勝社長「IIJとして通信の最適化を行う考えはない」
IIJが2017年度通期の決算を発表。2018年3月末時点のモバイル総回線数は234万5000に増加。3月にフルMVNO事業を開始したが、初年度は赤字を見込んでいる
IIJ(インターネットイニシアティブ)が5月15日、2017年度通期の決算を発表。2017年度のモバイル回線総売り上げは353.3億円で前年比32.3%増に。2018年3月末時点のモバイル総回線数は234万5000で前年比26.4%増、MVNE顧客数は137社に上る。
2018年3月末時点で、個人向け「IIJmio」は100万5000回線、法人向け「IIJモバイル」は134万回線(うちMVNEが82万5000)となった。IIJmioはここ最近、低調な伸びが続いていたが、2017年度第3四半期から1万8000の純増となり、第2四半期から第3四半期までの純増数1万5000より伸びている。
IIJ 常務取締役 CFOの渡井昭久氏は「(IIJmioは)商戦期の3月にかけて(契約数が)上がっている。的確にキャンペーをやったことが効いた」と手応えを語った。IIJモバイルは第3四半期が15万3000増、第4四半期が16万6000増と好調に推移している。
フルMVNO事業、初年度は赤字見込み
IIJは2018年3月にフルMVNOサービスを開始したが、2018年度はフルMVNO事業で利益をあげることは見込んでいない。2018年度は、自社構築のHLR/HSSシステムの償却、ドコモ網の改造費用負担など、フルMVNO事業だけで月間1億円強の固定コスト増を見込んでおり、「売り上げは年間で5億円を超すくらいの予算設定にしている」と渡井氏。
つまりフルMVNO事業単体で見ると赤字だが、既存のサービスで利益を伸ばして、IIJ全体では2018年度は増益を見込んでいる。またフルMVNO事業についても、「案件は既に動き出していて積み上がってきている」(渡井氏)ことから、2019年度以降は利益を伸ばしていく計画だ。
ハイホーを事業譲渡
IIJは2017年12月31日に、子会社のハイホーをISPホールディングスに事業譲渡。ハイホー分の4億2000万円の売り上げがなくなった影響で、2017年度第4四半期の個人向けインターネット接続サービスの売り上げは、第3四半期の63億5600万円から60億5400万円に減った。
ハイホーを事業譲渡した背景について、勝栄二郎社長は「ハイホーはパナソニック(当時は松下電器産業)から取得し、B2Cの知見を蓄積したかった。IIJ本体は販路が多様化しており、選択と集中を図り、資本を効率的に投資した方がいいと判断した。いい買い手がいたので手放した」と説明した。コンシューマー系サービスはIIJmioで集中していく考えだ。なお事業譲渡後も、IIJはMVNEとしてハイホーのモバイル通信サービスをサポートしていく。
通信の最適化は行わない
2018年4月10日から「mineo」が「通信の最適化」を実施したことで、ゴールデンウイーク前後に非難が集中したが、IIJは通信の最適化について、どのようなスタンスなのだろうか。勝氏は「IIJとして最適化を行う考えはない」と明言する。
一方で、mineoと同様に、トラフィックのコントロールには苦労しているようだ。「理由ははっきりしないが、3~4月にかけてトラフィックが急激に増えている。4月はいつもより2~3回多く増強しているが、それでもまだ回復していない。5月は連休に工事が順調に行かなかったが、さらに増強したい」(勝氏)
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