総務省・有識者会議でUQモバイルとワイモバイルが標的に――MNO子会社とサブブランドに協調的寡占状態を招く懸念:石川温のスマホ業界新聞
総務省で、2015年に行われた「タスクフォース」のフォローアップ会合の2回目が開催された。ここで2社のMVNOから意見聴取が行われたが、うち1社から大手キャリアの子会社が運営するMVNOと、大手キャリアのサブブランドに対する懸念が提起された。
10月17日、総務省にてモバイルサービス提供条件・端末に関するフォローアップ会合の第2回が開催された。今回は3キャリアに加え、インターネットイニシアティブとケイ・オプティコムというMVNO事業者がヒヤリングの席に呼ばれた。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2016年10月22日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
今回の有識者会合では、「SIMロック解除」「中古端末の普及」などがテーマとなっているが、そんななか、新たなテーマを持ち出して攻めてきたのがケイ・オプティコムだった。
ケイ・オプティコムは「一部のMNO子会社やサブブランドはMVNOでは為し得ないような料金・サービスを展開しており、MVNO市場がMNOによる協調的寡占状態になりかねない」と主張。
MNO子会社はUQモバイルのことであり、サブブランドはもちろんワイモバイルのことを指す。さらにケイ・オプティコムは「価格・品質面のみならず、営業サポート面、端末ラインナップ等、ほかのMVNOでは追随が困難と思われる活動を展開している」と指摘し、「グループ内外で差別的な扱いをしていないか検証が必要」とした。
今回の会合で、具体的にこの問題が深掘りして議論されることはなかったが、今後、再び有識者会議が開かれることがあれば、議論の対象となる可能性は充分にありそうだ。
確かに、UQモバイルやワイモバイルは、アップル・iPhone 5sを取り扱い、ネットワーク品質面でもMVNOに比べて安定して高速なイメージがある。また、販売面でも、キャリアショップのスタッフが支援するなど、手厚いサポートを受けている感がある。
ただ、航空業界を見ても、かつてLCC(格安航空会社)が盛り上がっていたが、いずれも経営が立ち行かなくなり、結局は大手航空会社が資金的に支援したり、傘下に収めたりと、大手キャリアによる協調的寡占に近い状態になってしまった。さすがに日本市場に200社以上も格安スマホ会社がある必要はないわけで、いずれ大手のMVNOもしくはキャリアに集約する可能性が充分に高いだろう。
かつて、ケータイで「JALマイルフォン」を提供していたMVNOの経営が立ち行かなくなり、回線を提供していたKDDIがユーザーを引き取ったということがあったが、似たようなことが今後も起こるだろう。
そうなると、ドコモ系MVNOであれば、MVNEを行っている会社が受け皿になるだろうし、今後、KDDIやソフトバンクの回線を使ったMVNOが増えれば、UQモバイルやワイモバイルが支援先になるのが自然な流れだ。将来的な受け皿として、MNO子会社が機能してくるはずだ。
一方、今回の会合では「MVNOもガイドラインの対象にすべきか」という議論もあった。会合に参加していたインターネットイニシアティブとケイ・オプティコムは「問題ありません」というスタンスであった。確かに両社は固定なども手がけるなど、通信サービスを中心とした事業展開をしているだけに問題ないのであろう。
だが、MVNOのなかには、楽天モバイルなど、通信をメインとはせず、別の事業が中心という事業者も存在する。楽天モバイルは格安スマホでネット通販を使ってくれればいいわけで、端末を大幅に値引いてばらまくといったことも頻繁に行っている。ガイドラインがMVNOに適用されれば「端末の割引はMNVOでも許すわけにはいかない」となるわけで、楽天モバイルにとっては苦しい立場に追いやられるはずだ。
本来、MVNOは通信以外で成功している会社が、格安スマホと組み合わせることで、MNOが提供できない、個性的で魅力的なサービスを展開してこそ、存在感が出てくるはずだ。
ガイドラインをMVNOに適用することで、MVNOの個性を殺すことになりはしないかと心配でならないし、そこまでの視点が全くない総務省の有識者会議にも呆れるばかりなのであった。
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