“arrowsの富士通コネクテッドテクノロジーズ”がローカル5G戦略に注力する理由:5Gビジネスの神髄に迫る(1/2 ページ)
富士通コネクテッドテクノロジーズ(FCNT)は、ここ最近スマートフォン型のローカル5G対応スマートデバイスを発表するなど、ローカル5Gへの取り組みを積極化している。同社がこれまで培ってきた5Gなどの無線技術を活用しながらも、ビジネス領域を広げる上で注目したのが産業領域での5G活用だった。まずは得意とするデバイスでローカル5Gへの対応を進めることにより、市場を開拓するに至った。
「arrows」シリーズのスマートフォンを提供する強い富士通コネクテッドテクノロジーズ(FCNT)は、ここ最近スマートフォン型のローカル5G対応スマートデバイスを発表するなど、ローカル5Gへの取り組みを積極化している。得意とする通信デバイスを軸としながら、ネットワーク構築やソリューションの提供などへと事業領域を広げようとしているFCNTのローカル5G戦略を、同社の事業本部テクノロジーソリューション事業部ビジネス推進部長である山田竜太郎氏に聞いた。
端末技術を生かして早期にローカル5G端末を提供
FCNTといえば、NTTドコモ向けを中心として「arrows」シリーズのスマートフォンや、「らくらくスマートフォン」などコンシューマー向けを主体とした端末を提供していることで知られるメーカーだ。だがそのFCNTが、ここ最近ローカル5G事業への進出を本格化しようとしている。
実際、同社は2020年10月16日に、ローカル5Gの周波数帯に対応したスマートフォン型の端末「ローカル5G対応スマートデバイス」の提供を発表。さらにそれらデバイスを起点として、ローカル5Gのネットワーク構築支援やソリューションなどをワンストップで提供するビジネスを目指すことも打ち出しているのだ。
なぜコンシューマー向け端末を長年手掛けてきた同社が、ローカル5Gの市場に力を入れようとしているのか。山田氏は「コンシューマー市場一辺倒ではビジネスの幅を広げるのが難しい」と話し、同社がこれまで培ってきた5Gなどの無線技術を活用しながらも、ビジネス領域を広げる上で注目したのが産業領域での5G活用だったという。産業向けの5G活用は国内外で今後大きな伸びが見込めることから、産業用途での活用が見込まれているローカル5Gに着目したそうだ。
しかもローカル5Gはまだ立ち上がりの段階であるため、多くの課題を抱えている。その1つがローカル5Gの周波数帯に対応したエッジデバイスが海外製のものしかなく、数も非常に少ないこと。そこにチャンスを見いだし、まずは得意とするデバイスでローカル5Gへの対応を進めることにより、市場を開拓するに至った。
FCNTが2020年10月16日に発表した「ローカル5G対応スマートデバイス」。「arrows 5G」と同じ、Qualcommとの協業による5Gスマートフォンのレファレンスデザインを採用することで、スピーディーな端末提供を実現したという
その際、FCNTが重視したのが「スピード感」だと山田氏は話す。実際ローカル5G対応スマートデバイスを見ると、外観や中身ともに同社の「arrows 5G」、ひいてはQualcommとの協業で開発した5Gスマートフォンのレファレンスデザインとほぼ同じ。中身もローカル5Gで必要とされる周波数帯を追加し、チューニングをしたという以外に大きな違いはないそうで、変更を最小限に抑えていち早く提供することを重視した様子がうかがえる。
しかもスマートフォン型のローカル5Gデバイスは「調べている範囲ではあまり聞いたことがない」(山田氏)というくらい珍しいもの。産業用の通信デバイスといえば一般的にはWi-Fiルーターのような形状のものや、組み込んで利用するモジュール型のものが多いだけに、スマートフォン型のデバイスはオーバースペックであるようにも思えるのだが、逆にそれがメリットに働いている部分もあるようだ。
というのもFCNTでは、ローカル5G対応スマートデバイス向けに「ネットワーク状態可視化ツール」を提供、端末上でローカル5Gの接続状況を確認できる環境も用意している。ローカル5Gはまだラボによる実証実験段階という企業も多く、そうした場面ではデバイス側からローカル5Gのネットワーク状態を可視化できることが大きなメリットとなっているようだ。
実証実験フェーズの後を見越したデバイス開発も
一方、FCNTではスマートフォン型以外のローカル5Gデバイスのラインアップも用意、または検討しているという。ローカル5G対応スマートデバイスはローカル5Gの立ち上げ期の検証用途には有効だが、商用利用が始まった段階では、より用途に特化したデバイスが求められるというのがその理由だ。
実際、モジュールやCPE型などさまざまなデバイスの投入を検討しているという。中でも同社はカメラの映像をAI技術で解析する、無線AIカメラを活用したソリューションをローカル5Gのビジネス開拓領域の1つと位置付けている。実際、「スマートAIカメラ(仮称)」や「エッジAIキット(仮称)」など、カメラとエッジでのAI解析に特化したデバイスのラインアップが厚いようだ。
ただ、そうしたデバイスは必ずしも全てをFCNTが開発するとは限らず、他社のレファレンスデザインを活用したり、他社の商品をFCNTで販売したりするものも含まれるという。現在はIoT関連でバイスを多く手掛けるサンダーコムとの協業を進めているが、商用サービス本格化後のニーズやトレンドに応じて、他の企業との連携も視野に入れているとのことだ。
一方、山田氏は将来的にローカル5Gの利活用が進むに従って、専用デバイスだけでなくスマートフォン型デバイスのニーズも再び高まり、コンシューマー向けのデバイスにもローカル5Gへの対応が進められる可能性もあると話す。市場トレンドに合わせて幅広いデバイスを提供したいというのが同社の考えのようだ。
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