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4キャリアの決算が出そろう 大赤字の楽天モバイルは“包囲網”をくぐり抜けて黒字化なるか石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

ドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3キャリアと、モバイル事業に新規参入して1年半が経過した楽天の決算が出そろった。政府主導で行われた料金値下げの影響を受ける形で、大手3社の通信事業は減益に見舞われている。対する楽天は、楽天モバイルのエリア拡大が途上ということもあり、1000億円を超える大幅な赤字を計上した。

ローミング費用がかさみ、大幅赤字を記録した楽天モバイル

 これに対し、楽天モバイルは新規参入直後ということもあり、大手3社とは状況が大きく異なる。大手3社は3社とも減収はしたものの、営業収益自体は1000億円単位の黒字だ。一方で、楽天モバイルはまだ料金を支払っているユーザー自体が少なく、売り上げを立てづらい上に、ネットワーク敷設やauローミングのコストがかさみ、過去最高の赤字を計上した。楽天モバイルを含むモバイルセグメントは、売上高が549億円なのに対し、営業収益はマイナス1052億円まで拡大した。


楽天グループのモバイルセグメントは、四半期ごとに赤字幅が拡大。7月から9月の第3四半期には、ついに営業損失が1000億円を突破した

 売上高が増加したのは、0円スタートの「Rakuten UN-LIMIT VI」が当たり、ユーザー数が順調に伸びていることに加え、既に獲得していたユーザーの課金が始まったためだ。楽天モバイルの代表取締役社長、山田善久氏は「MVNOから移行したプランが当初3カ月無料になる減収要因はあったが、1年無料が終了したMNOユーザーの増収要因が上回った」と語る。MNOとしての楽天モバイルは、9月に契約者数が411万に達し、無料期間を終えたユーザーも徐々に増えている。少なくとも、キャンペーンで売り上げが全く立たない状況は終わりを迎えつつあるといえそうだ。


安価で分かりやすい料金プランが評価され、契約者は順調に伸びている

 一方で、先に挙げた通り、ネットワーク関連コストやKDDIに支払うローミング費用が重石になり、赤字幅は四半期ごとに拡大している。中でも影響が大きいのは、後者のローミング費用だ。KDDIに支払うローミング費は、約款の情報をもとにすると約500円。ローミング時の高速通信は5GBまでに制限されているが、上限まで使い切ると1ユーザーあたり2500円のコストが発生する。

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 これに対し、楽天モバイル側がユーザーから受け取れるのは、5GBだと2178円。3GBに抑えた場合でも、1078円の料金に対し、ローミング費用は1500円ほどかかる。ローミングエリアのユーザーが増えれば増えるほど、楽天モバイルの赤字は拡大する構造になっているというわけだ。実際、KDDIは自社サービスで稼いだ「マルチブランド通信ARPU収入」は前値同期比でわずかに減収になっているが、ローミング費用などを加えたモバイル通信料収入全体は、4316億円から4329億円に拡大している。

 そのため、楽天モバイルは自社回線のエリア拡大を加速させており、ローミングからの自社回線への切り替えを一気に進めている。以前の連載でも取り上げた通り、10月1日には切り替え対象の地域を全39都道府県まで増やした。残るのは、岩手県、山形県、山梨県、和歌山県、島根県、高知県、長崎県、鹿児島県の8県だ。東京メトロの構内など、地下街のエリア化もペースを上げている。


自社エリアの拡大に合わせ、ローミングからの切り替えを進めている。10月以降、そのペースを加速させている

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