最新スマホとは“対極”の製品が売り切れるほど人気の理由
最新スマホは多機能で便利な一方、人の対応が追い付かず、機能に振り回される面も。そんな今、通話機能しかない携帯電話が米国で注目を浴びている。
ITの「過剰利用」から「スマート利用」へ
インターネットが世の中に登場して以来、ITをベースとしたさまざまなプロダクトやサービスが毎年のように増えている。
ITの発展で、いつでもどこでも仕事ができ、誰とでもコミュニケーションがとれるようになり、どんな情報でも検索できるようになった。20年前と比べると、仕事・生活における利便性は確実に向上したといえる。
一方で、私たちがITをうまく使いこなす能力は、ITの発展速度ほど、急速に進化できなかった感も否めない。インターネットやソーシャルメディアへの“依存”ともいえるほどの過剰利用など、テクノロジーに振り回される状態といえる。
たまにはインターネットデバイスを手放して生活してみよう、という「デジタル・デトックス」のコンセプトに賛同する人々が増えるのもうなずけるのではないだろうか。
こうした動きはITへのカウンターカルチャーとして見ることができる一方で、ITと絶妙な距離を保ち、過度に依存せず、スマートに使いこなそうという動きと捉えることもできる。
最近では、そうしたトレンドを反映したプロダクトやサービスが増えている。「ライトフォン」(Light Phone)はそんなプロダクトの1つだ。
通話機能のみの携帯電話「ライトフォン」、即売り切れるほどの人気
ライトフォンは、クレジットカードサイズで短縮ダイヤルと時間表示、そして通話機能のみの携帯電話だ。
必要なときに必要最小限のコミュニケーションをとる「2台目」としての利用を前提としている。スマートフォンのアプリと連動させる必要があるので、スマホを持っていることが利用の条件となる。
スマホ自体は多機能で非常に便利なデバイスだが、ときに情報の氾濫をもたらすものでもある。そうした状況を回避し、デジタル・デトックスしたいという人々のニーズを満たすために開発したという。
米クラウドファンディングサイトKickstarterでキャンペーンを実施し、プロダクト化に成功したが、その人気に拍車が掛かり、現在は入手困難な状況になっている。
価格は150ドル(約1万6000円)と、通話機能だけの携帯電話にしては高い。しかし「アンチテクノロジーではなく、私たちがより人間らしく、人生を取り戻すために開発された」というプロダクトコンセプトが、多くの人々の共感を集めた。
ライトフォンは、Light社が提供しているSIMカードを月額5ドル支払うことで利用できる。1台目のスマホキャリアとは独立して利用する形になる(現在米国内での利用に限られる)。
専用アプリを使って1台目のスマホから、既存の登録電話番号をライトフォンに記録して使う。とにかく「極力使わないように」デザインされている点が新鮮だ。
デジタル・デトックスのトレンドは、ライトフォンだけにとどまらない。Nokiaブランドを保有するフィンランドのHMD Globalが2月に発表した「Nokia3310」は、テキストと通話だけのシンプル携帯電話。2000年代頭に世界的にヒットしたNokiaのフィーチャーフォンの復刻版で、スマートフォンではないにもかかわらず話題を集めた。
高機能のスマートフォンが普及する一方で、「そんなに使わない」「ずっとネットにつながっていたくない」というニーズも一定数あるのかもしれない。
ITの発展に伴い、社会の変化速度が速くなっている今、変化にキャッチアップするために、常に自らの知識やスキルを高めていく必要がある。
一方で、ITの過剰利用は集中力を奪ってしまい、知識・スキルアップのスピードを大幅に下げてしまうだろう。いま必要なのは、ITをスマートに使いこなし、社会の変化に適応していく能力だ。
デジタル化した世界で、どのように自分へのフォーカスをぶらさず、集中力を維持していくのかを書いた『The Distraction Trap: How to Focus in a Digital World』という本がある。
この本の著者がデジタル・デトックスのメリットについて述べているので、いくつか紹介しておこう。
まず集中力が高まり、生産性が向上する。自身へのフォーカスが高まり、テクノロジーに振り回されるのではなく、どう活用してくのかという視点で思考できるようになる。また、デジタルテクノロジーの加速する進化スピードを冷静に見つめ、次の一手をどのように打つか深く考えることができる。など、デジタル・デトックスは、人生やキャリアを左右するほどのメリットをもたらす可能性があるので無視できない。
ITの“スマート”な利用は、ITの進化についていくために人間側に求められる必須能力になっていくのではないか。
ライター
文:細谷元(Livit)
編集:岡徳之(Livit)
関連記事
Nokiaの2017年復刻版レトロケータイ「3310」は売れている?
2017年に復活したNokiaの「Nokia 3310」は、通話とSMSに対応したシンプルなケータイ。発表当時は話題を集めましたが、SNSを利用できないのがネックで、“見るだけで十分”な存在になっているようです。Nokiaブランドのハイエンド端末「Nokia 8」登場 Snapdragon 835搭載、2画面撮影可能
Nokiaブランドを保有するHMD Globalが、Snapdragon 835搭載でアルミユニボディのハイエンドAndroid端末「Nokia 8」を発表した。9月に欧州で発売する。ZEISSの背面/前面カメラで同時に撮影した画像/動画を2分割画面で録画できる。懐かしのフィーチャーフォン「Nokia 3310」、パワーアップして復活
Nokiaが2000年に発売したフィーチャーフォン「Nokia 3310」の新モデルをHMD Globalが発表した。OSは「Nokia Series 30+」で、セルフィーカメラもタッチディスプレイもなく、LTEもサポートしないが、オリジナルよりカラフルな4色ラインアップで49ユーロ(約5800円)と安価だ。初号機からiPhone 7まで 「iPhone」の10年を振り返る
2017年は初代iPhoneが発売されてから10年。9月13日(日本時間)の新iPhone登場に向けて、これまでのiPhoneをおさらいしておこう。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.