競争と協調が進むモバイル業界 MVNOが“置き去り”にされないために必要なこと:モバイルフォーラム2023(2/2 ページ)
テレコムサービス協会MVNO委員会が3月10日、MVNOの展望を議論する「モバイルフォーラム2023」を開催した。パネルディスカッションでは「競争と協調」「日本の5G再興」「MVNO新時代」という3つのテーマを設定して話し合った。競争が求められている中でMVNOが置き去りにされているという意見も出た。
競争が求められている中でMVNOが置き去りにされている
KDDIの通信障害から目立ってきた業界の協調の動きとしては、KDDIとソフトバンクが発表しているデュアルSIMサービスがある。ちなみに、ソフトバンクの宮川社長が決算説明会の質疑応答で「ワンナンバーでやりたい」とコメントする場面もあったが、石川氏は「ワンナンバーでデュアルSIMをやるというのは宮川社長の暴走」と判断。一方、KDDIとソフトバンクが5G JAPANを設立し、地方の5G基地局を相互利用している動きもあり、インフラ面でキャリアが協調する流れは加速すると見ている。
「小野寺社長や田中社長時代のKDDIは、NTTにいかに対抗していくかという感じだったのが、高橋社長になってNTTと組んでいくことも増えた。IOWNも仲良くやっていく感じになっていて、1つの企業だけで戦えなくなっている部分での協調路線はこれからも進んでいくのかなと。回線品質ではなく、その上の経済圏での戦いにシフトしていくのだと思います」(石川氏)
石野氏は、ドコモが鉄塔をJTOWERに売却したことに衝撃を受けたという。そして、協調領域の広がりについては「なし崩し的に協調領域が広がりすぎているのではないか」と懸念を示した。災害時の事業者間ローミングやデュアルSIMの議論で「MVNOが置き去りにされている」とし、「総務省はいつも競争せよと言っていますが、(これらの件については)さらっと見逃しちゃっているんじゃないか」と危ぶんだ。
「KDDIの通信障害でIIJのeSIMが伸びたり、MVNO各社がバックアップ回線みたいなサービスを出してきたりしている中で、大手3社が(デュアルSIMサービスを)やってしまうと、MVNOのそのビジネスはなんだったんだという話になってしまう。5Gもソフトバンクは人口カバー率90%を超えていますが、他社はエリアが全然できていいない。もうちょっとエリア競争してくれないと困るなと思うところです」(石野氏)
島上氏は「MNOさんが協調することによって、同じようなベネフィットをMVNOが受けられるのであれば問題ない」と述べたものの、石野氏が指摘したように、置き去りにされ、ベネフィットが受けられない事態になる可能性もある。そうなれば新しい問題が生まれ、今まで整備してきた競争環境がまた後退することになりかねない。「携帯電話番号の直接指定も始まるので、そこにも大きく影響してくる問題であるということで、問題提起をしているところ」(島上氏)だという。
北氏は「モバイル業界ほど競争している業界はない」と語る。自動車業界を例に出し、インフラ面での規格の統一やロビー活動では協調しており、競争と協調のバランスがいいと説明した。通信業界の協調についても北氏は「いいこと」という考えだ。ただ、もちろんバランスが重要と意見する。
「ヨーロッパではインフラシェアリングが当然のことになっていて、極力コストを落として通信料金を下げる流れが以前からある。3Gの周波数オークションで高騰したことを機にキャリア間の協調が進んだ。日本はオークションがなく、ここまで来てしまった。協調できるところは協調し、競争領域では競争する、それを明確に分けてやっていただきたい」(北氏)
一方、石川氏は「MVNO間の協調」を推奨。「似たような端末を扱っているなら、複数のMVNOが集まって一括調達して安く仕入れることもできるのでは。Appleと交渉して、新品のiPhoneを調達するぐらいになったらいいんじゃないか」(石川氏)と提案した。
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