3GBプランで攻勢をかけるLINEMO MVNOからのユーザー流入が進む可能性も:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
ソフトバンクがLINEMO向けに、月額990円で3GBの「ミニプラン」を提供開始した。ミニプランを導入することで、競合のMNOに加え、MVNOユーザーの流入も見込める可能性が高い。前身のLINEモバイルと比べ、ユーザー数の伸びが大きく拡大しているLINEMOだが、週単位で細かな改善を繰り返す開発体制がそれを支えているという。
LINEモバイルからの巻き取りも狙い、課題もあるがインパクトは大きい
ミニプランを導入したもう1つの狙いが、LINEモバイルからのマイグレーション(巻き取り)だ。LINEモバイルはもともと、LINEの運営するMVNOとして発足したが、その後ソフトバンクが過半数の株式を取得。LINEMOの導入にあたり、ソフトバンクの完全子会社化になった。回線はドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社から借りているが、LINEMOのサービス開始に伴い、LINEモバイルは新規契約者の受付を終了した。サービス自体は継続しているものの、ドコモやKDDIの回線を借りていることもあり、徐々に契約者を移行させていく必要がある。
一方で、スマホプランしかなったころのLINEMOは、LINEモバイルの受け皿にはなっていなかった。先に挙げた通り、LINEモバイルのユーザーの8割超が3GB以下の料金プランを選択していたからだ。寺尾氏によると、「かなりの数が動いているが、もともと900円や1000円といった料金で契約している方も多く、そこがまだ動いていないのは事実」だという。LINEMOは、ゼロレーティングのサービスがLINEのみで、他社のサービスまで含めていたLINEモバイルとは差分はあるが、通信品質の高さはMNOであるLINEMOに軍配が上がる。料金水準が近づいたことで、移行が進んでいきそうだ。
ただし、LINEMOにはLINEモバイルにあった「SNSデータフリー」や「SNS音楽データフリー」といったゼロレーティングのオプションがない。こうしたオプションを駆使して、データ容量を節約していたユーザーの受け皿にはなれていないというわけだ。そのため、データ容量が近いからといって、LINEモバイルからLINEMOに移行すると、月の途中で通信速度に制限がかかってしまう恐れもある。「SNSデータフリーを選択されている方はそれほど多くない」(同)というものの、LINEモバイルからLINEMOへの移行のハードルになる可能性はある。
LINEとの相乗効果が薄いのも、マルチブランドを推進していくうえでの課題といえる。ソフトバンクやY!mobileは、決済サービスのPayPayと連携しているが、LINEMOにはそういった特典がない。QRコード決済の分野ではPayPayとLINE Payが2022年4月にサービスの統合を予定しているため、そこに向けてLINEMOを連携させる必要が出てくるだろう。「ようやく通信部分の土台ができ、直し(修正)が終わった。次のフェーズとして、LINEとのシナジーをどうするかを考えていく」(同)方針だ。
こうした課題はありつつも、自社で設備を持つMNOが、オンライン限定ながら3GB、990円という料金を打ち出してきたインパクトは大きい。2年契約などの長期契約や途中解約の違約金がなくなりつつあるなか、価格に敏感なユーザーが動く可能性は高いといえる。オンライン専用プランを導入しているドコモやKDDIはもちろん、楽天モバイルやMVNO各社も、何らかの対抗策を打ち出す必要がありそうだ。
関連記事
ソフトバンク、LINEMOに月額990円の3GBプランを追加 低容量のニーズもカバー
ソフトバンクがLINEMOのプランを改定し、月額990円(税込み)の3GBプランを追加する。LINEモバイルでは約8割のユーザーが3GB以下の通信にとどまっていることから、低容量のプランを新設した。月間の通信容量が3GBを超えた場合、通信速度は300kbpsに制限される。LINEMOの月額990円/3GBプランはどれだけ安い? サブブランドやMVNOと比較してみた
ソフトバンクの「LINEMO」に月額990円で利用できる3GBプランが登場。月額990円という料金は、Y!mobileやUQ mobileを意識したことがうかがえる。MVNOと比べても遜色のない安さだ。「LINEMO」の戦略を読み解く ヤフーとLINEの経営統合がサービス強化のカギに
ソフトバンクオンライン専用ブランドが「LINEMO」に決定した。料金も改定し、5分間の音声通話定額をオプションにすることで、最低料金を月額2480円に下げた。MVNOとして展開しているLINEモバイルを発展的に継承する形で、LINEとのサービス連携が最大の特徴になる。「LINEMO」の注意点は? ソフトバンク「メリハリ無制限」、Y!mobile「シンプルプラン」と比較
キャリアが提供するオンライン専用ブランドは、店頭でのサポートが受けられない、キャリアメールが利用できないなどの差異がある。今回はソフトバンクのLINEMOを取り上げ、ソフトバンクの「メリハリ無制限」、Y!mobileの「シンプルS/M/L」と比較。LINEMOの場合、「Yahoo! プレミアム/Yahoo!プレミアム for Y!mobile」が自動解約されることも注意したい。LINEMOとY!mobileはどちらがお得? 「1人」と「家族」のケースで比較した
「LINEMO」「Y!mobile」の2ブランドで、月額2000円台かつ通信量20GB前後のサービスを提供するソフトバンク。乗り換えて価格を安く抑えたい場合はどちらを選ぶべきなのか検証してみた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.