5GとIoTに潜むセキュリティリスク 全てが“つながる”ことの危険:特集・ビジネスを変える5G(3/3 ページ)
かつては愉快犯や腕試しといった要素が強かったインターネットを通じたハッキングだが、今ではすっかり金銭目的にシフトした。そして、IoTの普及とともに到来する5Gの時代では、新たなセキュリティリスクと対策が求められることになる。
5Gの時代に直面する新たなセキュリティリスク
5Gの時代に注目されている分野に自動運転がある。現在、自動運転の開発競争が過熱しているが、自動車向けのサイバーセキュリティソリューションを提供するイスラエルのKaramba Securityの予測で、「自動運転車は月間当たり30万件のハッキングに直面している」とAP通信が報じた。
自動運転車のハッキングが成功すれば、方向転換から速度調整まで自在に制御が可能になるという。ハッキングが金銭的な被害はもちろん、搭乗者の生命に危険を及ぼすことも考えられる。実際、実験レベルでは何度かハッキング事例が報告されており、2020年以降の5G時代における新たな脅威になるだろう。
自動運転車と同様に、各種制御器、建物のインフラや交通管制システムなど、ネットワーク接続されることでリモート制御可能になるインフラは5G時代に飛躍的に増え、IoT化であらゆるものが“つながる”世界では、現在より被害が深刻化する可能性がある。
2018年秋に米カリフォルニア州で世界初となるIoTセキュリティ法案が成立して話題となったが、これらサイバー犯罪で発生した被害の責任の所在がどこにあるのか、メーカーか、あるいはそれを利用してサービスを提供する事業者や団体なのか、明確化する仕組みが求められる。この辺り、「AI」などの機械制御の仕組みは責任の所在がどこにあるのかも含め、新しい時代にステップアップするための通過点となりそうだ。
従来と比べて5G時代には適用分野が一気に広がることもあり、関連企業がアピールする内容は、技術的に可能になることや、自動運転において実際にシステムに組み込んだ際の利便性、安全性など明るい未来で、ハッキングのリスクに触れられる機会はどちらかといえば少ない。
しかし、IoTと5Gがインフラへ浸透するほどセキュリティリスクは顕在化するわけで、便利になる反面、危険性をそれだけ内包していることも意識しておく必要がある。
組み込み機器における開発は、どちらかといえばローレベルでのプログラミング作業が求められ、ともすれば職人芸的な要素も含んでいた世界ではあったが、これがネットワーク接続前提となると求められる要件も変わってくる。
定期的なメンテナンスと稼働状況の分析、そしてOTAによるアップデートと、ソフトウェア開発のライフサイクルもIoTでは異なる運用が求められ、5G時代の到来とそれに伴うセキュリティ対策の重要性は、開発スタイルや意識変革のきっかけにもなるだろう。
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