MVNOが1円スマホ問題に言及 「単体販売や購入プログラムの値引きも2万円までにすべき」
総務省が1月30日に開催した「競争ルールの検証に関するWG(第38回)」にて、IIJとオプテージが端末値引きの規制や禁止行為規制対象についての意見を披露した。端末値引きについて、回線とセットで販売する場合ではなく、単体販売も規制対象にすべきとした。端末値引き規制を含む、禁止行為規制の対象に100万契約上のMVNOも含まれるが、この規制の見直しも訴えた。
総務省が1月30日に開催した「競争ルールの検証に関するWG(第38回)」にて、MVNO各社が、端末値引きの規制や禁止行為規制対象についての意見を披露した。
この有識者会議では、電気通信事業法で改正した「通信料金と端末代金の完全分離」や「行きすぎた囲い込みの禁止」の効果や課題を議論している。関係各社にヒアリングをしながら、2023年春~夏にかけて検討の方向性を示し、同年夏頃までに報告書を提示する。
端末単体販売や購入プログラムの値引きも2万円以内にすべき
一連の議論の争点になっているのが、端末値引きの規制を緩和するか否か。2019年10月に改正された電気通信事業法では、通信サービスとセットで販売する端末の割引は上限を「2万円(税込み2万2000円)」に制限した。ただし端末単体の割引は規制対象となっておらず、「実質1円」「一括1円」といった過度な値引きが行われている。その結果、端末購入するユーザーと購入しないユーザーの間で不公平が生じたり、安価に端末を購入してより高値で転売する「転売ヤー」問題が発生したりしている。
こうした事態をMVNOはどう見ているのか。IIJ(インターネットイニシアティブ)は、「回線契約とセットか問わず、割引などの上限額を設定する必要がある」とのスタンスを示す。具体的には、回線セットの場合と同様に2万円までの枠に含めるべきだとする。
さらに、各キャリアが提供している端末購入プログラムにも言及。購入プログラムでは、端末を2年後などの返却することで、分割支払金が免除される。返却をするので買い取り価格を差し引いた金額が値引き分となるが、中古市場で買い取り価格の低い端末の場合、2万円の値引きを超えてしまう恐れがある。一方で購入プログラムは端末単体販売も対象としているため、2万円までの値引き規制には抵触しない。
しかしIIJは「端末購入プログラムにおいて、2年後の買い取りなど予定価格を上回る割引などを行っている場合は、それも規律対象の割引の上限額に含めないと抜け道になる可能性があるのではないか」と警鐘を鳴らす。
第37回の会議では、単体販売の値引きについて、MNOが中古端末の販売価格や買い取り価格を基準に値引き額を設定すべきとの案を披露した。これについては「割引額の上限は可変なので、規律に関わる運用コストが大きくなる」「中古端末と同水準で販売できることから、中古市場への影響が懸念される」「規律を順守すること自体が困難」との問題点を指摘した。
オプテージは、端末値引き上限額の2万円について、法改正当時の「利用者1人あたりの利益見込み額」に将来的なARPU・営業利益率の低下を加味した金額であると認識した上で、ユーザー間の公平性を確保するために、2万円の規制は維持すべきとのスタンスを示す。
IIJと同様に、端末単体販売の割引も規制の対象とし、回線セットと同じく2万円までが望ましいと述べている。さらに、端末購入プログラムでの割引特典なども、2万円までの規制対象にすべきだとしている。
テレコムサービス協会 MVNO委員会は、加盟しているMVNOアンケートを実施したところ、端末値引きの規制について、回答した12社のうち、6社が「従来の規律内容を維持・継続すべき」と回答、5社が「従来の規律内容をさらに強化すべき」と回答し、「規制を緩和すべき」との回答はゼロだった。
MVNO大手も対象となる禁止行為規制の基準を見直すべき
端末値引きの規制を含む、電気通信事業法第27条の禁止行為規制は、MNOだけでなく、ユーザーがシェア0.7%の100万人を超えるMVNOも対象となっており、IIJやオプテージもそこに含まれる。つまりIIJmioやmineoで販売しているセット端末も、2万円を超える値引きができない。
IIJは「規律の順守を徹底することで競争環境の適正化に向け努力してきた」が、規律違反の多くがMNOによるものである現状を指摘。規制によって機動的なマーケティングが行えないことを訴える。規制の効果と費用のバランスを鑑み、規制対象のユーザー割合を引き上げるべきだとする。具体的には、ユーザー数のシェアを現行の0.7%から3%(500万人)とするのはどうかと提案。これはMNO4位(楽天モバイル)の契約規模を参考にしているという。
オプテージも規制対象については同様の考えを示す。特に2020年以降、MNOが低廉なオンライン専用ブランドを提供したり、サブブランドの料金を値下げしたりしたことで、MVNOのシェアは伸び悩み、減少傾向にあることから、規制対象は「必要に応じて見直しを検討していくことが適当」だとした。その一例として、「クープマンの目標値」で知られる「市場で存在が認知されるシェア6.8%」を参考に、10分の1(10%)程度を示した。
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