楽天モバイルの人口カバー率が96%に 「KDDIローミング終了」後の戦略は?:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
楽天モバイルの人口カバー率が96%に到達したことで、KDDIローミングの停止にも弾みがつきそうだ。エリアの拡大とそれに伴うローミングの縮小で、楽天モバイルはコストを大幅に圧縮することができる。カバー率96%達成を機に、これまで以上に積極的な攻勢に打って出ることが可能になった。
楽天モバイルの人口カバー率が2月4日、96%に到達した。もともと96%達成は2021年夏の予定だったが、世界的な半導体不足のあおりを受け、基地局に取りつけるための部品が不足。度重なる延期の末、96%達成時期は2022年3月末までとされていた。延期後の新たな予定よりは、約2カ月巻き上げられた格好だ。新規参入時に総務省に提出した開設計画からは、約4年の前倒しになる。
人口カバー率が96%に広がったことで、KDDIローミングの停止にも弾みがつきそうだ。楽天モバイルとKDDIは、ローミングエリアの見直しを半年に1回行っており、2021年10月には大幅にこれを縮小。自社エリアでサービスを提供していないのは残すところ8県になったが、人口カバー率が広がったことで、終了に向けたカウントダウンが始まったとみていいだろう。
開設計画での“公約”を達成した楽天モバイルだが、今後のエリアはどう展開していくのか。同社で代表取締役副社長を務める、矢澤俊介氏に話を伺った話をもとに、楽天モバイルの今後の戦略を解説していきたい。
半導体不足で遅れていた“前倒し”がついに実現、人口カバー率は96%に
新規参入時の免許取得に際し、楽天モバイルは2026年3月までに、人口カバー率96%を達成する計画を打ち出していた。これに基づき、総務省は楽天モバイルに4Gの1.7GHz帯を割り当てている。一方で、人口カバー率96%達成までは、エリアにどうしても穴ができる。これを補うため、楽天モバイルはKDDIとローミング契約を締結。2026年3月末までローミングが可能になり、現時点でも一部のエリアではKDDIのネットワークにつながる。当初は2026年3月まで、KDDIのローミングに頼りつつ、徐々に人口カバー率を96%に近づけていく計画だったといえる。
この計画を大幅に見直すことを発表したのが、本格参入してから間もない2020年8月の決算会見。楽天グループ(現・楽天)の代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏が、2021年夏までに人口カバー率96%を達成する目標を明かした。エリア化が難しいといわれている都市部を乗り切り、拡大のペースが上がってきたことや、KDDIのローミング費用が業績に重くのしかかっていることなどが前倒しの理由に挙げられていた。自社回線のエリアが広がれば、データ通信が無制限になるユーザーも増えるため、楽天モバイル自体の魅力も向上する。
一方で、約1年後の2021年7月にはサイト上での記載が2021年夏から「2021年内」に変わり、8月の決算会見でも三木谷氏が事実上の延期を認めた。ただ、世界的な半導体不足が打撃となり、基地局の開設はさらに遅れてしまった。用地の確保や基地局の設置はできていたものの、部品が不足し、稼働しないという事態が相次いだ。2021年10月に開催されたエリア展開に関する発表会では、再度の延期が明らかされている。この時点で、楽天モバイルは人口カバー率96%の達成が2022年3月になるとしていた。
大幅な前倒しの発表から一転して、2度の延期が重なってしまった人口カバー率96%の達成予定だが、その間も徐々に基地局の開設は続いていた。最終的には、3月を待たずに人口カバー率は96%に届き、2月4日に公約を果たした格好だ。当初発表されていた2021年夏よりは半年ほど遅れてはしまったが、総務省に提出した開設計画より大幅に早くなっていることに変わりはない。約4年もの前倒しは、異例のスピードと評価できそうだ。
延期後の期日に定めていた3月より1カ月ほど早いが、矢澤氏によると、「部材調達後はかなり巻いたが、(スケジュールに)特別な変化があったわけではない」という。「もともと半導体の到着がどのぐらいになるかという情報は来ていたが、実際に始めてみないとスピードが分からなかった。早ければこれぐらい(2月上旬)という感触はあったが、バッファーを取って3月と発表していた」。
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