近年、スマホカメラの画作りが「派手な雰囲気になった」理由(2/2 ページ)
最近、スマートフォンを乗り換えて写真を撮ってみると、以前よりも「派手な雰囲気になった」と感じることも多い。なぜそのような傾向になっているのか、考察してみる。
派手なだけではなく、きれいに美しく撮るための機能も増加
近年のスマートフォンでは強力なHDR処理をかけることで、より見た目に近く暗い場所でもきれいに撮影できることに主眼を置いたものが登場している。
前述の調査の中にある「スマートフォンのカメラを用いてうまく撮影できなかったシーン」については、「夜景の撮影」が41.3%、「逆光での撮影」が32.6%、「夜景バックの人物撮影」が30.6%となっている。2016年の調査となるので、夜景モードや強力なHDR補正を持つスマホがほとんど存在しない頃のものとなる。
2018年の調査では近い設問で「スマートフォンのカメラに感じる不満点」という項目において「暗がりでの画質」で34.2%、「手ブレ補正」で23.2%、ズーム後の画質で21.5%という数字が出ており、その下に逆光補正やオートフォーカス精度が続く。暗がりでの画質、手ブレ補正は密接に関わっていると考えられる。
強力なHDR処理や夜景モードはそんなユーザーの声に応える機能だ。通常のカメラプロセッサの数倍も高性能なものを利用し、露出の異なる写真を複数枚撮影して瞬時かつ高度に合成するこの機能はスマートフォンらしいものだ。特に夜景モードは手ブレしやすい場面でもかなりブレを抑えて撮影できる。
その進化系ともいえる複数のカメラを用いて、ボケ表現を可能にするもの、ズーム時の画質劣化を補完するものや、モノクロカメラなどを用いて合成処理を行う機種の存在など、従来のカメラの考え方にとらわれない独自の進化を遂げたものと評価できる。
加えて、AI補正の「味付け」が入っている。見たものを見た以上に美しく、目で見た以上の感動を記録する。モノによっては「AI塗り絵」などと表現されるものもあるが、これをワンタップで誰でもできるように進化したものが現代のスマートフォンだ。
日本で販売されている端末ではAQUOS R7やPlxel 7シリーズがこの分野でかなり頭角を表している。一方海外では「HUAWEI Mate 50」や「vivo X80 Pro」をはじめとして、強力なHDR補正、AI処理、アーティスティック表現を可能にするフィルターを備える機種も存在する。革新的なイメージングハードウェアの登場はもちろん、AI処理をはじめとした部分も大きく寄与しているのだ。
直近では派手になりすぎないナチュラルカラーといえるチューニングも現れている。背景には、編集のしやすさもあるが、スマートフォンそのものの画面性能が向上し、より正確で豊かな色表現が可能になったからという指摘もある。撮影はHuawei Mate 50にて
派手なチューニングも料理の撮影時では不自然になる描写も見られる。AI処理も万能ではないことがうかがえる。この辺りもここ数年で改善傾向が見られるようになってきている。撮影はHuawei Mate 40 Pro(画像=上)とMate 50(画像=下)を使用。Mate 50の方がより目で見た色や質感を表現できていると感じる
スマホのカメラが専用機を上回る時代が来る?
最後になるが、スマートフォンのカメラが派手なチューニングになりつつある背景には、市場の声が大きいことが実感できた。撮影した写真を共有することが多いこと、編集するニーズも少なくないこと。撮影しにくいシチュエーションでの機能改善といった声を反映した結果、今のチューニングになっている。そして、今後も進化を続ける分野であると考える。
イメージセンサーの大手であるソニーセミコンダクタソリューションズのCEOや、スマートフォン向けのチップセット大手のQualcomm幹部も「近い将来、スマートフォンのカメラが専用機のシステムを上回る可能性がある」という見解を示すなど、パーツベンダー側も希望的観測をしている。しかし専用機を上回るまでには、クリアしなければならない課題も多くある。言い換えれば、それだけまだ伸びしろのある分野でもあるのだ。
今回はチューニングの側面から考察してみたが、改めて市場の声をしっかり反映できているメーカーの機種が高い評価を受けていることが分かった。ユーザー体験に直結する部分だけに、今後も注目していきたい点だ。
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