KDDI系MVNOの動きが活発に――始動した「UQ mobile」と、改善を図る「mineo」の戦略:石野純也のMobile Eye(12月8日~19日)(2/3 ページ)
この2週間は、KDDIのネットワークを用いたMVNOの動きが注目を集めた。まず1つが、KDDIが子会社として設立したKDDIバリューイネイブラーが提供する新しい通信サービス「UQ mobile」だ。そして、同じくKDDI系MVNOのサービス「mineo」でも料金の値下げや新機種が発表された。
ケイ・オプティコムも値下げ&データ量アップで対抗、新サービスも
KDDI系のMVNOとして、先に参入していたケイ・オプティコムだが、料金プランではUQ Mobileに水をあけられた格好になった。同社のプランは1Gバイト、980円から。毎月1Gバイトが追加になるキャンペーンを実施していたため、事実上、UQ Mobileと同容量、同額になってはいるが、これは2015年1月に終了する予定。2月以降に料金プランが見直される旨は発表されていたが、詳細は不明だった。
こうした状況の中、12月18日に、ケイ・オプティコムはmineoの新料金プランを発表した。2月1日から、既存の1Gバイトプランは980円から850円に、2Gバイトプランは1580円から980円に値下げされる。3Gバイトプランは容量を1Gバイト増やし、4Gバイトプランとして2330円から1580円に改定される。音声通話対応の場合は、ここに700円が加算される仕組みだ。
2GバイトプランでUQ Mobileと並びつつ、あえて1Gバイトプランを残した格好になるが、ケイ・オプティコムでMVNO事業を担当する、モバイル事業戦略グループ グループマネージャー 津田和佳氏は、その理由を次のように語る。
「まず、ユーザーの皆さんの使い方を見極めるために、パケットのキャンペーンを始めた。その中で、翌月まで繰り越せるから余ってしまった、1Gバイトでも十分という声を多数拝見した。ユーザーのベネフィットを追求して、より最適なサービスを目指すため、1Gバイトを中心にサービスを提供する」
ユーザーの利用動向を踏まえ、980円という料金のまま容量を増やすのではなく、1Gバイトプランを850円に値下げするというわけだ。同時に、2GバイトプランはUQ Mobileと同額の980円に設定し、競合他社と比べても見劣りしない料金プランを打ち出した。
MVNOの原価の大半は、MNOに支払う接続料だ。mineoの場合は、KDDIに支払う使用料ということになる。接続料の安いドコモ系MVNOに比べ、mineoは価格設定で不利になりがちだが、「プロモーションをWeb中心に絞り、効率よくやっている。社内でもバックオフィスのコストを抑えている。十分やっていけるということで値下げした」と値下げに踏み切った。津田氏によると、KDDIが2015年度の接続料を値下げすることも、見込んでいるようだ。
一方で、ドコモ系のMVNOを見渡せば、mineoより安いサービスが存在する。例えば、U-NEXTのU-mobileは1Gバイトで680円。1Gバイト、850円のmineoを下回る。接続料が2倍程度違うドコモ系MVNOとKDDI系MVNOでは、やはりエンドユーザーに提示する金額に差が出てしまうというわけだ。これに対し、ケイ・オプティコムが差別化の軸として打ち出すのが“品質”だ。津田氏によると、mineo開始以降、KDDIとケイ・オプティコムを接続する帯域は10回増強しており、十分な速度が出ていると語る。
「ピークの時間帯は若干速度が落ちる面もあるが、できるだけ快適にお使いいただけるように質のところをしっかりやっている。mineoは、夏場あたりに非常に(多くのユーザーに)入っていただいた。他社でもっと安いところはあるが、十分戦える」
実際、使い放題の料金プランを打ち出したMVNOの中には、ネットワークの増強が追いつかず、十分な速度が出ていないところもある。こうした問題が起こらないように品質を高め、使い勝手のよさで差別化していくのがケイ・オプティコムの戦略だ。ただし、MVNOの速度差などは、実際に使ってみなければ分からないところが多い。こうしたユーザーの声を浸透させるには、新たに開設するコミュニティサイトが役に立ちそうだ。こうした場でユーザーに情報を積極的に開示していけば、品質の高さが伝わるだけでなく、ロイヤリティの向上にもつながる。
品質は速度だけにとどまらない。2015年2月には、直近3日間で500Mバイト以上利用するとかかる速度制限を撤廃。各プランの容量の範囲内であれば、1日で使い切ろうが、30日均等に使おうが、制限がかからなくなる。春以降には、「ターボ機能」を導入する予定だ。これはIIJmioやOCN モバイル ONEで好評の機能。ユーザーが自由に高速通信のオン・オフを切り替えられるもので、データ容量を効率よく使うことが可能になる。こうした改善に対する反響を、先に挙げたような施策で十分訴えていけるかが、今後の行方を占うカギになりそうだ。
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