タブレットからの脱皮を図るApple 新iPad Proでは“ノートPC対抗”がより明確に(2/2 ページ)
9月に続いて開催されたAppleのスペシャルイベントでは11型と12.9型の「iPad Pro」が発表された。新しいiPad Proはどのような位置付けの製品なのか。イベントを振り返りながら考察したい。
スペシャルイベントで語られたiPad Proの実力
スペシャルイベントに登壇したiPad Pro担当のジョン・ターネス氏は、冒頭で「最初のiPadから最も大きく変わっているモデル。もともとiPadが夢見ていたもの」と紹介。真っ先に披露されたのが、その形状とディスプレイの「Liquid Retina」だ。
Liquid RetinaとはiPhone XRから採用された液晶の名称で、iPad Proにはノッチはないものの、XシリーズのiPhoneやApple Watchと同様、角が丸みを帯びている。また、ワイドカラーやTrueToneといった既存の機能にも対応。もちろん、iPad Proの代名詞ともいえるApple Pencilもサポートしている。
ホームボタンを廃したことで、10.5型だったiPad Proは11型へと表示領域を拡大。逆に12.9型版はディスプレイサイズがほぼそのままで、本体がコンパクトになっている。これは先に掲載されたフォトレビューでも紹介した通りだ。12.9型版については先代のモデルの厚さ6.9mmから5.9mmになり、15%ほど薄型化していることや、全体のサイズが25%小型化しているといった数値も披露された。
ホームボタンやTouch IDを廃した代わりに搭載された機能として、次に紹介されたのがFace IDと、それを支えるプロセッサの「A12X Bionic」だ。Face IDについてはiPhone Xシリーズでおなじみのため詳細は割愛するが、iPad Proでは本体上部に赤外線カメラやドットプロジェクター、7メガピクセルカメラが搭載されていることが明かされた。上部には左右に環境光センサーも組み込まれている。iPhoneと比べ、物理的なサイズが大きいゆえに、ノッチを設けることなく、これらのデバイスを組み込めたようだ。
iPad Proの心臓部であるA12X Bionicは、iPhone XS、XS Max、XRの「A12 Bionic」を「さらに超えた」とターネス氏。トランジスタの数は「100億以上」(同)。CPUは8コア、GPUは7コアで2017年モデルと比べても2倍、初代iPadと比べると実に1000倍高速化しているという。ここでターネス氏は、「92%のポータブルPCよりも高速」というデータを披露。先に述べたように、PCの対抗軸であることを鮮明に示した格好だ。
iPad Proをタブレットから、より汎用性の高いPCのようなデバイスへと脱皮させていきたいAppleの意気込みは、次に紹介された1TBのストレージや、USB Type-Cへの対応からも見て取れる。特にUSB Type-Cの採用は、iPad Proに接続できる周辺機器の幅を広げるという意味で、重要な変更点だ。
スペシャルイベントでは、iPad Proを4Kディスプレイに接続して映像を出力したり、iPhoneをiPad Proから充電したりといった機能が紹介された。他にも、デジタルカメラを接続して撮影した写真をその場で見たり、音楽用の機材をつなげたりといったこともできるだろう。もちろん、一部はもともとのLightningでもできたが、汎用的な端子を採用することで、対応機器に広がりが生まれる。タブレットからの脱皮とUSB Type-Cの採用は、切っても切り離せない関係といえる。
Apple PencilやSmart Keyboardなど、純正アクセサリーも刷新
最後に披露されたのが、別売のApple Pencilだ。現行モデルのApple Pencilは、上部にLightningのプラグがあり、これをキャップで隠している形状だが、充電やペアリングの際にiPadに直接差し込まなければならず、お世辞にもスマートとはいえなかった。デザインにこだわるAppleにとって、これは苦渋の選択だったのかもしれない。
スペシャルイベントでは真っ先にワイヤレス充電に対応したことが明かされ、会場を沸かせた。iPad Proのサイドに充電用のポートが設けられており、Apple Pencilはここにマグネットで接続する格好だ。近づけるとカチッという音ともにApple PencilがiPad Proに吸い寄せられ、気持ちがよく、見た目もスマートだ。
充電方法を改善しただけでなく、Apple Pencil側にセンサーを内蔵し、ダブルクリックでアプリ上のツールを切り替えるといった使い方も可能になっている。従来モデルのApple Pencilでも書き心地は十分よかったが、これもさらに精度を上げているようだ。
最後に、本体にマグネットで装着できるSmart Keyboard Folioが紹介された。キーボードはPC風に使うためには必須といえるデバイスだが、安定感が高まり、文字が打ちやすくなったことに加え、背面までしっかり保護できるような形状になり、ケースとしての価値も高まった。本体だけでなく、純正の周辺機器に至るまでフルモデルチェンジを果たしたというわけだ。
スペシャルイベントで発表されたのは、iPad Proだけではない。詳細は別の記事に譲るが、イベントの冒頭では、ティム・クック氏が約8年ぶりとなる「MacBook Air」を発表し、会場から歓声が上がった。畳みかけるように、約4年ぶりの「Mac mini」も発表。“収穫祭”が起源のハロウィーンでにぎわう米ニューヨークだが、イベント会場だけは、まるで“復活祭”のような空気に包まれていたのが印象的だった。
(取材協力:アップルジャパン)
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