ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天が2024年年頭所感を発表 ネットワーク品質やAI活用が注目される年に
ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天が年頭所感を発表した。各社は2023年を振り返りつつ、2024年に成し遂げることも明らかにした。2024年はネットワーク品質やAI活用が注目される年になりそうだ。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天の社長が2022年の年頭所感を発表した。
2023年は電気通信事業法に関するガイドライン(総務省令)が改正され、端末の販売手法が注目された。割引額は4万4000円~8万8000円の機種が半額まで、4万4000円までの機種が2万2000円までとなった他、端末単体の割引に規制がかかった。
また、ネットワーク関連ではドコモのネットワーク品質が著しく低下した点が取り沙汰され、ドコモとしてもこれを認め品質改善に向けた動きも注目された。こうした2023年の動きを踏まえ、MNO4社は2024年、どういった展望を持つのか。
NTTドコモ:グループ一丸で取り組むネットワーク品質の改善
NTTドコモグループは、2023年までの3年間、法人ビジネスやソフトウェア開発力強化に向けた、NTTドコモ・NTTコミュニケーションズ・NTTコムウェアの再編、中小法人営業の強化に向けたソリューション&マーケティング本部設立と全国営業体制の構築、スマートライフ事業の社内カンパニー化、5つの地域ブロック制の導入など、これからのビジネス拡大に向けた土台を構築した。
一方で、2023年1月以降、ドコモで通信品質の著しい低下が目立ち、渋谷や新宿などの繁華街でつながりづらくなった。「ユーザーから厳しい評価をいただいた」とするドコモは、大都市を中心とした全国2000カ所と鉄道動線での緊急対策を2024年3月までに完遂するため、「NTTドコモグループ一丸となって、ネットワーク品質の信頼を取り戻す」としている。
金融サービスやマーケティングソリューションなどの新たな事業領域の開拓や、web3などの新しい技術を活用するなどして、「信頼と感動のドコモ」に生まれ変わる年にしたいという。
KDDI:体感品質を徹底的に磨く 生成AIの活用も
KDDIは、事業戦略として掲げる「サテライトグロース戦略」について、客観的なデータを基点とし、判断・アクションを起こす「データドリブン経営」の実践と生成AIの積極活用を両輪として、ビジネスの質的向上と量的拡大を目指す。
中核の事業である通信事業については、2022年7月に引き起こした通信障害を踏まえ、「体感品質を徹底的に磨く」としている。
事業成長が見込まれるDX、金融、エネルギーの分野については、パートナー企業との連携や、通信事業とのシナジー最大化などに注力し、成長に拍車をかけたい考えを示す。
価値の創出に関して、同社は生成AIのプロンプトになぞらえ、「リーダーシップや、企業全体がプロンプト(指示)能力を高め、提案力を伸ばし、価値を生み出すことが重要」との考えを示す。その生成AIは、auの「三太郎」シリーズ新年版の制作にも活用されているという。
ソフトバンク:通信品質で高い評価を得る 国産の大規模言語モデル(LLM)の開発も
ソフトバンクは、AIの技術が進歩し、ChatGPTなどが日常生活に浸透したことを挙げ、2023年を「人類とAIが共存する新時代の始まりを告げた年」と振り返る。ソフトバンクとしては、ChatGPT対抗の“和製ChatGPT”の開発を表明していた。
一方で、通信分野においては、携帯電話料金の値下げによる苦しい時期を乗り越え、「反転攻勢に転じた」としている。新料金プランとしてソフトバンクでは「ペイトク」、Y!mobileでは「シンプル2」を提供し、LINEヤフーとの連携を図り、モバイル事業の売上の反転に動いている。
通信品質については、他社の品質低下が大きく注目された一方で、英Opensignalの調査ではソフトバンクが高い評価を得た。今後高まる需要に対応すべく、「さらなる品質向上」を目指すという。
2024年は、同社にとって「AI共存社会を支える次世代社会インフラの整備を進める年」となり、2023年秋に本格的に稼働を開始した計算基盤を活用し、3500億パラメーターの国産の大規模言語モデル(LLM)の開発や、北海道での国内最大級のAIデータセンターの建設など、これまでの構想が形となっていく。
楽天モバイル:グループの年間売上は2兆円を超える見込み サービスやデータをAIと組み合わて効率化を図る
楽天グループは、2023年を「大きな変化と目標の達成があった年」と振り返る。モバイルでは、「Rakuten最強プラン」を提供し、回線の契約数が600万回線を超えている。海外でも大きな動きがあった。楽天シンフォニーがネットワーク構築を支援するドイツの「1&1」が、12月8日(現地時間)に携帯キャリアサービスを始めた。
また、楽天の強みでもある「楽天銀行」「楽天カード」とモバイルが事業が相互に影響し合い、「国内ECの売上総額を大幅に伸ばした」としている。楽天グループとしての年間売上は2兆円を超える見込みで、収益改善も「着実に進んでいる」という。
同グループは「2024年にAIが事業全体でさらに重要な役割を果たす年になる」と予測。これを見越してOpen AI社が同グループの戦略パートナーに参画した。同グループが2024年に始動させる「トリプル20」プロジェクトでは、「楽天エコシステム」のサービスやデータをAIと組み合わせて、「マーケティング、オペレーション、クライアントの効率を20%向上させることを目指す」としている。
関連記事
ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天の2023年年頭所感 技術の進化と社会の変化にどう対応する?
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天の社長が2023年の年頭所感を発表した。卯年である2023年を「飛躍の年」と位置付ける企業が多い中、MNO4社はどういった戦略を立てているのか。激化した2023年のスマホ料金競争を振り返る ドコモのサブブランド対抗/金融連携が新トレンド
2023年は、キャリア各社の料金プランが相次いで改定された1年だった。6月には、楽天モバイルが「Rakuten最強プラン」を導入。ほぼ同時期に、KDDIのUQ mobileも従来の料金体系を刷新した。ドコモがついにサブブランド対抗を打ち出して「irumo」を開始したのも大きなトピックだった。楽天の完全仮想化ネットワークを活用した「第4のキャリア」がドイツで誕生 そのインパクトを解説
楽天シンフォニーがネットワーク構築を支援するドイツの「1&1」が、12月8日(現地時間)に携帯キャリアサービスを開始した。同日開催されたイベントには、楽天グループの会長兼社長で、楽天シンフォニーのCEOを務める三木谷浩史氏が登壇。Open RANの意義や、この分野における楽天シンフォニーの強みを語った。auとソフトバンクは“金融連携”プランが好調、ドコモはどう出る? 料金競争は新たな局面へ
ドコモ、KDDI、ソフトバンクの上期決算が出そろった。2021年に始まった官製値下げの影響を受け、売り上げと収益ともに落ち込んでいたが、コロナ明けでトラフィックが増加したことに伴い、比較的料金が高い無制限/大容量プランに加入するユーザーが増加。一方で、ユーザー数やARPUが急増する可能性は低く、各社とも非通信領域の開拓を行っている。楽天モバイルの「プラチナバンド」拡大計画が遅いワケ 背景にある“複雑な事情”
6月に導入した「Rakuten最強プラン」や各地域でのマーケティング強化、法人契約の拡大などにより、楽天モバイルが好調だ。KDDIとの新ローミング契約や、プラチナバンドである700MHz帯の獲得により、エリアの拡大にもめどが立ち始めている。一方で、同社はコスト削減の必要もあり、700MHz帯のエリア展開はやや消極的にも見える。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.