Starlinkを沖縄でも提供、「衛星間通信」で全国対応 au基地局は5Gに対応
米SpaceXの衛星ブロードバンドサービス「Starlink」が衛星間通信の対応し、沖縄県を含む全国で利用可能となる。KDDIが発表した。
米SpaceXの衛星通信サービス「Starlink」が7月より沖縄県で利用可能となる。これにより、日本全国でStarlinkの通信サービスが利用可能となる。KDDIが7月18日に実施したStarlink for Businessの記者説明会にて明らかにした。
Starlinkは、低軌道に打ち上げた多数の衛星が連携し、地上の通信を仲介する衛星コンステレーションサービスだ。モバイル通信並みの高速・低遅延な通信を、モバイル通信並みの料金水準で提供している。日本では2022年10月からサービスを提供している。KDDIが地上局の運営において技術協力を行っている。
Starlinkのサービス提供エリアはこれまで「沖縄県や小笠原諸島を除く日本全国」となっていた。これは技術上の制約によるものだ。
Starlink衛星は、いわば宇宙空間に設置されたネットワークの中継器のような存在だ。衛星はユーザーのアンテナからのパケットを送受信し、インターネット網への出口となる地上局へ伝える。
これまでのStarlinkのサービス仕様では、1つの衛星の視界内にアンテナと地上局の両方が存在する条件下でのみ通信が成立する。日本の西端にある沖縄県や、南端にある小笠原諸島は、日本の地上局から地理的に遠いため、Starlinkサービスの提供範囲外となっていた。
この制約を解消するのが衛星間通信だ。宇宙空間上に点在するStarlink衛星同士がレーザー光で通信を行う。衛星同士の通信により巨大なメッシュネットワークを形成する。これにより、例えば沖縄のユーザーのアンテナから北海道の地上局に通信するような、長距離の衛星通信も可能となる。
SpaceXは衛星間通信機能に対応したStarlink衛星の打ち上げを進めており、KDDIはSpaceXと共同で衛星間通信の技術検証を行っている。KDDIの松田浩宏執行役員によると、au網のバックホール回線として衛星間通信を用いた場合でも、サービス品質を満たせることを確認しているという。
KDDIが日本の法人・自治体向けの「Starlink Bussiness」では、7月より沖縄県を対応エリアとして追加し、日本全国で利用できるようになる。沖縄県でauサービスを展開する沖縄セルラーは、Starlink衛星をモバイル通信サービスのバックホール回線の1つとして活用する。
Starlinkを運用するau基地局が5Gに対応
KDDIはまた、Starlinkをバックホール回線として利用するau 5Gの基地局の運用を開始することを発表した。KDDIは既に4G LTEサービスのバックホール回線として利用しており、5G網への対応も追加された格好だ。KDDIによると、Starlink網のau 5Gでの対応は、将来的な5Gへの本格移行も見据えた措置で、5G SAと5G NSAの両サービスで利用可能としる。
携帯基地局とコアネットワークをつなぐバックホール回線は通常、固定回線網が利用されている。Starlink回線は通常の回線ではまかなえないような通信ニーズに対応するために活用されている。
Starlinkをバックホール回線として利用する場合、Starlinkの回線品質がボトルネックとなるため、4G LTEでも5Gでも通信品質に大きな差は生じない。ただし、音楽フェス会場などの非常に混雑する場所で通信を行った場合、電波の利用効率が高い5Gユーザーが増えることで、全体の混雑が緩和できる可能性がある。
関連記事
船舶でも高速なインターネットを! KDDIが「海上向けStarlink」を法人向けに提供
KDDIが、米SpaceXの海上向け衛星インターネットサービス「Starlink Maritime(スターリンク マリタイム)」を法人向けに提供する。最高通信速度は220Mbps(理論値/ベストエフォート式)で、船舶の緊急連絡手段や船員への福利厚生、客船における乗客へのサービスとしての利用を想定している。KDDIが“エリアの穴”をふさぐのに「Starlink」を採用したワケ スマホの直接通信には課題も
KDDIは、低軌道衛星通信の「Starlink」を基地局のバックホールに活用する。12月1日には、その第1号となる基地局が静岡県熱海市の離島である初島で開局した。離島や山間部ではバックホールに光ファイバーを敷設できないため、Starlink基地局が活躍する。衛星通信サービス「Starlink」は誰向け? 将来的にはスマホとの直接通信も視野に
KDDIは10月19日、衛星通信サービス「Starlink」に関する記者説明会を実施した。Starlinkは、大量の低軌道衛星で地球上をカバーする米SpaceX社の通信サービス。au網のエリア補完に活用し、将来的にはスマホと衛星の直接通信も視野に入れている。KDDIとWi2、Starlinkを活用した「山小屋Wi-Fi」を2023年夏以降に提供 「八方池山荘」で先行提供
KDDIとワイヤ・アンド・ワイヤレス(Wi2)が、Starlinkを活用した山間部の山小屋におけるWi-Fiサービスの提供を開始する。ヤマップとのパートナーシップのもと、電波の届きにくい山小屋の通信環境の改善を目的とている。長野県白馬村の八方池山荘では、5月29日から先行提供される。ソフトバンクが衛星インターネット「Starlink」を法人/自治体向けに提供 9月下旬から
ソフトバンクが9月下旬から、再販代理店として衛星インターネット「Starlink」を法人/自治体向けに販売する。Starlinkの取り扱いはKDDIに次いで2例目だが、ソフトバンクでは自社のソリューションと組み合わせた販売に力を入れるようだ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.