェアだけでなく、アプリの一部についても共通化を検討しているとした。
さまざまな機能が搭載された携帯電話を安く手に入れたい――。こうした市場のニーズに応えるためにメーカーやキャリアは、端末の高機能化とコスト低減という相反する要素を両立させなければならない。
シンビアンの年次イベント、Symbian Summit Tokyo 2007に登場したNTTドコモの山田隆持副社長が、端末開発の効率化、低コスト化に向けた取り組みについて説明した。
ハードとソフトの両面で端末開発を効率化
ドコモは11月1日、冬商戦向けの新モデル23機種を発表した。ハイエンドモデルの905iシリーズは、下り最大3.6MbpsのHSDPA、3G/GSMの国際ローミング、ワンセグ、フルワイドVGA、GPS、WMA再生といった機能を標準で装備する「オールイン世界ケータイ」(山田氏)。ソフトウェア開発量がなみ大抵でないことは、開発関係者でなくても容易に想像できる。
実際、コンテンツ容量やソフトウェア開発量は急激に増加していると山田氏は指摘する。コンテンツ容量はテキストメールが主流だった1999年の30Kバイトから着うたフルの開始で5Mバイト、ミュージックチャネルの開始で25Mバイトに増加。コンテンツ容量が増大するFOMAでは、ハードウェアの高性能化と高密度化が求められ、ハードウェアを改善しなければならないという。
ソフトウェアの開発量は、1999年当時のソフトウェア機能を1とすると、今ではその30倍に達していると山田氏。短期間で高機能な端末を開発するためには、開発の効率化は不可欠だ。こうした事情から、ドコモはハードウェアとソフトウェアの両面から開発効率化に向けた取り組みを行ってきた。
ハードウェア面ではワンチップ化を推進。従来は伝送・呼制御用とアプリ処理用とが別のチップだったところを、ルネサスや端末メーカー各社との協力でワンチップ化した。この開発成果となるSH-Mobile Gシリーズのチップで、開発コストの低減や機能の最適化、消費電流の30%削減を実現した。第2世代のSH-Mobile G2チップは905iに搭載され、第3世代のSH-Mobile G3チップは907iに搭載される見込みだという。
ソフトウェア面では2004年に、共通プラットフォームの「MOAP」(Mobile Oriented Application Platform)を導入。それまでメーカーごとに異なっていたミドルウェアを共通化することで開発の効率化を図るのが狙いで、ドコモが3G携帯の実装に必要なミドルウェアの共通プラットフォームを開発・提供した。MOAPの導入により端末メーカーの開発が効率化され、差別化ポイントとなるミドルウェア上のアプリ開発や独自デバイスの実装にリソースを振り分けられるようになった。
山田氏はMOAPの効果として(1)共通ソフトの品質向上 (2)共通ソフトを利用するソフトの移植性の向上 (3)端末メーカー独自の開発環境を用意する必要がない (4)開発期間の短縮 を挙げている。
今後のMOAPについては、さらなるプラットフォームの共通化を推進するとともに、「アプリの一部も、共通化できる部分は端末メーカーと相談しながら検討していきたい」と山田氏は言う。メーカーの特色は、アプリケーションビジネスと技術競争で差別化するのがこれからのトレンドになるとした。
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