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povoは「非常に紛らわしい」 武田総務大臣が発言

1月15日に行われた閣議後の記者会見において、武田良太総務大臣がauの新プランが「非常に紛らわしい」と発言した。その詳細を紹介しつつ、発言に至った背景を解説する。

 武田良太総務大臣は1月15日、閣議終了後の記者会見で行われた質疑において、au(KDDIと沖縄セルラー電話)の新料金ブランド「povo(ポヴォ)」について言及。月額料金の設定について「紛らわしい」という趣旨の意見を述べた。


武田良太総務大臣
2021年1月15日の総務大臣会見

記者と武田総務大臣とのやりとり

―― 携帯電話料金について伺います。先日、KDDIが20GBで2480円の料金プランを発表しました。KDDIは「最安値」をうたっていますが、通話料金を含めると実質、NTTドコモ(ahamo)やソフトバンク(SoftBank on LINE)と横並びです。この「最安値」という表示方法に対する大臣のお考え(意見)と、携帯電話料金が横並びになっていることに対する受け止めをお聞かせください。

武田大臣 非常に紛らわしい発表だと私は思っております。

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 先般、消費者庁を交えて(消費者庁を所管する井上信治内閣府担当大臣と)2大臣間会合をした中で、利用者が分かりやすい、選択しやすいやり方を(携帯電話事業者に)求めてきました。「最安値」と言いながら結局同じ値段であるということについて、(KDDIには)もっと分かりやすいやり方を考えていただきたいというのが、私の気持ちであります。

 「通話料が含まれていないことによって2480円」なのか「単に(他社と)同じ条件で2480円」なのか、そこをハッキリとしないままに、あたかも、国民に対して「他社よりも一番安い、500円安い2480円だ」というような、全て同じ条件だと思わせてしまうやり方は、私は非常に残念だと思っております

 今まで申し上げてきたように、今後も選択しやすく分かりやすい説明の仕方をしっかりやっていただきたいです。利用者の方々が「契約していざ使ってみたら(契約時に示された)条件と違うじゃないか」ということが起こらないように、あらかじめ、しっかりとした丁寧で分かりやす説明をしていただいて、無用なトラブルが起こらない状況にすることを期待しています

―― 武田大臣が今まで要請してきた(大手キャリアの)携帯電話料金の値下げですが、(auの発表で)一通り出そろいました。(懸案だった携帯電話事業者間の)乗り換え障壁についても、転出時の手数料の無料化が打ち出されています。

 大臣から見て、喫緊の課題として残されていると感じることはあるでしょうか。先ほどの回答のように、広告表示であったり、分かりやすい案内であったりでしょうか。他にもあれば教えてください。

武田大臣 一番大事なのは、ユーザーの皆さんが自身の求める形で(携帯電話サービスを)利用できているのか、求めているプランなのかということを自己検証していただくことだと思います。

 その上で今、新しい低廉なプランが出てきて競争が健全化してきた訳ですが、先ほども回答した通り、最低料金で宣伝するのではなくて、その価格の内訳も利用者がしっかりと理解、納得できる、つまびらかな条件を示していただきたいです。そうしたことが重要になると考えています。

 事業者にとって良いことばかりを示すのではなく、その(料金の)内訳を示すことが重要になってくるのではないでしょうか。

解説

 povoの料金について、武田総務大臣はKDDIの料金の示し方が「紛らわしい」としている。しかし、ニュースリリースでは「月額500円で5分間までの国内通話が無料でご利用いただける『5分以内通話かけ放題』などを提供します」と明記するなど、月額料金に通話料金は含まれないことは読み取れるようになっている。プレゼンテーション資料でも、月額料金の案内に通話料金を併記しており、誤解をする人はごく一部であると考えられる。


povoの発表会で示されたプレゼンテーションシートには通話料金が別に書かれており、月額料金に通話料金が含まれないことを察することができる

 発表会の本編でも、KDDIの高橋誠社長は「最安値」であることは一切アピールしなかった。povoがメインターゲットに据える若年層ユーザーの「6割以上の(月間)通話時間が10分未満」(高橋社長)であることを踏まえて、他社の競合プランでは標準装備されている5分以内の国内通話定額も省く(オプション化)することでシンプルかつ手頃な料金であると説明している。


povoの発表会における高橋社長プレゼンテーションの模様。povoが他キャリアの競合サービスよりも低廉な価格である旨の説明は一切していない

 ただ、一般向けには配信されなかった報道関係者との質疑応答では、以下のようなやりとりがあった。

―― 本日(1月14日)の発表で、全ての容量帯、ブランドで新プランが発表されたことになります。その狙いを改めて聞かせてください。

高橋社長 (前略)他社さんでもWeb専用のメニューをそろえられましたが、実は(2020年)10月の段階から(KDDIでも)用意を始めていたものがありました。それを「povo」と名付けて今回発表させていただいた次第です。

 (他社が先行して発表いることもあり)工夫をしなければいけないと思ったので、今回はベースの料金を2480円として、3キャリアの中で最安値を打ち出しました。加えて、(必要に応じて)付けたり外したりできる「トッピング」という特色も用意しました。

 音声通話を使われるお客さまですが、先ほどのプレゼンテーションでも話した通り、20代とそれ以下のユーザーの6割以上が10分未満です。(この年代のユーザーは)音声通話は興味がない(必要ない)と判断し、(5分以内の通話定額を省くことで)2480円とお安く使える、コンセプチュアル(概念的)なプランとなっています。(後略)

 ここで高橋社長が発言した「3キャリアの中で最安値」という言葉が報道時に取り上げられ、それに触れたことにより武田総務大臣が「非常に紛らわしい」という感想を持ったものと思われる。

 武田総務大臣がpovoの発表会の本編を視聴していたかどうかは不明だが、少なくとも視聴していれば「別の感想」が出てきたのではないだろうか。


質疑応答の模様

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