LTE開始前なのにハイエンドモデルを投入したい中国メーカー事情:山根康宏の中国携帯最新事情(3/3 ページ)
中国では、LTE開始を待たずして最新モデルの発表が相次いでいる。“国外大手メーカー”に負けないハイエンドモデルに注目っ……て、え、なに、3G……。
世界最薄も続々。5.75ミリのVivo X3
AV機器関連メーカーでもある広東省の歩歩高電子は、会社名を英語読みしたときの頭文字からとった「BBK」の名称で有名だ。スマートフォンは2012年からVivoブランドで製品を展開しており、その最新モデルが「Vivo X3」だ。本体の厚みが極端に薄く、ホワイトモデルが5.95ミリ、ブルーモデルにいたってはわずか5.75ミリと、現在発売しているスマートフォンの中では世界最薄となっている。
Vivo X3のプロセッサーはMediatekのMT6589T(1.5GHzクアッドコア)で、ディスプレイがサイズ5インチ解像度720×1280ピクセルだ。RAMは1Gバイト、フラッシュROMは16Gバイトを用意する、カメラはメインが有効800万画素で、インが有効500万画素になる。OSはAndroid 4.2を導入した。対応する通信方式はTD-SCDMAだ。
VivoブランドのスマートフォンはX、S、E、Yと4つのシリーズがあるが、X3を含むXシリーズは音楽再生を強化したモデルとなっている。それゆえに、音源にES9018のDACチップを実装して高音質の音楽再生が可能だ。さらに、音楽再生時に歌の声だけをリアルタイムで消せるカラオケ機能も用意した。
このほか、画面の前で手を振るだけでページ送りなどの操作ができる非接触コントロールや、画面ロック中も画面上に指先でアルファベットを書くことでアプリを起動できるSmart wake機能など、自社開発したUIも導入している。Vivo X3は単純に薄さだけを訴求する製品ではなく、音楽の楽しみと使いやすさを追求したモデルといえるだろう。
ちなみに未発売モデルを含めれば、ODM大手メーカーのUmeox(優美)が2013年6月に発表したX5が厚み5.6ミリで世界最薄といわれている。だが、X5はまだ発売しておらず、今後の発売日も未定だ。Umeoxは世界各国の通信事業者などに製品を提供しているので、このX5もOEM先のブランドとして登場するかもしれない。いずれにせよ「世界最薄」を競うスマートフォンがここのところ中国メーカーから次々と出てきている。2012年1月にHuaweiが発表した「Ascend P1 S」が6.68ミリ、2013年5月にOPPOが発表した「Finder」は6.65ミリ、そして6月にはHuaweiが6.18ミリの「Ascend P6」を発表して、これらの製品は実際に中国で販売している。
スマートフォンの薄型競争は、今後しばらく中国メーカー同士の独擅場となりそうである。
世界初「2Kディスプレイ」モデルも発売予定
今回紹介した2機種は、どちらも“3Gのみ”に対応しており、LTEには“対応しない”。しかし、LTE対応したモデルを年明けにも発売しないと国外メーカーの新製品と競争できないだろう。例年、1月にはソニーモバイルがXperiaシリーズのフラッグシップモデルを発表しており、Samsung電子も2014年1月にはGALAXY S5を発表するとの“うわさ”がある。このようなタイミングを考えると、LTE非対応であってもこの時期に新機種を発表する中国メーカーの戦術は間違ってはいない。
だが、LTE対応のハイエンド製品も各社は準備を始めている。その先陣を切るかのようにBBKの最新製品が発表になったばかりだ。同社は10月16日からVivo Xplay 3Sのティーザー広告を開始しているが、通信方式は中国移動が求めるTD-LTEとFDD-LTEの両方式に対応している。プロセッサーはSnapdragon 800シリーズのクアッドコアタイプで動作クロックは最大で2.3GHzだ。最も注目したいのがディスプレイの解像度で世界初となる1440×2560ピクセルを採用したことだ。
Vivo Xplay 3Sの発売は、早くても2014年の年明けだろう。中国移動のTD-LTEだけではなく国外のFDD-LTEにも対応するので、発売になれば世界中で大きな話題となりそうだ。海外の通信事業者から引き合いがある可能性も考えられる。中国以外の地域や国で、中国メーカーのスマートフォンはまだまだ「知る人ぞ知る」程度の存在だ。だが、今回紹介した3製品の海外展開が始まれば、中国メーカーのハイエンドスマートフォンが、グローバル市場で十分通用するだけの実力を持っていることを大きく知らしめることになるはずだ。
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