名言で振り返る、2020年のモバイル業界 楽天モバイルから5G、料金値下げまで(2/4 ページ)
2020年のモバイル業界は「激動」と呼ぶにふさわしい1年でした。5Gの商用サービスや楽天モバイルの本格サービスが始まり、NTTによるドコモの完全子会社化や政府の強い要請による携帯料金値下げもありました。2020年を振り返る特別企画として、主要なトピックでキーパーソンが発した言葉を振り返っていきます。
5G関連:新型コロナで出ばなをくじかれるも、端末とエリアが着々と拡大
「少々焦りを感じている」(KDDI 高橋誠社長)
3キャリアとも3月に5Gの商用サービスを開始しましたが、その直後に新型コロナウイルス感染症が拡大し、5G契約や端末販売にブレーキがかかることに。高橋社長からも珍しくネガティブな発言が飛び出しましたが、コロナ禍はそれだけ想定外の事態だったことが分かります。
「晩秋から来年(2021年) にかけて5G祭りが始まる」(ソフトバンク 宮内謙社長)
日本の5Gは開始当初から出ばなをくじかれる形になりましたが、ソフトバンクの宮内謙社長は決して悲観視しておらず、iPhone 12シリーズやミッドレンジの5Gスマホで5Gの普及を加速させ、エリアについてもKDDIとインフラを共用したり、4G周波数を5Gに転用したりすることで拡大させます。このスタンスはKDDIも同様で、今はまさに5G祭りが始まりつつあるといえそうです。
「これからのスマートフォンは全て5G対応にする」
「みんなの5G」(KDDI 高橋誠社長)
9月25日の発表会で、これからauで取り扱うスマートフォンは全ての5G対応にすると高橋氏が明言しました。「Mi 10 Lite 5G」や「AQUOS sense5G」など、安価な5Gスマートフォンも登場したことから、5Gスマホだけでも幅広いユーザーをカバーできるようになりました。この時点でiPhone 12シリーズは未発表でしたが、これでiPhone 12シリーズも5G対応であることが確定的となりました。4GスマホについてはUQ mobileで取り扱うため、複数ブランドの強みを生かした格好です。
高橋氏は同日の発表会で「みんなの5G」というテーマを掲げ、5Gの恩恵は特定のユーザーだけではなく、誰でも得られるものという考えを示しました。auでは5G時代を見据えたサービスやバンドルプランを拡充させ、「コンテンツがネットワークを選ぶ時代になる」と同氏。データ使い放題のプランやネットワーク品質に自信を見せました。
「5Gで速度が変わらないのは優良誤認の恐れがある」(NTTドコモ ネットワーク部 技術企画担当部長 中南直樹氏)
KDDIとソフトバンクは4Gの周波数を5Gに転用することで、5Gエリアを拡大していく考え。ドコモも2021年度後半に4G周波数の転用を始める予定ですが、あくまで5Gの新周波数をメインに展開する考えを示しています。5Gで通信しているとはいえ、実際の速度が4Gと大差なければ優良誤認の恐れがあるためです。
この考えは至極まっとうだと思いますが、新周波数にこだわると、アンテナピクトに5Gが表示される頻度や、5Gの人口カバー率では不利になってしまいます。実際、KDDIとソフトバンクは2022年3月までに5Gの人口カバー率90%達成見込みとしていますが、ドコモの5G人口カバー率は同時期で55%です。ドコモのカバー率は新周波数のみなのでここまでの差が出ていますが、4G周波数をどこまで使うのか、ユーザーにどう訴求するのかが重要といえます。
「なんちゃって5G」と「瞬速5G」
4G周波数の5G転用は、実際の速度は4Gと大差ないことから「なんちゃって5G」とやゆされることがあります。そんな状況を逆手に取ってか、新周波数メインで5Gサービスを展開するドコモは「瞬速5G」というコンセプトを打ち出しています。5Gで通信をすることで4Gの転用でも遅延の短縮は見込めますが、体感でどれほどの差があるのかは気になるところ。KDDIは12月17日に東名阪エリアの主要都市で3.5GHz帯の5G通信サービスを開始しましたが、果たして。
「5Gのノーマル化」(シャープ パーソナル通信事業部 事業部長 小林繁氏)
これはKDDIが掲げる「みんなの5G」に通じる部分があります。5Gスマートフォンは、サービス開始当初はハイエンドモデルが中心でしたが、Snapdragon 765GやSnapdragon 690など、ミッドレンジの5G対応プロセッサが搭載されたことで、ミッドレンジの5Gスマートフォンも徐々に増えてきました。シャープも2020年後半に「AQUOS zero5G basic」と「AQUOS sense5G」を発表。端末値引きが制限された市場環境にもマッチし、5G普及の足掛かりになりそうです。
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