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第2世代よりも“売れる条件”が整った「iPhone SE(第3世代)」 市場への影響は?石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

約2年ぶりとなるiPhone SEの新モデルが3月18日に発売される。もともと同モデルは、過去に人気の高かったiPhoneの本体デザインをそのまま利用しつつ、中身、特にプロセッサを最新のiPhoneにそろえているのが特徴だった。約2年間売れ続けたロングセラーモデルだっただけに、第3世代にも期待が集まる。

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販路拡大でヒットの予感、5Gユーザーの拡大をけん引する1台になるか

 ロングセラーモデルになっていた第2世代iPhone SEだが、登場したのは大手3キャリアが5Gを導入した直後のこと。売れれば売れるほど、潜在的な5Gの利用者が4Gにとどまり、移行の妨げになってしまうのが同モデルの課題だった。昨秋以降、大幅な値引きをすることで販売を拡大していた一方で、5Gの契約者を増やしてARPUを上げていきたいキャリアにとってもろ手を挙げて“推しづらい”端末だったのも事実だ。


写真だと壁紙ぐらいしか違いが分からないが、第2世代のiPhone SEは4Gモデル。5Gのユーザーを増やしたいキャリアの戦略とは、必ずしも合致した端末ではなかった

 実際、5Gのユーザーは4Gのときよりトラフィックが大幅に増え、そのぶん上位の料金プランを契約する比率が高くなるという。KDDIの代表取締役社長、高橋誠氏は1月に開催された決算説明会で、「5Gユーザーのトラフィックは4Gの2.5倍超で、データ需要が拡大している」と語る。ARPU(1ユーザーからの平均収入)向上のカギは、5Gにあるというわけだ。


KDDIによると、5G契約者のデータトラフィックは4G契約者の2.5倍にも拡大するという

 ソフトバンクも、2021年11月の決算会見では代表取締役社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏が「5Gが普及し、それを活用したリッチなコンテンツが増えてくれば、Y!mobileのユーザーがソフトバンクに移行し、より高い料金プランへのシフトが起こってくると思う」(同)との見通しを示している。5Gとリッチなコンテンツの橋渡しをするのがスマートフォンだ。

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 その意味で、第3世代のiPhone SEはキャリアにとっても売りやすい端末といえる。KDDIやソフトバンクは人口カバー率も90%に近づき、5Gの裾野は広がっている。コストパフォーマンスやバランスのよさへの評価が確立しており、2年間を通して売れ続けていた第2世代iPhone SEの後継機なだけに、5Gのユーザー数拡大のけん引役になれる可能性は高い。

 第2世代iPhone SEは、コロナ禍が直撃したこともあり、3キャリアはAppleより2週間強遅れて販売を開始。UQ mobileやY!mobileといったサブブランドでの展開は、そこから3カ月以上の時間を要した。また、当時は楽天モバイルもiPhoneを取り扱っていなかった。これに対し、第3世代のiPhone SEは4キャリアが一斉に発売する。UQ mobileやY!mobileがメインブランドと同時に取り扱いを開始し、256GB版がラインアップに加わっているのも大きな違いだ。5G対応と販路の広がりで、第2世代以上に「売れる条件」が整ったといえる。

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