「iPhone 3GS」が月間1位を記録したという事実
7月に最も売れた携帯電話は「iPhone 3GS 32GB」だった──。GfK Japanの集計による月間販売ランキングのトップを、海外メーカー製のスマートフォンが初めて獲得したことの意味は大きい。
順位 | キャリア | モデル |
---|---|---|
1 | ソフトバンクモバイル | iPhone 3GS 32GB |
2 | NTTドコモ | SH-06A |
3 | ソフトバンクモバイル | 830P |
4 | NTTドコモ | SH-05A |
5 | NTTドコモ | N-08A |
6 | au | Walkman Phone, Premiere3 |
7 | NTTドコモ | SH-02A |
8 | au | W63CA |
9 | ソフトバンクモバイル | iPhone 3GS 16GB |
10 | au | SH001 |
この記事は、マーケティング会社GfK Japan調べによる全国の家電量販店のPOSデータを集計し、モデル別のランキングで紹介しています。 |
アップルの「iPhone 3GS」が、GfK Japanが集計する国内主要量販店を対象とした7月の販売ランキングで、月間販売台数1位の座を獲得した。
海外の携帯電話メーカーは、これまで何度も日本市場に挑戦し、中にはそこそこの人気を獲得した端末もあったが、軒並み苦戦を強いられてきた。そんな日本市場において、iPhone 3GSが月間1位を達成したことは注目に値する。
この件は、米Fortune誌が、米Electronista誌の記事を取り上げる形で8月17日に紹介したことから、すでに広く知られているとは思うが、海外メーカー製、しかも利用できないキャリア公式サービスも多いスマートフォンが、1カ月の間に日本で最も多く売れたことは、おそらく過去に例のないことであり、改めて触れておきたい。
初代iPhoneが米国で発売されたとき、国内の多くの業界関係者は、その革新性を認めつつも「iPhoneはメール文化が浸透している日本市場では受けない」と指摘していた。タッチパネルによる独特の操作性は、ダイヤルキーに慣れた日本のユーザーにはなじまない、という意見も聞かれた。
2008年6月に、3G(W-CDMA)に対応し、アプリのインストールも可能になった「iPhone 3G」が発売されたときも、絵文字が使えない、ワンセグがない、おサイフケータイじゃない、Yahoo!ケータイにアクセスできない、MMSに対応していない、デコメができない、といったさまざまな理由で、人気は一過性のものに終わると見る人がいた。発売から数カ月、供給不足も手伝って、日本で大流行と言えるほど端末の出荷台数が伸びなかったときには、「敗戦」「戦後処理」という言葉とともに、まるでiPhone 3Gが日本国内で見向きされていないかのような論調で取り上げられたこともあった。
そして2009年6月。前モデルから高速化し、多くの不満点を解消したiPhone 3GSの販売がスタートした今、街中にはiPhoneがあふれている。公式な発表はないが、iPhone 3GとiPhone 3GSは、日本国内ですでに100万台以上が稼働していると予想される。都内では、公共の交通機関に乗れば1人や2人はiPhone 3GやiPhone 3GSを持つ人を見かける。特にiPhone 3Gが大幅に値下げされた「iPhone for everybody」キャンペーンの開始と、「iPhone 3GS」の発売以降は、老若男女を問わず幅広い層の人たちが手にしているのを見る機会が増えた。
ちなみにGfK Japanに確認したところ、iPhone 3Gは月間ランキングで1位になったことはないという。これまでは、国内メーカーの端末が大きな壁として立ちはだかっていたわけだ。しかしiPhone 3GSは、その壁を乗り越えた。もちろん、キャリアの販売戦略(値下げのタイミングや、ほかの1円/0円端末の登場タイミング)など、運に左右される部分もあるとはいえ、アップルは日本市場に大きな足跡を残したと言える。もちろん、ソフトバンクモバイルによる積極的な拡販策にも大きな功績があった。
例えおサイフケータイでなくても、ワンセグを搭載していなくても、iPhoneのような端末に魅力と価値を見いだし、購入するユーザーはたくさんいたのだ。上位モデルの方が売れていることから、単純に価格が実質0円だから売れた、というわけではないだろう。4カ月ごとにフルモデルチェンジを繰り返し、次々と新しいスペックを身にまとわなくても、しっかりした思想の下に生み出された、ユーザーの共感を生むすばらしい端末は売れる。それが容易に作り出せるものではないことは理解しているつもりだが、アップル以外の端末メーカー各社にも、ぜひともiPhoneとは異なる形でユーザーを驚かせるような、魅力的な端末を作ってもらいたい。そして、キャリアも積極的にそうした端末の魅力をユーザーに伝えていくべきだ。
7月に日本で最も売れた端末はiPhone 3GS──。日本の端末メーカー、そして携帯電話業界の関係者は、この事実をしっかりと受け止めるべきだろう。
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