10Gbpsの高速通信にも実現のめどが――ドコモが5Gの最新技術やサービス像を披露(2/2 ページ)
NTTドコモは11月17日から18日にかけて、同社の最新技術などを展示する「ドコモR&Dオープンハウス」を開催。同イベントの開催に先駆けて、11月16日にはドコモは次世代の通信技術とされる「5G」に関する取り組みを報道陣に公開した。
5Gを活用したサービス創出が今後の課題に
かつては消極的な傾向が見られた海外の事業者も、最近では5Gに向け積極的に取り組むなど、5Gの実用化に向けては世界的に盛り上がりを見せているとのこと。今回のイベントでのデモを見ても、実現に向け着実に進展している様子がうかがえるが、それでも中村氏は現在の進展状況を「4割くらい」と答えている。
その大きな要因が、利用者に5Gのユースケースを示せていないこと。中村氏は、今後は「サービスを創出することが大事」と話している。5Gを普及させるためには無線通信のインフラを整備するだけでなく、5Gが持つネットワークの能力を生かすサービスが必要だと考えているようだ。
自動運転車両の遠隔監視
そこで今回のイベントでは、いくつかのパートナー企業と連携し、5Gに向けたサービス創出を進めている案件も紹介。その1つが、DeNA(ディー・エヌ・エー)と共同で取り組んでいる、5Gによる自動運転車両の遠隔監視である。デモではDeNAが展開する無人運転バスサービス「ロボットシャトル」に用いられている、フランスのイージーマイル製車両「EZ10」に、4Kのカメラと4台のGoPro、そして5Gに対応した移動機を搭載。そこから5Gのネットワークを経由して、映像をリアルタイムに送信して監視するデモを実施していた。
今回は映像の監視にとどまっており、車両を直接遠隔制御する仕組みは用意されていない。そしてその理由は、自動運転バス「ロボットシャトル」のサービスが5Gの展開以前に実施されるためだという。5Gによる自動運転車の遠隔制御に向けた取り組みは、今後検討していくとのことだ。
東京スカイツリーで実証実験
11月9日に5Gのトライアルサイトでの5Gサービス創出に向けた協力で合意している東武鉄道とは、東京スカイツリーや東京ソラマチなどがあるエリアに、4.4~4.9GHz帯と、28GHz帯を利用した5Gのネットワーク環境を構築。その上でVRなどを活用した、新しいサービスやコンテンツの開発を進めていく。2017年5月より順次実験を開始し、将来的には東武鉄道が路線を持つ日光・鬼怒川エリアなどにも取り組みを広げていきたいとしている。
JDIとはマルチメディアサービスを展開
11月16日には、新たにALSOK、凸版印刷、そしてジャパンディスプレイ(JDI)とも連携し、サービス創出に向けた実証実験を拡大することを発表している。中でもJDIは、サイネージなどの利用を想定した、バックライトを使用しない反射型の超低消費電力ディスプレイや、高精細タッチパネル搭載ディスプレイ、17.3型の8K液晶ディスプレイなど、多様なディスプレイを研究・開発している。JDI側としても、そうしたディスプレイ技術と5Gを組み合わせ、新しいマルチメディアサービスを提案していきたいとのことだ。
5Gハッカソンで生まれた「Free Viewpoint LIVE」
ドコモは、5Gのサービス創出に向けたハッカソンを実施しているが、そこから生まれたアイデアを実際に5Gと連携させ、共同開発する取り組みも新たに進めていく。そのうちの1社となるクレッセントは、グリーンバックのステージ内にいる人物を16台のカメラで撮影して立体化し、5Gのネットワークを使って遠隔地にリアルタイムで送信する「Free Viewpoint LIVE」のデモを実施。ディスプレイで確認するだけでなく、VRのヘッドマウントディスプレイを用いることで、リアルな人物の姿を確認できるようになるとしている。
こうしたパートナー企業とは、2017年5月以降に展開する「5Gトライアルサイト」で体験できる環境を構築していくとのこと。5Gトライアルサイトは東京スカイツリータウンのほか、お台場の東京臨海副都心地区にも用意される予定だ。
ちなみに、DOCOMO R&D Open House 2016に展示されていたのは、5Gに関連するものだけではない。伸縮するディスプレイに合わせてコンテンツを表示するフレキシブルディスプレイに対応したUI技術など、他にもさまざまな新技術を実際体験できた。
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