IOWNは6G時代のボトルネック解消になるか 「IOWN WEEK」で見えた実力と課題:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
NTT、ドコモ、東急不動産は、東京・渋谷に完工した「渋谷サクラステージ」で、次世代コミュニケーション基盤の「IOWN」を導入。これをお披露目する「IOWN WEEK」を12月13日から15日の3日間に渡って開催した。IOWNは、次世代モバイル通信規格の6Gを支えるバックボーンとしても期待されている。
県間通信は未実装でコストも課題か、今後の進展に注目
とはいえ、まだAPN IOWN 1.0のサービス提供は始まったばかり。ユースケースを広げる上で、課題も残されている。1つは接続できる距離で、現状では都道府県をまたがった利用ができない。先の瀧野氏は「今は東京だと渋谷と八王子という形なら提供可能だが、県をまたぐのが現状では難しい。光ファイバーが提供できないエリアも一部にはある」と語る。IOWNの導入を担うNTT東日本の担当者も、「お客さまと話していると必ず県間接続の話は出てくる」と明かす。
東京都内でも拠点間をつなげばある程度、移動時間などを削減できるものの、その効果は限定的だ。これが、例えば東京本社と地方各地の支社を結べるとなれば、APN IOWN 1.0を導入したい企業は増える可能性がある。IOWNが目的としている距離を縮めるには、まずその提供範囲を広げなければならないというわけだ。瀧野氏によると、その導入は「25年度の大阪関西万博をめどに考えている」といい、実現にはまだ少し時間がかかる。
現在提供されているAPN IOWN 1.0は、いわゆる専用線のサービス。料金も、1契約あたり月額198万円かかる。100Gbpsと帯域が広い専用線であることを考えると、極端に高いわけではない(既存のNTT東西の専用線も、100Gbpsは198万円かかる)が、IOWNを広く普及させていくには提供形態の多様化は必要になるだろう。ユースケースとして示した漫才のような場面で活用するには、まだコストが見合っていないような印象も受けた。
IOWNはAPN IOWN 1.0としてまだ商用化されたばかり。2025年度には、光電融合(光と電気の回路を融合させた技術)デバイスを活用した「IOWN 2.0」の商用化が予定されている。公的な標準策定作業も国際標準化機関のITU-Tで13日に合意したばかり。現状の商用サービスは、あくまでスタート地点にすぎない。コンシューマーがその恩恵を受けられるようになるのは、まだまだ長い道のりがある。
一方で、6G時代には有線部分がボトルネックになるとも言われているだけに、ドコモもIOWNの要素技術は必須と考え、連携を強化している。また、IOWNのグローバルな普及・推進を目指すIOWN Global Forumには、NTTや海外ベンダーはもちろん、KDDIや楽天モバイルといった国内キャリアも参画しており、世界標準を目指している。モバイルネットワークの高度化の土台にもなりうるだけに、今後も注目しておきたい技術の1つといえそうだ。イベントでは、その可能性を垣間見ることができた。
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