完全ワイヤレスイヤフォン2強の「AirPods Pro」「WF-1000XM5」、どちらを選ぶ? その違いを解説
今や群雄割拠となったワイヤレスイヤフォン。価格帯は数千円から数万円まで幅広く、また機能もさまざま。左右独立型の完全ワイヤレスイヤフォン2強の「AirPods Pro」「WF-1000XM5」の違いを整理してみた。
今や群雄割拠となったワイヤレスイヤフォン。近距離無線通信の規格であるBluetoothを使い、スマホやPCなどと接続して使うことで、スマホやPCなどの音声を完全ワイヤレスイヤフォンに伝送できる。
一口にワイヤレスイヤフォンといっても首からかけられるネックバンド型や、左右独立型などさまざまなタイプが存在する。特に昨今はアクティブノイズキャンセリング(ANC)機能を備える左右独立型の完全ワイヤレスイヤフォンが注目を集めており、あらゆるメーカーが手掛けている。
ANCは周囲のノイズと逆位相の波形の音を生成し、それをノイズの波形にぶつけて相殺することで、ノイズを打ち消すことができる。ANC機能付きの完全ワイヤレスイヤフォンの多くがこの仕組みを採用しており、音質とともにセールスポイントとして訴求される例が多い。
ただ一方で価格帯は数千円から数万円まで幅広く、また機能もさまざま。メーカーはAppleやソニーの他、ゼンハイザーやオーディオテクニカなどのオーディオ機器メーカーや、家電メーカーのパナソニックなどが挙がる。
その中でもAppleの「AirPods Pro 第2世代」(Apple Store価格は税込み3万9800円)、ソニーの「WF-1000XM5」(ソニーストア価格は税込み4万1800円)はスマホなどとの相性がいい。ANC機能の搭載は共通点であるため、今回はあえてANC以外の違いや魅力を整理してみたい。
Appleユーザーなら扱いやすい「AirPods Pro」 空間オーディオも魅力的
まずはAirPods Proをチェックしておこう。
選ぶときのポイントはiPhoneやMacを持っているかどうか。持っている、もしくは検討しているなら、AirPods Proを選びたい。親和性があるからだ。iPhoneで設定アプリを開かずにAirPods Proのケースのふたを開けるだけでペアリングが完了する。
他の一部のメーカーもふたを開けるだけで、スマートフォンなどの画面にポップアップが表示され、簡単にペアリングが完了する仕組みを取り入れているが、他のメーカーに先駆けてこの仕組みを定着させたのがAppleだ。ペアリングは頻繁に行わないとはいえ、設定アプリを開いてイヤフォンをペアリングモードにして……という動作は意外と面倒だ。
しかし、AirPods ProとAndroid、Windowsの組み合わせでは画面にポップアップが表示されず、簡単にペアリングすることはできない。だからiPhoneやMacとの組み合わせの方がいい。
音楽や映画などの視聴時にもっと没入感を高めたい、という人にもAirPods Proが向くはず。「空間オーディオ」だ。5.1chや7.1ch、Dolby Atmosのような規格に対応した音源を聴く際、音の位置や動きをAirPods Proにも反映できる。
ただし、対応する機器とコンテンツは限られる。Appleが公開している「空間オーディオ対応デバイス」を見ても分かるように、Apple製品とそれに関するコンテンツのみで体験できる。
- AirPods Pro(第1世代、第2世代)、AirPods Max、AirPods(第3世代)、Beats Fit Pro、Beats Studio Pro
- iPhone 7 以降または以下に該当するiPadモデルの内蔵スピーカー
- iPad Pro 12.9型(第3世代)以降
- iPad Pro 11型
- iPad Air(第3世代)以降
- iPad (第6世代)以降
- iPad mini(第5世代)以降
- iOSまたはiPadOS 15.1以降
- Apple シリコン搭載の Mac コンピュータの内蔵スピーカー
- tvOS 15 以降を搭載した Apple TV 4K
- この機能に対応した App のオーディオビジュアルコンテンツ
他にもAirPods ProとMagSafe充電ケースのどちらもIPX4等級の耐汗耐水性能を持っており、水滴や汗程度なら耐えらえる。運動をしながら音楽を聴く人に向きそうだ。
充電ケースにストラップホールがあるのも便利だ。AirPods Proのストラップホールにストラップを取り付けておけば、「カバンやリュックサックなどの奥底で他の荷物に紛れ込んで見つからない……なんてことを防げるし、紛失のリスクを軽減できるはずだ。
万が一、AirPods Proを紛失してしまった場合は「探す」アプリからAirPods Proの場所を地図上で確認し、AirPods Pro本体から音を鳴らして探せる。
Xperiaとの組み合わせでいい音になる「WF-1000XM5」
ソニーのWF-1000XM5はどうか。
選ぶ基準の1つとして、LDACコーデックを挙げたい。LDACコーデックはハイレゾ品質の最大96kHz/24bitの音声を最大990kbpsの高いビットレートで伝送できるのが特徴。ハイレゾ音源だけでなくCD品質の音源も再圧縮による音質低下の影響を抑えることが可能だ。
LDACコーデックでの接続に対応しないiPhoneと組み合わせて使う場合、CD音源や圧縮音源をハイレゾ相当の高解像度音源にアップスケーリングする技術である「DSEE Extreme」を使うといい。ただし、スマートフォンアプリ「Sony | Headphones Connect」でDSEE Extremeを有効する必要がある。
WF-1000XM5はXperiaと組み合わせてこそ真価を発揮する。それは音質だ。ストリーミングなどのローレゾの音声に関して、XperiaはAIを活用した「DSEE Ultimate」と呼ばれる技術でサンプリング周波数やビット深度の拡張を行う。音の明瞭さが向上し、余韻などの深みが増したようなサウンドとなる。ソニーがこれまでウォークマン(WALKMAN)で培ってきたDSEE Ultimateによる処理をXperia本体で行うため、他のスマホとイヤフォンとの組み合わせよりもいい音になるという。
「360 Reality Audio」を体験できるのもアドバンテージの1つだ。360 Reality Audioはオブジェクトベースの360立体音響技術を使った体験を指し、楽器などの音源それぞれに位置情報を付与し、空間に配置することで、立体的な音場を再現できる。ただし再生できるコンテンツが「Amazon Music Unlimited」「nugs.net(洋楽のみ)」に限られているので注意しよう。
他にもWF-1000XM5を2台の機器と同時に接続し、それぞれで通話も音楽再生も行える。ソニーではこれをマルチポイント接続と呼称しており、例えば、通勤中にスマホで音楽を聴き、会社に着いたらPCで会議を始めると、接続先がスマホからPCへ自動で切り替わる。2台の機器が異なるOSでも都度手動で切り替える手間が省ける。
スマホとの組み合わせがカギ
このように3万円台のAirPods Proと、4万円台のWF-1000XM5の違いを整理してみると、スマホとの組み合わせで機能や音質を最大限に生かせることが分かる。
とはいえ、ANC付きの完全ワイヤレスイヤフォンとしてはどちらも高価な部類に入るため、ANCだけでなく「どのスマホやPCを持っているのか」「どのような機能や性能を求めているのか」という点を踏まえた上で選びたい。
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