「docomo Open House'23」で披露された最新技術 6G時代のコミュニケーションから、触覚共有、羽根のないドローンまで(2/2 ページ)
オンラインで開催中の「docomo Open House'23」に先駆けて、報道陣に、リアル会場での展示を公開。5Gやその次の世代の通信規格「6G」に向けたネットワーク技術、昨今注目されているメタバースに関する新たな取り組みも披露。触覚を再現する人間拡張の新たな取り組みも興味深かった。
遠くに飛びにくいミリ波の課題を解決する技術
もちろん、5Gや6Gに向けたネットワークに関する技術も多数披露されている。中でも多く見られたのが、高い周波数帯の電波を屋内で利用しやすくする取り組みだ。
その1つはYKK APと実証を進めている“電波の窓”である。これは通常のガラスと比べ高周波数の電波が届きにくくなりやすい、高断熱性のガラスの通信品質を改善するもの。空気に近い誘電率で電波を通しやすい「エアロゲル」を用いた“電波の窓”を用いることで、断熱性と電波の入りやすさを両立できるようになるという。
会場では一般的な断熱ガラスに用いられている「Low-E膜」を用いたガラスと、“電波の窓”とで電波透過性の違いを披露。前者を間に挟むと電波が遮られてしまうのに対し、後者の場合は電波をしっかり通してくれる様子を確認できた。
そしてもう1つは「マルチセクタアンテナ」である。こちらは横浜国立大学、日本電業工作、富士通と共同で開発したものであり、1つのアンテナで全ての方向に電波を届けることで、ミリ波のように直進性が強く遠くに飛びにくい、高い周波数の電波を広く届ける技術となる。
マルチセクタアンテナはアンテナが12方向の放射状に配置されており、それぞれの方向に電波を射出することで全方向をカバーする仕組みだ。従来のアンテナでは全方向をカバーするのに4つ以上のアンテナが必要だったが、マルチセクタアンテナを用いれば回路の規模を10分の1に低減できるので、よりコンパクトかつ消費電力も抑えられるという。
一方で、逆に屋内から屋外へミリ波の電波を届ける技術となるのが「透過型メタサーフェス」である。これは専用のフィルムを張った窓を通して屈折させることにより、屋内の電波を建物の屋外の足元に射出してエリア化できるというものだ。
ビルなどの屋外に設置したアンテナから電波を射出すると、ミリ波は直進性が強いので建物の足元届きにくい。それを届けるにはアンテナを建物からはみ出すように設置しなければならずビルオーナーの許可を取りにくいことから、あえて屋内に基地局を設置し、窓を通じて建物の足元に届けるというのがこの技術の狙いとなるようだ。
遠隔手術や羽根のないドローンも披露
会場には他にもさまざまな展示が用意されていた。中でも目立っていたのが5Gを活用し手術ロボット「hinotori」を活用した実証実験のデモである。
これはNTTドコモと神戸大学などが共同で取り組んでいるもので、NTTドコモの商用5Gネットワークと、低遅延に貢献するMEC(Multi-access Edge Computing)基盤の「docomo MEC」を用い、東京と神戸にいる2人の医師が、ネットワークを通じて手術ロボットを活用した遠隔での手術支援をするというもの。ロボットのコックピットは操作する権限の切り替えができることから、双方で同じ映像を見ながら、神戸側にいる熟練の医師が東京側にいる若手の医師を指導したり、ロボットを遠隔操作して指導したりできるという。
もう1つ、目を引く展示となっていたのが「羽根のないプロジェクションドローン」である。これは通常のドローンとは違ってプロペラがなく、人が触れても安全な形で飛行できるドローンだ。
ドローンは風船状で、中にヘリウムガスを入れることで浮遊ができる。ただそれだけではドローンが動かないので、左右に超音波振動モジュールを装着。これを振動させて風を起こすことにより、本体を操作できるとのことだ。
今回のドローンにはプロジェクターが搭載されており、映像を再生ながら飛行できる。安全に飛行でき、映像も再生できることから、広告やイベントなどへの活用などが想定されているようだ。
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