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間もなく合併して新会社に ウィルコムとイー・モバイルの足跡を振り返る佐野正弘のスマホビジネス文化論(3/3 ページ)

6月に合併する予定のイー・アクセス(イー・モバイル)とウィルコム。定額音声通話や高速なモバイルデータ通信など、今日では当たり前になったサービスをいち早く提供してきた両社の歩みを振り返ってみたい。

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2社の取り組みを受け継いだワイモバイルは何を提供する?

 規模や戦略的に近しい部分があり、ライバル関係にあったイー・アクセスとウィルコム。だがその両社には、ある共通点が存在する。実は両社とも、イー・アクセスの取締役名誉会長であった千本倖生氏が創設に大きく関わっているのだ。

 そもそも千本氏は、旧電電公社から独立してDDIの創業に関わり、DDIセルラー(現在はKDDIのau携帯電話事業)とDDIポケットを相次いで立ち上げた人物でもある。その後DDIを離れてイー・アクセス、そしてイー・モバイルを創設しており、かつてNTTが独占していた日本の通信競争に、大きな影響を与えたといえるだろう。そうした千本氏が立ち上げた企業が1つの会社に集約されていくというのは、どことなく運命的なものを感じさせる。


千本氏はイー・アクセスだけでなく、ウィルコム(DDIポケット)の立ち上げにも大きく関わった人物でもある

 だが、ウィルコムやイー・アクセスといった中小規模のキャリアが、資金繰りが原因で姿を消していったという点からは、短期間での全国的な高速・大容量インフラの整備が求められる中、新規参入企業がモバイルのインフラを1から手掛けて大手キャリアに対抗することがいかに難しいことかも見て取れる。

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 かつて携帯電話事業者の新規参入を促していた総務省だが、現在はインフラを借りてサービスを展開するMVNOによる競争促進に動いているというのも、2社の結果が大きく影響している部分があるかもしれない。

 冒頭で触れた通り、来る6月1日にイー・アクセスはウィルコムを吸収合併する。新社名のワイモバイルになる時期や、ヤフーとともにY! Mobileを提供する時期、そしてどのようなサービスを提供するのかはまだ判明していない。

 インフラを提供する新会社と、サービスを提供するヤフーが、果たしてどのようなモバイルサービスを作り出すのか? そこに前身企業の取り組みがどう生きているのか、今から注目しておきたい。

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