ドコモとDNP、電子書籍ストア「2Dfacto」を12日オープン
NTTドコモ、DNP、CHIの共同事業会社であるトゥ・ディファクトは1月12日から電子書籍ストア「2Dfacto」を開始する。「電子書店」「オンライン書店」「リアル書店」を連携させようという取り組みは、日本の電子書籍市場にどのような影響を与えるか。
NTTドコモの電子書籍戦略、いよいよ幕開け
NTTドコモ、DNP、CHIの共同事業会社であるトゥ・ディファクトは1月11日、NTTドコモのスマートフォンなどに向けた電子書籍ストア「2Dfacto」を、1月12日午前8時から開設することを明らかにした。これにより、NTTドコモの電子書籍戦略がいよいよ本格化する。
この日、都内で開催された説明会には、大日本印刷の高波光一代表取締役副社長のほか、NTTドコモの辻村清行代表取締役副社長、そして、トゥ・ディファクト代表取締役社長の小城武彦氏などが登壇、「読みたい本に必ず出会える」「読みたい本を読みたい形で読める」を実現するhontoのサービスが紹介された。
当初の対応機種はXperia SO-01B、GALAXY S SC-02B、GALAXY Tab SC-01C、LYNX 3D SH-03C、REGZA Phone T-01Cのほか、今後発売予定のブックリーダー SH-07C、Optimus chat L-04Cの7機種。今後NTTドコモが発売するスマートフォンなどには基本的に対応予定。ビューアと一体化した電子書籍ストアアプリが提供され、対応機種のユーザーは1月12日午前8時以降、以下の手順で2Dfactoから電子書籍を購入できるようになる。
- 「ドコモマーケットTOPページ」にアクセス
- 画面下部の「電子書籍」を選択し、「ドコモマーケットBOOKストア」にアクセス
- アプリをダウンロードし、初回のみ「honto」の会員登録
- アプリの「本を買う」から電子書籍ストア「2Dfacto」にアクセスし、電子書籍コンテンツを選択、購入
ストアでは季節やトレンドに合わせた作品を紹介する特集ページや、新着や店長のオススメ、ランキングなどのメニューを用意するという。また、検索の利便性を高めるため、作品名、作家名、出版社名、ジャンル名のほか、価格、販売開始日、ISBN(国際標準図書番号)などで書籍を検索できるほか、フリーワード検索では販売実績の高い候補を表示する入力補助機能(インクリメンタルサーチ)も提供される。
気になる開設時のラインアップは、文芸書・コミックを中心に約2万点で、今春までに約10万点へ拡充予定だという。当初、サービスイン時に10万点のラインアップをそろえるとしていた点について大日本印刷の高波氏は、「予想よりも立ち上がりが遅れている印象だが、間違いなく春までには10万点のラインアップを実現できると考えている」と自信を見せた。
2DfactoはXMDFビューアやT-Timeビューア、さらにセルシスのBS ReaderやDNPのImageViewerなどのビューアを内包しており、XMDF、.book、BSF(BookSurfing)、JPEGなどに対応、文芸、雑誌、コミックとそれぞれ最適なフォーマットで提供する。また、表示については各端末の画面サイズに自動調整されるほか、文芸書で評価の高いDNPオリジナルの明朝体フォント「秀英体」を改訂した「秀英横太明朝体」を搭載し、美しく読みやすい縦組み、横組みの文字表示を実現しているのも特徴の1つとなっている。
2Dfactoでの決済方法はクレジットカードまたは電子マネー(WebMoney)で、2月以降は、携帯電話の利用料金と合算して支払うことができるようになるという(spモードのコンテンツ決済サービスに対応)。
NTTドコモからも電子書籍専用端末が登場
この発表に関連し、NTTドコモの電子書籍専用端末「ブックリーダー SH-07C(以下SH-07C)」を1月21日から発売することも明らかになった。
同製品はシャープのメディアタブレット「GALAPAGOSモバイルタイプ(以下モバイルタイプ)」をベースにしたものだが、現時点のモバイルタイプが対応していない3G通信に対応しているのが特徴。3G通信に対応した電子書籍専用端末としては、KDDIが2010年12月末に「biblio Leaf SP02」を発売しており、これに続くものとなるが、電子ペーパーを採用したbiblio Leaf SP02に対し、SH-07Cは液晶ディスプレイを採用している点が異なる。シャープは3G対応のメディアタブレットを海外向けに販売する計画を明らかにしているが、海外での展開に先んじてNTTドコモから3G対応モデルが登場することになる。なお、SH-07Cはspモードには対応せず、料金プランはデータ通信プランを利用する。
また、モバイルタイプで利用できる電子書籍ストアは「TSUTAYA GALAPAGOS」のみだが、SH-07Cでは、2DfactoとTSUTAYA GALAPAGOSの両方を利用できる。ただし、起動時にどちらのストアをデフォルトで利用するか選択する形なのだという。なお、TSUTAYA GALAPAGOSで購入したコンテンツを2Dfactoで読むことはできず、いわゆる“自炊”コンテンツについても、2Dfactoのインタフェースでは現れないという。また、TSUTAYA GALAPAGOSの利用は上述したポイントサービスなどの対象外となる見込みだ。
このほか、モバイルタイプでは管理用のソフトウェアとして「GALAPAGOS STATION」が用意されているが、SH-07Cではそうしたソフトの提供は「今後検討する」と説明されただけだった。会場にいた説明員によると、端末、コンテンツ、ユーザーにそれぞれIDが割り当てられ、それらが一致しなければ購入したコンテンツは見られない仕様となると説明があった。今後、端末については3台程度まで機器認証が行えるようになる見込みで、これが上述のマルチデバイス1コンテンツを指しているとみられる。
世界でもまれなハイブリッド型書店は成功するか
大日本印刷が同社のPC向け電子書籍販売サイト「ウェブの書斎」をリニューアルし「honto」をスタートしたのが2010年11月。高波氏によると、hontoは電子書籍サービスであり、電子書店の1つが2Dfactoであるという。
hontoについては今後、DNPグループのオンライン書店「ビーケーワン(bk1)」と、リアル書店(丸善、ジュンク堂、文教堂)との連携を図り、「電子書店」「オンライン書店」「リアル書店」を連携させたハイブリッド型総合書店を目指す。
具体的な施策として、これら3書店での購入履歴などを基にしたレコメンド機能や、共通のポイントサービス、さらに紙/電子を問わず購入した書籍を端末で一覧できる「電子書棚機能」などを提供予定としており、複数の端末で同一の電子書籍を読むことができる「マルチデバイス1コンテンツ」機能や、しおりやマーカーなどで記録した情報を複数の端末で共有し、続き読みができるsync機能を提供する予定だ。
辻本氏は、「2兆円といわれる出版業界のうち、電子化されるのは1割から2割程度と考えている。hontoでは、そのうちの2割、つまり市場規模としては400億円から500億円程度を担いたい」と事業規模が説明された。
また、昨年10月から進めてきたトライアルサービスで得られた知見については、「(トライアルでは)文芸、コミック、雑誌をおおよそ4:3:3で用意しており、40万ダウンロードほどあったが、その大半が予想に反して文芸だった」と話し、想定していた以上に文芸書の電子版へのニーズが高かったことを明かした。そうした知見が、上述した秀英横太明朝体の搭載などに生かされたとみられる。
小城氏も、「紙からデジタルへのリプレイスではなく、出版マーケットを拡大していきたい」と抱負を語り、紙書籍と電子書籍のハイブリッド商品の企画など、本をもっと読みたくなるサービスを展開していきたいと述べた。
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