楽天モバイルはプラチナバンドをどう活用するのか サービス開始時期や“パケ詰まり”対策についても聞いた
楽天モバイルがようやくプラチナバンドを獲得した。総務省が10月23日に楽天モバイルへの割り当てを発表した。プラチナバンドを楽天モバイルがどのように考えているのか、また今後、“パケ詰まり”の対策をどのように行うのか、楽天モバイルに聞いた。
楽天モバイルがようやくプラチナバンドを獲得した。総務省が10月23日に楽天モバイルへの割り当てを発表した。
楽天モバイルが獲得したプラチナバンドは700MHz帯(3MHz×2)で、端末側は715MHz~718MHz、基地局側は770MHz~773MHzを用いる。1.7GHz帯の電波と比べて障害物に強く、エリアカバーを広げる上で有利とされるプラチナバンドだが、楽天モバイルが今後、どのように既存周波数と使い分けていくのか。楽天モバイル広報に聞いた。
プラチナバンド獲得までの流れ
もともと、楽天モバイルへのプラチナバンドの割り当ては、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが保有するバンドを再配分する形で、新たに割り当てる議論が進んでいたが、そうなると3社がせっかく取得したプラチナバンドの一部を手放すことになり、レピータの交換や基地局の受信フィルタの挿入などに多大な時間と費用などがかかることから、各社が負担増と判断し反対していた。
その後、特定のラジオマイクや高度道20路交通システムで使用されている700MHz帯の間に3MHz幅×2の空きがあるとして、ドコモが提言した。その内容は干渉防止用途であえて開けていたガードバンドを減らす代わりにLTEに活用するという提案だった。
8月には申請受付が始まり、楽天モバイル1社のみが申請。楽天モバイルの見積もりが認められ、同社にプラチナバンドが割り当てられた。
割り当ての受け止めについて、楽天モバイル広報は次のように回答した。
「当社は、参入当初より『携帯市場の民主化』を掲げており、国内における公正な競争環境の確保ならびに通信ネットワークの構築・整備のため、つながりやすいモバイル通信サービスを実現する上で欠かせない周波数であるプラチナバンドの割当を要望しておりました。このたび、割当いただいた周波数を有効活用し、通信環境の改善を進め、通信インフラ事業者としての社会的意義を果たしていきたいと考えています」
可能な限り早期の発射を目指していく
8月の決算会見で楽天モバイルの鈴木和洋CEOは、700MHz帯の割り当てに関して準備を進めており、「2023年秋に割り当てをいただければ、23年末には最初の電波を発射できる」と発言していたが、楽天モバイルが総務省に提出した開設計画では後ろ倒しとなった。
この理由について、楽天モバイル広報は次のように回答する。
「今回認定をいただいた帯域については、地上デジタル放送や特定ラジオマイクなどの帯域と近いということもあり、関連するステークホルダーにご迷惑をおかけしないよう、丁寧に調整を進めていきたいと考えております。そのため、電波発射までの業務プロセスを“保守的”に試算し、2026年3月サービス開始というスケジュールで提出をさせていただきました」
「一方で、プラチナバンドの価値をお客様にいち早く享受いただくようにすることが割当いただいた事業者の責務だと思いますので、速やかに関係する皆様との調整を行い、24年中など可能な限り早期を目指して1日でも早く運用開始できるよう、準備を進めていきたいと考えております」
回答を踏まえると、電波発射時期を2023年内と回答していた楽天モバイルは、強気な姿勢から慎重な姿勢に変えたように思える。
また、KDDIとの新ローミング(当初の期限は3月末)が9月までとなるため、ローミング終了後は自社だけでネットワークの整備を行う必要があるが、計画では2033年度末までの設備投資額が累計で544億円かかることになっている。それまでに経営改善が図れるのかも今後の焦点となる。
プラチナバンドで「人口密集地から手を入れていく」
そんな楽天モバイルだが、獲得したプラチナバンドをどう活用していくのか。同社広報は次のように回答する。
「提出した開設計画では、認定期間終了の2033年度までに1万661の基地局を開設する予定となっています。顧客満足の最大化の観点から、よりユーザー数およびトラヒックの多い都市部から特定基地局の展開を行う予定です。現状、特に都心部において建物屋内に弱みがあると考えられるため、プラチナバンドの特性(よく曲がり、よく浸透するなど)を生かし、既存の周波数では届かない建物の奥の電波環境を改善したいと考えています。なお、郊外などの当初計画に含まれていないエリアについても、需要が顕在化した場合には整備を行う計画です」
つまり楽天モバイルはプラチナバンドを一気に吹かせるのではなく、人口密集地から手を入れていくようだ。楽天モバイル(の既存周波数)につながりづらいとされる地下や建物の中でもつながりやすくするため、「障害物を回避しやすく屋内や遠くへ飛びやすい」プラチナバンドを補完的に使う考えだ。
“パケ詰まり”の対策はどのように行っていくのか
一方、ドコモではプラチナバンドにトラフィックが集中したことで、いわゆる“パケ詰まり”が起き、「つながりづらい」「遅い」などの体感につながっている。
SNSでは、とある楽天モバイルユーザーが数TBものデータを消費したとの投稿が注目を集めた。局所的に人が密集していっせいにプラチナバンドをつかみ続けてしまうと、ドコモのようにパケ詰まりをしてしまう可能性がある。ユーザー数が500万を超えたばかりとはいえ、本末転倒にならぬよう楽天モバイルの工夫は当然必要となる。楽天モバイル広報はパケ詰まりの対策を次のように説明する。
「いわゆるパケ詰まりは、プラチナバンドのような低い周波数帯域にトラフィックが集中することで起こる傾向にあると考えています。そのため、いかにしてさらに広い帯域である1.7MHz帯や5Gに逃すかなど、複数のバンドを組み合わせるマルチバンド戦略について、今後社内で技術メンバーを中心に議論していく予定です。(700MHz帯において)他社よりも細い帯域であっても、つながりやすいというユーザー体感が実現できるよう、取り組んでまいります」
楽天モバイルは複数の周波数帯域を使い分けて、特定の周波数帯域だけにつながりつづけることのないよう、対策をしていく考え。
繰り返しにはなるが、今回、楽天モバイルが獲得したプラチナバンドは、700MHz帯(3MHz×2)となっているが、プラチナバンドは700MHz帯だけでなく800MHz~900MHz帯も含む。楽天モバイルとして再配分を希望する考えはあるのか聞いたところ、同社広報は「700MHz帯とは別に、引き続き並行して検討を行っております。総合的に分析しながら最適なネットワークの構築を目指していきます」とした。
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