楽天がLTE市場に参入する狙い 合弁するイー・アクセスのメリットとは:キーは独自の“楽天経済圏”(2/2 ページ)
新会社「楽天イー・モバイル」の設立とLTE通信サービス「楽天スーパーWiFi」の開始を発表した楽天とイー・アクセス。その狙いを、三木谷氏と千本氏が説明した。
2社の役割分担については、楽天の中島氏が説明した。楽天がサービスのブランディング、販売、マーケティング、プロモーション、ポイントの管理を行い、イー・アクセスがモバイルネットワーク、デバイス、物流、カスタマーサポート、テクニカルサポート、通信料の回収を担当するという。中島氏は楽天の強みとして、「楽天は今や7800万人を超える顧客基盤を形成し、独自の楽天経済圏を持っている。この中で、ポイントサービスを使った巨大な相互送客を実現し、さまざまなサービスを成功させてきた」と説明。この中にイー・アクセスのモバイルブロードバンドを取り込むことで、「モバイル通信事業に新たな価値を生み出したい」(中島氏)と意気込んだ。
またイー・アクセスのガン氏からは、同社LTEサービスの概要が説明された。2012年の国内ブロードバンド市場は、FTTHやCATV、ADSLとモバイルブロードバンド(MBB)を合わせて約4353万回線。このうちMBB市場は2割近い約840万回線にまで成長しており、イー・モバイルのMBB回線は3月末時点で約402万契約と50%近いトップシェアを誇る。ガン氏は同社の強みとして、「通信が高速であることに加え、全国県庁所在地の99%をカバーするアグレッシブなエリア展開、5年連続でナンバーワンという端末の販売実績、そしてアフターサポートに対する高い満足度」という4点を挙げた。また、EMOBILE LTEが国際標準規格のFDD方式を採用し、周波数も世界で50以上の事業者が使う「国際標準といえる1.7GHz/1.8GHzを使っている」(ガン氏)こともアピールした。
合弁によるMVNOは2社の決意の現れ
ECサイトからスタートした楽天の事業だが、現在は40以上のサービスを手がけている。この時期にあえてモバイル事業に参入する狙いについて三木谷氏は、「先般サービスインした電子ブックリーダーの『kobo touch』と電子書籍ストアの『楽天 kobo イーブックストア』、また海外で発表したタブレット端末『Kobo Arc』など、コンテンツの配信事業が増えてきた。また従来のECサイトでもリッチコンテンツの利用が増えている。その市場環境の中で、現在のスマートフォンの通信スピードには問題があり、モバイルWi-Fiルーターへの可能性は高いと考えている」と説明。また「残念ながら楽天にはモバイルネットワークの技術が無いため、イー・アクセスさんと組むことで技術的なバックボーンを得ることができる。既存会員のニーズが高いサービスを提供することで、楽天経済圏内でのシナジー効果もより高まるだろう」と予測した。
またイー・アクセス側の視点として千本氏は、「楽天という国内最大のECサイトは、最も強力なデータベースでもある。この販売チャンネルを生かさせていただいて、通販ユーザーへ一挙にリーチしたいと考えている。また(楽天の)マーケティング力は我々にとって羨望のまなざしで見るもの。これに、我々のネットワークを融合させたい」と述べた。
楽天スーパーWiFiが異例なのは、キャリアの通信サービスを採用する楽天が直接MVNOになるのではなく、イー・アクセスと子会社を設立する点だ。これについて三木谷氏は「この事業に対し、2社が本気でコミットしたい、大きなものにしたい、という強い意志の現れ。また、単純なラインセンス契約ではなく、2社で利益を上げていくという点で合弁が最善の方法と判断した」と説明。また千本氏も、「国内最大のサービスを提供する異業種(の楽天)と組むのであれば、この際お互いのノウハウを共有したい。それには、リスクと責任の共有も必要になる。それだけこの事業にコミットしたい、あえてリスクを取って進めることで、今までのMVNOにはない革新的なサービスを生み出したい」と、新事業への決意を表明した。
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