KDDI系MVNOの動きが活発に――始動した「UQ mobile」と、改善を図る「mineo」の戦略:石野純也のMobile Eye(12月8日〜19日)(3/3 ページ)
この2週間は、KDDIのネットワークを用いたMVNOの動きが注目を集めた。まず1つが、KDDIが子会社として設立したKDDIバリューイネイブラーが提供する新しい通信サービス「UQ mobile」だ。そして、同じくKDDI系MVNOのサービス「mineo」でも料金の値下げや新機種が発表された。
KDDI系MVNOに残された課題とは
ケイ・オプティコムは新端末も発売する。同社は、ミッドレンジの「DIGNO M」や、ハイエンドの「AQUOS SERIE」を販売中。ここに加わるのが、京セラ製の「LUCE(ルーチェ)」だ。LUCEはエントリーモデルという位置づけの端末。価格は3万3600円で、4.5型、540×960ピクセルのディスプレイを採用する。チップセットは、Snapdragon 400の「MSM8926」(1.2GHzクアッドコア)となる。
端末の形状などは、UQ Mobileの「KC-01」に近いが、これは同じ京セラのグローバルモデルがベースになっているため。LUCEは国際ローミング用のGSMに非対応な一方で、KC-01にはない耐衝撃性能を備える。また、12月10日にはWi-Fiルーター「Aterm」の販売を開始した。これで、ハイエンドからエントリーまでのスマートフォンとWi-Fiルーターという一通りのラインアップがそろったことになる。
ケイ・オプティコムが独自で端末を調達しているのは、CDMA2000 1xに対応したSIMフリー端末が、市場にほとんど存在しないためだ。KDDIバリューイネイブラーも事情は同じ。世界で主流のW-CDMAと比べ、端末が少なく、SIMフリー端末がほとんど出回っていない。通信にはLTEを採用するKDDI系MVNOだが、通話まで対応させようとするとどうしてもキャリアが独自に端末を調達せざるをえない。iPhoneはCDMA2000 1xとW-CDMA、両方の3Gに対応する珍しい端末だが、iOS 8でKDDI系MVNOが利用できなくなってしまった。この点は、新規参入するUQ Mobileも事情は同じだ。
KDDI本体もかつてスマートフォンの調達で、W-CDMA陣営に後れを取ったことがあったが、その問題がMVNOで再燃したという構図だ。とはいえ、以前に比べれば、CDMA2000 1x対応も容易になっている。市場性さえあれば、メーカーが独自に端末を投入することもありえない話ではない。こうした点では、ケイ・オプティコムの津田氏もUQ Mobileの参入に期待をのぞかせていた。キャリアが増えれば、その分、メーカーの負担も軽くなり、端末を発売しやすいというわけだ。
鶏が先か卵が先かの議論になりそうだが、端末が増えることの大前提として、au回線を使うMVNOが増える必要もある。とは言え、現状ではドコモの2倍近い接続料が、MVNO参入の足かせになっている。KDDIバリューイネイブラーの菱岡氏は「接続料の値下げ要求はしていかないと、会社が立ちいかない」と話し、親会社のKDDIに対してもMVNOとして意見を述べていく方針。ケイ・オプティコムの津田氏も、「接続料については要望を出していく」と語っている。
MNOの接続料は、設備にかかった原価をトラフィックで割る形で算出しているため、分子を小さくするか、分母を大きくすれば低価格にすることは可能だ。ただ、ユーザー数の差を考えると、分母であるトラフィックをすぐに大きくすることは難しいかもしれない。一方で、トラフィックが少ないなら、そのぶん、設備費用をもっと安く見積もれるのではないかという見方はできる。実際、MVNOの中には、ここまで接続料が違えば、エンドユーザー向けの料金がドコモと同じなのはおかしいと主張している向きもある。いずれにせよ、現状のように2倍程度の差がついていると、MVNOが参入しづらいのは事実。MVNO市場を広げたいのであれば、KDDIのさらなる値下げは必須になるだろう。
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