使って初めて分かった「みまもりケータイ」の正体(3):小寺信良「ケータイの力学」
「みまもりケータイ」の新モデル「みまもりケータイ2 101Z」は、基本的な見守り機能はそのままに、発信先を増やしたりメールの受信機能や緊急地震速報などの機能を追加したモデルだ。
2回にわたってソフトバンクモバイルのみまもりケータイを解説してきたのだが、これを見てこのケータイの開発メーカーであるZTEさんから、この4月に発売されたばかりの新モデル「みまもりケータイ2 101Z」をお借りすることができた。ZTEは中国の通信機器メーカーで、欧米向けにはスマートフォンなども積極的に展開しているが、日本向けにはみまもりケータイを始め、かんたん携帯やシンプルスマートフォンなど、カスタマイズされた製品を得意としている。
旧モデル「005Z」も引き続き併売されるが、新モデルでは機能アップしているポイントが多い。ここでは旧モデルからの変更点を整理してみる。
本体自体は3色展開となったことはすでに触れたが、005Zと比較すると、若干サイズ的には大きくなっている。スピーカーホールの違いなどもあるが、最大の違いは側面に上下キーが付いたところだ。これにより、005Zでは1件しか発信できなったが、101Zでは上下キーで選択することにより、3件まで発信できるようになった。
また設定を「ワンタッチ発信」に変更すると、「順番発信」という機能が使える。これは発信登録された3件に対して、登録の1番から順番に発信し、1番が出なかったら2番へ、2番が出なかったら3番へ、と自動で電話をかける機能だ。3番も出なかったらまた1番から順にかけなおし、これを3回までループする。
例えば迷子になったときなど、両親かおばあちゃんか、誰かに連絡がつけばいいというケースはある。005Zの場合は1件しかかけられないので、その相手がいつも電話に出られる体勢の人じゃないと心細いものがある。このあたりの要望が生かされたということだろう。
また発信・着信ともに、ソフトバンクモバイルとディズニーモバイル以外の携帯・PHSの登録ができるようになった。同居している家族は同じキャリアである事も多いだろうが、祖父母は別のキャリアという事もある。こう言ったケースでも対応できるようになっている。
ただ固定電話は登録できないこと、最低1件はソフトバンクモバイルの携帯電話の登録が必要という条件がある。
後継機種というよりも、上位モデル
このモデルから、緊急地震速報が受信できるようになった。これはもちろん、2011年の東日本大震災後に検討された機能だろう。
ただこれも良し悪しかもしれない。地震が起きる前に身構えることができるという点では、速報にもメリットがある。
一方でこのモデルでの話ではないが、余震が頻発している時はしょっちゅう地震速報が届くので、その音がトラウマ化したという事例もあった。速報を受信したらどのように対応するかをきちんと教えておかないと、ただ慌てるだけになってしまう。
中味としての大きなポイントとしては、メールの受信機能がついたところだろう。SMS、MMSともに受信可能で、700文字以内のテキストメールを受信することができる。文字スクロールは、横の上下キーで行なう。
メール保存は最大30件までで、それ以上は古いものから順に消えていくという作りだ。添付ファイルや絵文字は削除される。
メールの発信機能はないので一方通行ではあるが、子どもの年齢によっては、テキストで情報を送っておくと便利なときもある。例えば道順や、バスで降りる停留所の名前など、いつでも子どもが参照できる情報をメモとして送っておくという使い方だ。
ただ、送っただけで読まれたかどうかが分からないというのでは、ちょっと困る。メールを読んだかどうかわざわざ電話するというのでは、あまりにも原始的だ。開封確認機能などがあればもっとよかっただろう。
さて、筆者はこのみまもりケータイを契約して、最初の利用明細が先日届いたところだが、基本料2年間無料、通話無料などの措置があるため、利用料金はわずか15円であった。「位置ナビ」を利用するのに親機のほうで月額200円、位置ナビ利用ごとに5円かかっているが、それでも月額300円以内である。
実はこのみまもりケータイ、ソフトバンク全体としても、iPhoneに次ぐ人気商品なのだそうである。子どもだけでなく、お年寄りが持つケースもある。聞くところによると、通話料がタダということで、奥さんからこれを持たされている気の毒な旦那さんもいるようだ。さぞやGPS付きで安心なことだろう。
現在このような携帯とGPSの技術を使った安全対策専用端末は、今のところ知る人ぞ知るといった形で個人ベースでの導入がメインになっている。一方品川区の小学校では、地域独自の防犯システムと連動するauの専用携帯電話「まもるっち」を全校生徒に配布している例もある。
子どもの安全は、親がITに詳しい、詳しくないで差が付いてはいけない問題である。学校や地域、自治体が保護者に変わってシステムで対応することを考える場合、これらの端末の存在がキーになってくるだろう。
小寺信良
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作は、ITmedia +Dモバイルでの連載「ケータイの力学」と、「もっとグッドタイムス」掲載のインタビュー記事を再構成して加筆・修正を行ない、注釈・資料を追加した「子供がケータイを持ってはいけないか?」(ポット出版)(amazon.co.jpで購入)。
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