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コラム

スペックダウンでも「Xperia 1 VI」に触れて“納得”した理由 「らしさ」を犠牲にして得たもの(1/2 ページ)

4K解像度のディスプレイや21:9の画面アスペクト比が廃止された「Xperia 1 VI」。Xperiaらしさが失われたとみる向きもあるが、実際に触ってみると、納得する部分が大きい。3つのカメラアプリは1つに統合されたが、使い勝手が向上したと感じた。

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 画面比率や解像度が大きく変更されて話題を呼んでいるソニーの最新スマートフォン「Xperia 1 VI」。今回はXperia 1シリーズを全て使ってきた身として、最新のXperia 1 VIについて思うことを書き連ねたい。

Xperia
ソニーの最新フラグシップスマートフォン「Xperia 1 VI」

「4Kディスプレイの廃止」「カメラアプリの統合」など大きな変化

 今回のXperia 1 VIで大きく注目されたのが、画面比率と画面解像度の変更だ。Xperia 1 VIでは画面比率が19.5:9、画面解像度は1080×2340ピクセルのフルHD+に変更された。従来までは21:9比率、解像度は1644×3840ピクセルの4Kだったこともあり、この変更には「グレードが下がった」という意見が多かった。

 筆者としてもXperia 1シリーズはもちろん、2015年発売の「Xperia Z5 Premium」から築いてきたアイデンティティーであった4K解像度の廃止という選択は、Xperiaの強みの1つを失ったように感じた。

 4K解像度のスマホが出はじめたころは「4K画質で記録し、4K画質で再生できる唯一のスマートフォン」として注目されていたが、その強みも同時に失われることになる。

 また、今回の決断によって「スマートフォンには4K解像度の画面はまだ必要なかった」と暗喩されたようにも感じた。これはソニー以外の他メーカーが追従してこなかったことから、おおむね察することができたが、4K解像度ディスプレイの旗振りをしたソニー自らこのような決断に至ったところは、やはり残念だといわざるを得ない。

Xperia XZ Premium
4K解像度のスマートフォンといえばソニーだった。画像は2017年発売のXperia XZ Premium

 Xperia 1以降の21:9アスペクト比のディスプレイは、シネコン比率の動画を黒帯なく再生できることはもちろん、画面分割時に1:1で分割できるなど、スマホとしても利用しやすいことをアピールしていた。縦長のため、ブラウジングやSNSでも表示できる情報量が多いことから、縦向きのテキストコンテンツの閲覧には向いている仕様だった。

 今ではGalaxy Z Flip5をはじめとした一部のフリップタイプのスマートフォンがこれに近い比率を採用する。横幅をシェイプできるなどの利点もあり、今思えば先見の明があった。

Xperia
21:9比率によって画面分割が利用しやすい点はXperia 1から持つ利点だ

 今回の大きな変化の1つが、カメラアプリの統合だ。Xperia 1シリーズは「Cinema Pro」「Photo Pro」「Video Pro」の3つを用途に合わせて使えるようにしていた。これはソニーにしかできない強みで、業務用機材のUI(ユーザーインタフェース)をスマホ向けに最適化し、同じような環境で撮影できることをアピールしていた。プロカメラマンが「サブ機材」として使えるレベルを目指していたのだ。

 Xperia 1 VIでは、これらのアプリが統合されて1つになった。より一般的になったといえば響きはいいが、中身はガラッと変わった。そのため、操作画面も変更されたものや、削除された機能もある。特に操作性の変更は「カメラのようなUI」を求めていた従来のファンにとっては悩ましい。

Xperia
Xperiaの売り文句であった、ソニーのカメラの操作性をスマートフォンに落とし込んだアプリたち。直近ではクリエイティブルックなども採用されるなど、年々進化を続けていた
Xperia 1 VI
カメラアプリのUIは大きな変更が入った

実機に触れて解消した不安 4Kはオーバースペックだった?

 さて、事前情報だけでは多くの変更点から不安も多かったXperia 1 VI。こればかりは一度実機を手に取ってみようということで筆者はソニーストアに向かった。同じタイミングで開発者トークショーも開催されており、Xperia 1 VIの開発に携わった方々から直接話を聞いたり、実機を手に取って確認してみたりすると、不安の多くは解消された。

Xperia
週末にはXperia 1 VIに携わった開発者のトークショーも行われていた

 大きな懸案だった画面解像度の変化だが、これを実感できる場面はほとんどなかった。Xperia 1 VIはブラビアの技術も反映させたチューニングもあって、十分にきれいなディスプレイだった。

 思い返せば、既存のXperia 1シリーズは4K解像度の画面を搭載しているものの、多くのコンテンツはフルHD相当の表示だった。そのためオーバースペックの4K画面を搭載するなら、より実用性に見合ったディスプレイを採用する流れに至った点は納得だ。

 また、ファンからは「フルHDではなく、もう1つの上のワイドQHD解像度の画面を採用しては?」という意見もあったが、開発陣からは「この解像度で制作されるコンテンツが少ない。フルHDと4Kの中間でどっちつかず。クリエイター目線としても中途半端なので採用を見送った」と説明があった。このクリエイターサイドのこだわりはソニーらしいと感じる部分だ。

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画面の「きれいさ」は解像度だけでなく、多くの要素が混ざり合って生まれるものとトークショーでも説明された

 従来のXperia 1シリーズの画面比率も、21:9比率のコンテンツを視聴する上ではプラスだった。他にもテキストサイトやSNSの表示量が多い。ゲームでより多くのエリアを見渡せる(表示できる)という利点があった。

 一方で、動画視聴時の黒帯が目立つこと、写真が大きく表示されないことを考慮すると、コンテンツを主軸に置いた体験では一般的な利用者のニーズは19.5:9の方が合っていると感じた。

 実はXperia 1の登場当時は「これからは5Gの普及などで4Kのコンテンツが多く出る」と見越して21:9のアスペクト比を採用したという。それから実際に5年がたった今、4Kコンテンツの量は当時の想定よりも少なく、今なおフルHDのものが多い。SNSなどを中心に縦動画のコンテンツが増えたこと、スマートフォンを使用するクリエイターが増えたことも画面アスペクト比の変更理由に挙げていた。

 また、今までの4K画面そのものが「いろいろとむちゃをしていた」こともあり、大幅な見直しとなったこのタイミングでXperia 1 VIではアスペクト比を変更する方針になったという。

 その一方で、ミッドレンジの「Xperia 10 VI」では21:9比率の画面を引き続き採用する。このアスペクト比を継続した理由は、画面比率よりも「横幅を抑えたスマホ」というニーズが強く、今回は継続したとしていた。

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実機を確認するとXperia 1 VIは従来のイメージのまま、少々横に広がった。これは長辺を変えずに横幅を増やしたことによるものだ
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Xperia 10 VIは利用者のニーズから21:9比率を継続する
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Xperia 1が登場したときと今ではコンテンツも変化し続けており、これらに対応させる形で画面比率の変更を行った

 加えて、一般的な解像度のディスプレイに変わったことで画面の最大輝度が向上した。ここは旧機種と比較して明確に体感できる部分だ。リフレッシュレートを柔軟に制御できるLTPOにも対応し、画面解像度が抑えられたことでバッテリー持ちにも大きく貢献している。実際に手に取って体感してみると「こちらの方がいい」と感じるファンも多いだろう。

 カメラアプリも実際に触ってみると、より一般層へ歩み寄ってくれたことが分かる。かつてのカメラアプリは一般の利用者からは「どのアプリを使っていいのか分からない」という意見もあったが、かなりまとまりがよくなった印象だ。

 ハードウェアとしてもイメージセンサー類は変わらず、レンズの設計やコーティングを最適化したという。確かに、店舗内で試した限りではXperia 1 Vよりもきれいに撮影できるようになっていた。今作ではテレマクロ機能を備えるなど、新たな魅力も加わった。

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カメラは望遠レンズの設計やコーティングなどを一新した
Xperia
新機能としてテレマクロ機能を備えた

 この他にもベイパーチャンバーを採用したことによる冷却性能の向上、イヤフォンジャックやステレオスピーカーの音質向上などのアップデート要素も盛り込まれている。従来モデルの利用者でも納得できる要素が多く備わっていると感じた。

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