「AV」「生活」の2本柱でスマートフォン市場に参入するパナソニック モバイル
国内の携帯電話メーカーとして巨大な勢力であるパナソニック モバイル。しかしスマートフォンに関しては一歩出遅れた感がある。これから同社はスマートフォンをどのように展開していくのだろうか。
パナソニック モバイルコミュニケーションズは11月16日、2010年度下期新製品説明会・体験会を実施。同社の脇治社長が、カメラ機能を前面に押し出した「LUMIX Phone」をはじめとした携帯電話の新機種の紹介に加え、スマートフォンの展開についても言及した。
スマートフォンのコンセプトは「AV」と「生活サポート」の2本柱
2010年度下期に発売される新機種は、NTTドコモ向けにはLUMIX Phoneのブランドを掲げたデジカメケータイ「P-03C」、WオープンスタイルのVIERAケータイ「P-02C」、スリムケータイ「P-01C」、ソフトバンクモバイル向けに「LUMIX Phone 001P」、シンプルケータイ「COLOR LIFE 2 002P」の5機種。特に、パナソニックのデジタルカメラブランドを冠したLUMIX Phoneは、ケータイカメラの画質や使い勝手に対するユーザーニーズを満たすべく作られた製品。LUMIX譲りの高画質と操作性、使いやすさを目指したほか、携帯電話ならではの通信網を利用したネット連携を行い、撮影した写真を手軽にパソコンやブログなどに転送できるよう配慮されている。今回の注目製品といってもいいだろう。
一方、国内外のメーカーがこぞって新機種を投入し、最も注目を集めているスマートフォンに関しては、同社は新製品を投入していない。パナソニックモバイル社長脇治氏は「MM総研の調査によるとスマートフォンのシェアは2010年で11%、2013年には41%のシェアと予測されているが、さらにその動きは加速すると認識している。当社もスマートフォンへのシフトを急速に進めていきたい。まず2011年に複数台のスマートフォンを発売することを目標としている」と述べ、2011年前半にAndroid端末を投入する意向を示した。
他の国内メーカーに比べてスマートフォンへの参入が遅れた理由については、日本のマーケットでここまでスマートフォンが早く普及することを予想できなかったことを挙げている。特に、Androidが世界的に主流になるという予測が固まったのが遅れたことが、主な要因とした。当面はAndroidをプラットフォームとしたスマートフォンの開発に注力していく。
今後開発・展開するスマートフォンは、大きく分けて2つのカテゴリに分類。ひとつがLUMIX PhoneやVIERAケータイのように、AV機器やカメラのノウハウを生かした「AV融合端末」、もうひとつが日常の生活をサポートする「生活サポート端末」だ。
AV融合端末は、LUMIXやVIERAといった冠にふさわしい高い次元の性能はもちろん、スマートフォンとしての基本性能、高品質、高級感、高耐久性、エコというキーワードを全面に打ち出す。これは海外メーカーのスマートフォンとの差別化を図る意図も含まれている。「基本性能に加え、3D、フルHD、デジタル放送、デジタルコンテンツとの連携を視野に入れ、お客様にきれいな画質のコンテンツを見ていただけるようなスマートフォンを実現したい」とのことだ。
一方生活サポート端末は、スマートフォン初心者でも手軽に使えるように、使いやすさを追求し、快適な暮らしを実現するツールとしてのスマートフォンという位置づけのもの。パナソニックの家電製品と連携し、家電をコントロールするためのセンター装置として活躍できる端末として開発する。
脇社長は「例えば、20代の男女であれば情報の収集・整理、アクティブシニアであればセカンドライフのサポート、キッズでは家族から見た安全サポート。このようなことがスマートフォンならばアプリを用意して簡単にできる。こういう位置づけのスマートフォンを実現したい」と、生活サポート端末のイメージを語った。
なお、2011年前半に発売される予定のスマートフォン1号機は「マイファーストスマートフォン」というコンセプトで開発が進められている。若い女性や一般のユーザーで、上位価格帯の通常の携帯電話を使っているユーザーが、違和感なく端末を乗り換えられる製品にするという。また、1号機は生活サポート端末になる模様だ。ただし、2011年度には複数台のスマートフォンを投入する予定となっており、生活サポート端末やAVサポート端末といった高機能タイプはもちろん、シンプルな廉価版のスマートフォンの投入も予定されている。海外進出も視野に入れているが、現時点ではどのエリアに投入するかは検討中ということ。デジタルカメラのLUMIXブランドが浸透しているヨーロッパなどを中心に展開していくものと思われる。
スマートフォンのラインアップは、2012年には同社の携帯電話ラインアップの半分以上を占める方向で調整を急いでいる段階。また、小型のスマートフォンだけでなく、タブレット型の端末なども含め、通常の携帯電話の延長線上ではない新しいタイプのスマートフォンの開発も来年度までには行っていくとのこと。一般家電製品を展開するパナソニックグループ各方面との連携により、まったく新しいタイプのスマートフォンが登場する可能性もあるといえる。
次世代通信規格であるLTEに対応した端末ついては、キャリアの進捗に合わせて展開していく方針。他メーカーに遅れることなく、展開する際にはトップグループに入った形で参入する意向だ。
iPhone 4やGalaxy S、HTC Desire HD、DELL Streakなど、海外メーカー端末がひしめく現在のスマートフォン市場だが、シャープが新機種を続々と投入したことで、国内メーカーの展開にも注目が集まっている。日本の代表的な携帯電話メーカーであるパナソニック モバイルとしては、スマートフォンの発売に乗り遅れてしまった分、今後の端末開発で巻き返しを図りたいところ。生活家電との連携やエコなど、国内メーカーらしい独自の進化を遂げたスマートフォンが登場する可能性が高いが、こうした端末はどのように日本や世界のユーザーに受け入れられるのか。これからの展開に注目が集まる。
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