トーンモバイルがiPhone向けSIMを発売した理由は? 石田社長に聞く:MVNOに聞く(1/3 ページ)
トーンモバイルが、iPhone用をうたうSIMカード「TONE SIM(for iPhone)」を発売した。iPhoneに挿してアプリをインストールすることで、子どもの利用を管理できる。なぜこのタイミングでiPhone用SIMを発売したのか。石田宏樹社長に聞いた。
前身であるfreebit mobile時代から、ネットワークから端末までを一手に手掛ける「垂直統合型」のビジネスモデルにこだわってきたトーンモバイルが、iPhone用をうたうSIMカード「TONE SIM(for iPhone)」を発売した。料金は月額1500円(税別、以下同)から。通常のトーンモバイルが提供する料金プランよりも500円ほど高いが、これは、子どもを見守るための機能が付加されているためだ。
このSIMカードは、iPhoneにインストールするアプリと連動。親の端末から位置情報を確認したり、フィルタリングがかかったブラウザを導入したりできるのはもちろん、アプリを勝手に削除しようとすると、通信が止まる仕様になっている。アプリと通信、それぞれ異なるレイヤーを融合させたサービスに仕上がっているというわけだ。
一方で、やはりiPhoneはiPhone。トーンモバイルが直接手掛けてきた端末と比べると、同社がコントロールできる部分は少なくなる。垂直統合モデルにこだわりを見せてきた同社が、なぜこのタイミングでiPhone用のSIMカードを発売したのか。同社で代表取締役社長CEOを務める、石田宏樹氏に理由を聞いた。
iPhoneの市場はSIMカードで狙いたかった
―― これまで、トーンモバイルは通信から端末まで一体となったサービスを提供してきました。なぜ今、iPhoneのSIMカードなのでしょうか。
石田氏 前々から言ってきたことですが、日本にはごちゃごちゃになったAndroidと、iPhoneという2つの世界があります。ごちゃごちゃのAndroidに対しては、ハードウェアまで含めた垂直統合でサービスを提供する。一方で、(もともとがシンプルな)iPhoneはSIMカードで狙うという計画がありました。
古くからやっているApple(関連)のプログラマーがいるので、毎年デベロッパーカンファレンス(WWDC)に行きながら、動きは追い続けていました。WWDCは現地で直接(Appleと)話せるので、開発者の方とはMDM(Mobile Device Management=法人などで従業員用の端末を一括管理する仕組み)の話などのやりとりを続けてきました。前々から準備はしていたのです。アプリに関しても、実はAndroid用だけでなく、iPhone用も同時に開発してきていました。
リユース市場の活性化は、とても重要なテーマです。自宅に眠っているiPhoneが2000万台、3000万台といわれる日本特有の事情がある中で、SIMカードさえ挿せばお子様のiPhoneになる。これは、マーケティングメッセージとして、強く訴えていきます。美しい“おさがり”の形を訴求していければと考えています。
―― iPhone用は、これまでずっと、日の目を見ていなかったということですか。
石田氏 ずっとそうです(笑)。ただ、コアになる部分は、ずっと開発を続けてきました。
―― ということは、出そうと思ってから、市場投入までは、割とスムーズだったのでしょうか。
石田氏 そうですね。サービスを(子どもが勝手に)停止してしまった場合にどうするかというところがかなり見えてきたので、出せるようになりました。
アプリの削除で通信が止まる仕組み
―― アプリをアンインストールすると、通信が止まってしまうというお話ですが、この仕組みを改めて教えてください。
石田氏 MDMの機能とアプリ自体の機能を使っています。アプリが動作しているかどうかは常にチェックしていて、何かあったときに警告が上ってくる仕組みです。その後、一定時間でそれが解消されない場合に、通信が止まります。
―― アプリのレイヤーから上がってきた情報を、交換機側に反映させているということですね。
石田氏 そうです。データ通信そのものを止めています。アプリと構成プロファイルでちゃんと監視することで、何かあったら交換機のレイヤーで遮断するようにしています。
―― MDMはもともと、法人向けの仕組みだと思いますが、これを個人向けサービスに活用したところには驚きました。
石田氏 Appleの場合、うまい規約があって、法人向けにはパートナープログラムがあります。これに入ると、App Storeを介さず、直接アプリを配信できます。ただ、これは法人の従業員などに範囲が限られています。そこも模索しましたが、できないということで断念しました。一方でMDMには共通仕様のものもあり、どういう風にコントロールするかは、そのプロトコルに基づいて、われわれが書き起こしています。
―― ここまで作り込む必要はあったのでしょうか。
石田氏 いろいろな意味でちゃんと動くものを出したかったからです。マーケティングメッセージとしてもそうですが、今まで見守りと呼ばれているものはあったが、本当に見守れているのかという思いがありました。
―― と言っても、自社で出しているAndroid端末と全く同じようになるわけではないと思います。差分はどこにあるのでしょうか。
石田氏 (今後提供を予定している)「あんしんモード」にならないと、アプリごとのコントロールができません(かんたんモードでは、App Storeのレーティングに基づく制限しかできない)。ここに、どこまでのニーズがあるのかを見極めながらやっていきたいと考えています。
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