折りたたみスマホが“ごく普通の選択肢”に 「Galaxy Unpacked」で示した新トレンド:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
2023年のGalaxy Unpackedで中心に据えられていたのは、縦折り型のフォルダブルスマホであるGalaxy Z Flip5だった。そのスペックを強調するのではなく、セルフィーやカバーディスプレイのユーザーインタフェース、カメラ機能などを中心に紹介。Galaxy Z Flip/Foldは特殊な端末ではなく、ごく普通の選択肢として訴求していることが伝わった。
フォルダブルの体験を左右するヒンジを刷新、スマホの主流を目指す
フルモデルチェンジを遂げたGalaxy Z Flip5に対し、Galaxy Z Fold5は、やや小幅な進化にとどまっているような印象を受けた。メインディスプレイは輝度が上がり、プロセッサも「Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxy」に刷新されたものの、基本的なデザインは踏襲されている。カメラも、「Galaxy Z Fold4」のときからハードウェアの大きな変更はない。ISP(Image Signal Processor)の改善で画質は上がっているとみられるが、マイナーチェンジにとどまっている。
一方で、Galaxy Z Flip5とともに、そのヒンジは大きく改善された。折り曲げたときの中央部分を水滴型に逃がしつつ、2つのレールで力を分散させる新しい「フレックスヒンジ」を開発。これによって、Galaxy Z Flip5、Fold5の双方とも、閉じたときにできていた隙間がほぼなくなった。隙間を圧縮できた分、閉じたときの最厚部になっていたヒンジ付近のサイズは削減され、Galaxy Z Flip5で約2mm、Galaxy Z Fold5では約2.4mmの薄型化に成功している。ヒンジ自体の厚みも減り、軽量化にも成功した。
Unpackedでも、Galaxy Z Fold5を紹介する際に、フレックスヒンジの仕組みを詳細に解説しており、サムスン電子がこの開発に注力していたことがうかがえた。フォルダブルスマホにとって、ヒンジは全体の完成度を左右する要ともいえるパーツだ。実際、Galaxy Z Flip5、Fold5を手に取ってみると、ヒンジの違いがもたらす体験の違いがよく分かる。いち早くフォルダブルスマホに取り組んでいただけに、サムスン電子はその重要性を他メーカー以上に重視しているといえそうだ。
現状では、まだまだスマホの主流とはいえないフォルダブル端末だが、その波は確実に大きくなっている。サムスン電子のDX部門 Mobile eXperience事業部長(社長)を務めるTMロー(盧泰文=ノ・テムン)氏は、Unpackedの冒頭で、将来、フォルダブルスマホが年間出荷台数で1億台を超えるとする調査会社の予測値を挙げつつ、「既にわれわれのスマホのユーザーのうち半数が、次の機種変更ではフォルダブルを考慮しようとしている」と語った。
早くからフォルダブルスマホに取り組んでいたことが奏功し、サムスン電子はこの分野でトップシェアを誇るだけでなく、「世界で最も好まれているフォルダブルのブランド」(同)になった。XiaomiやOPPO、さらにはモトローラといった競合メーカーがフォルダブルスマホを続々と投入しているが、その市場が大きくなればなるほど、ディスプレイやヒンジといった部材から独自に開発をしているサムスン電子が優位に立てる可能性がある。
イベント取材のためにソウル市内を移動する際にも、Galaxy Z Flip/Foldシリーズを持つユーザーを多数目撃した。特に、比率が高かったのはGalaxy Z Flipシリーズ。お膝元としてサムスン電子のシェアが突出している韓国だが、フォルダブルスマホも一足先に普及していることがうかがえる。
もはや、Galaxy Z Flip/Foldは特殊な位置付けの端末ではなく、ごく普通の選択肢の1つになっているというわけだ。これがサムスン電子の戦略だったかどうかは定かではないが、フォルダブルスマホが生活に溶け込んでいる“仕込みなしの現実”を世界に示せたのも、Unpackedを韓国で開催した意義の1つだったといえそうだ。
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