人気なのに「Xperia」のシェアが急落した背景 それでもソニーがスマホをやめないのはなぜ?(2/3 ページ)
ソニーの「Xperia」は、日本ではよく知られたスマートフォンのブランド。新しいモデルが出るたびに注目されている。だが、シェアが落ち込んでいるのはなぜだろうか。
順調だったXperiaの出荷台数シェアが「ランク外」に その理由は?
順調に見えたXperiaだったが、2025年2月、MM総研が発表した「2024年(暦年)国内携帯電話端末の出荷台数調査」にソニーは含まれなかった。2024年のメーカー別総出荷台数シェア1位はAppleで、2012年から13年連続で1位を獲得。2位にシャープ、3位にGoogle、4位にサムスン電子、5位にXiaomi、6位に京セラと続くが、ソニーの名はなかった。
2024年のAIスマートフォンの出荷台数比率は31.4%だった。MM総研は2025年を「Apple Intelligenceの日本語対応がAIスマートフォンをさらに身近なものにし、新たな利用シーンの広がりや一般ユーザーへの普及が進む」年と予測する。
同調査にXperiaの名がなかったのはなぜだろうか? その主な要因として挙げられるのが、激化する価格競争で十分に優位に立てなかったことだ。特に円安が追い風となり、Xperiaのハイエンドモデルの価格は年々高価になり、競合のAndroidメーカーが次々とコストパフォーマンスの高いモデルを市場に投入する中で、優位性を示せなかった。
Xperia 1シリーズは高価格帯に位置付けられており、ミッドレンジのXperia 10シリーズだけで出荷台数シェア上位のポジションに上り詰めるのは至難だろう。エントリーの「Xperia Ace」シリーズも2022年の「Xperia Ace III」以降、後継モデルが発売されておらず、「普及価格帯Xperia」の選択肢が薄れていることも影響している。
競合メーカーの躍進もXperiaの出荷台数シェア低下に拍車を掛けている。例えば、Googleの「Pixel」シリーズはカメラ性能やAI機能を強みに順調にシェアを伸ばしており、シャープの「AQUOS sense」シリーズも国内市場で根強い人気を持つ。こうした中で、ソニーは熱心なファンに支えられてはいるものの、一般層にまで裾野を広げる戦略がかなっていない。
他社に先駆けていち早くAIを分かりやすく打ち出したのが「Google Pixel」だった。画像は「Pixel 9」「Pixel 9 Pro」「Pixel 9 Pro XL」「Pixel 9 Pro Fold」。写真2枚を組み合わせて、まるで1度で撮ったかのような集合写真を撮影できるのも、AIを生かした編集機能だ
2023年秋にソニーが投入した「Xperia 5 V」では、望遠カメラを廃止する代わりに、簡単なビデオ編集を行える「Video Creator」アプリを利用可能にするなど、より広いユーザー層に訴求する戦略に舵をシフトしたが、2024年末には5シリーズ新モデルの投入がなかった。
Xperiaにとって、「目に分かる形でのAI機能」が不足していることも、今後の競争で不利になるだろう。
ソニーが5月13日に発表したハイエンドモデルの「Xperia 1 VII」では、GoogleのパーソナルAIアシスタント「Google Gemini」、囲うだけで検索できる「かこって検索」、写真の構図の調整など「Googleフォト」アプリで利用可能な「編集マジック」をサポートした。動画撮影機能にAIを活用しているが、ユーザーの日常生活を支援するようなAI機能は乏しい。
スマートフォン選びにおいてAI機能のみを重視するユーザーは限られており、AI機能の有無が直接的に出荷台数シェア低下の要因になっているわけではないだろうが、今後、市場の中で優位性や存在感を示していくには、AIが製品価値を大きく左右する要素になっていくことは間違いないはずだ。
買い換えサイクルの長期化も、Xperiaの出荷台数シェアが低下した一因だろう。内閣府の消費動向調査(2023年12月実施分)によると、携帯電話の平均使用年数は4.4年となった。買い替えの理由としては「故障」が38.7%と最も多く、次いで「上位品目(上位機種)への移行」が30.6%となっており、一般的に使用上問題が起きない限り買い換えたいという心理にはならないことの表れといえる。
関連記事
「Xperia 1 VII」発表 目玉は被写体を逃さない動画撮影機能、ウォークマンのDNAで高音質化 Geminiや編集マジックにも対応
ソニーは5月13日、スマートフォンXperiaのハイエンドモデル「Xperia 1 VII(マーク7)」を発表した。発売時期はキャリアモデルとソニー直販モデルともに6月上旬以降を予定する。ソニーは動画撮影を強化するなど、体験重視のアップデートを図っている。Xperiaが国内Androidシェア1位に躍進した理由 「ミッドレンジが好調」だけにあらず
2021年度上期の国内スマートフォンシェアでソニーが2位に上昇した。「Xperia 10 III」「Xperia Ace II」といったミッドレンジモデルの販売が非常に好調であることが大きな要因だという。赤字続きだったモバイル・コミュニケーション事業も2020年度は黒字に転換している。データで振り返る“スマホシェア”の5年間、Google躍進で国内メーカーに衝撃
スマートフォンの出荷台数データを参照しながら、5年間を振り返る。Apple一強はますます強まる中、2023年にはPixelの躍進という大きな変化が生じた。「Xperia 1 VI」が大きな変貌を遂げたワケ 実機に触れて感じた「進化」と「足りないところ」
ソニーは5月17日、スマートフォンのハイエンドモデル「Xperia 1 VI(マーク6)」と、ミッドレンジモデル「Xperia 10 VI(マーク6)」の実機を報道関係者に披露。カメラ、ディスプレイ、オーディオのデモンストレーションを行った。Xperia 1 VIの光学7倍ズームや、ディスプレイのアスペクト比など、実機に触れて分かったことをまとめる。ソニーモバイルが“SIMフリーのXperia”を本格投入する狙いは? カギはミッドレンジにあり
ソニーモバイルが、SIMロックフリースマートフォンのラインアップを大幅に拡充する。発売されるのは、「Xperia 1」「Xperia 5」「Xperia 1 II」の3機種。Xperiaにとって大きな転換点になる可能性もある。そのインパクトを読み解いていきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.