「P50 Pro」をようやく発売したHuawei “5Gなし”で今後のビジネスはどうなる?:山根康宏の中国携帯最新事情(3/3 ページ)
Huaweiの2021年フラグシップスマートフォン「P50」シリーズがようやく発売された。米国政府の制裁を受けて発売時期が遅れただけではなく、5Gへの非対応、複数プロセッサの採用、そしてバリエーションは2モデルにとどまるなど、不利な面が多い。中国国内で5Gの普及が進めば進むほど、5G非対応モデルしか投入できないHuaweiのスマートフォンは魅力が薄まってしまう。
最高峰のスマートフォンであるP50 Pro だが今後の見通しは厳しい
ではP50シリーズ以降、Huaweiのスマートフォンはどのように展開していくのだろうか。P50 Proのカメラ性能はスマートフォンカメラのベンチマーク指標の1つであるDXOmarkで最高点を記録しており、今でもゆるぎない性能を有している。今後のモデルがたとえライカとの協業がなくなったとしても、高性能なカメラセンサーとプロセッサのAI制御によるHuaweiのコンピュテーショナルフォトグラフィー技術は、常に業界上位の地位を維持していくだろう。
また、HarmonyOS 2もスマートフォンだけではなくスマートウォッチやタブレット、さらにスマートTVや家電といったエコシステムを拡大していけばAndroid OS、iOSに次ぐ第三の勢力として存在感を高めていくこともできるだろう。ただしそれが通用するのは現時点では中国国内のみであり、先進国では主要アプリケーションが対応しないことには普及は難しい。スマートフォンも展開もこの先数年は、中国国内に注力せざるを得ないだろうから、HarmonyOS 2のエコシステムも今後は中国で独自に拡大していくと考えられる。
一方、米国政府の制裁が解けないままでは、スマートフォン出荷台数を今より伸ばす、あるいは現状を維持することも難しい。子会社ハイシリコンのKirinプロセッサの製造受託先がなくなりク、QualcommからSnapdragonの供給を受けられるようになったものの、世界的な半導体不足の影響をもろに受けてしまう。これまでQualcommと取引を抑えていたHuaweiへ供給できるプロセッサの量は多くないだろう。
さらに、5G関連技術のHuaweiへの提供禁止により、今後出てくるスマートフォンは引き続き4Gのみの対応となる。Xiaomiなど中国ライバル各社は既にエントリーモデルも5Gへの切り替えを完了しており、NSA方式だけではなく完全単独5GネットワークであるSA方式へも対応している。通信事業者側もChina Mobile(中国移動)は既に全国にSAネットワークを敷設済みだ。SAにより高速・低遅延・同時多接続という5Gのメリットが生かされるが、4Gデバイスではそれを享受できない。
2022年2月には北京で冬季オリンピックが開催される。通信企業スポンサーであるChina Unicom(チャイナユニコム)はこのオリンピックで5Gを使ったさまざまなスマートフォン向けサービスを提供予定だ。中国の消費者は2万円台で買ったエントリースマートフォンでも、5G SA方式によるインタラクティブなサービスを利用できるのだ。一方Huaweiのスマートフォンは、ハイエンドモデルでも5Gの新しいサービスを利用することができない。国内全土で5Gが利用できる中国で5Gに特化したサービスが増えていけば、Huawei製スマートフォンから他社に乗り換えるユーザーも増えてしまうだろう。
カメラやOSは自社による開発が可能だが、プロセッサ不足は他のメーカーとの争奪競争もあり「後発組」となるHuaweiは不利な位置になる。中国国内で5Gの普及が進めば進むほど、5G非対応モデルしか投入できないHuaweiのスマートフォンは魅力が低減してしまう。Huaweiのスマートフォン事業が以前のような輝きを取り戻すためには、中国と米国の関係好転が必要なのだ。
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