KDDIは料金値上げも「循環経済の好循環」を目指す、「5G優先接続=既存ユーザーが犠牲」発言に反論も(2/3 ページ)
KDDIは2025年3月期決算で前期比16.3%増の1兆1187億円という大幅な営業増益を達成。松田浩路社長は「単なる通信会社から通信を軸に多様な価値を提供する企業へ」という進化を掲げ、「つなぐチカラの進化」と「デジタルデータ×AIによる新たな価値創出」を成長戦略の軸とする方針を明らかにした。
マルチブランド戦略の再設計 3ブランドの明確な差別化
KDDIはマルチブランド戦略も再設計する。松田氏は「各ブランドの魅力あるプランを展開し、auの魅力化による解約率の改善とUQ mobileとpovoの間のブランド間の移行をフラット化していく」と語った。
各ブランドのポジショニングも明確にした。auは「メインブランドとしての安心安全の価値を体現」、UQ mobileは「シンプルでお得を追求するエントランス」、povoは「オンライン専用で自由にトッピングできる」とし、3つのマルチブランドで幅広い顧客ニーズに対応する方針を示した。
具体的には、auは5月7日の改定で「バリューリンクプラン」「使い放題MAX+」を中心に、通信使い放題や渡航先での安心につながる価値をプランに組み込み、UQ mobileでは「コミコミプランバリュー」「トクトクプラン2」という2プラン構成に集約した。
Pontaパスについては、10月の提供開始から「純増21万会員」と好調な滑り出しを見せており、「次期は純増100万会員を目指す」と意欲を示した。ローソンとの連携が奏功し、Pontaパスの特典利用者は延べ2500万人に達している。
松田氏はローソンが今期創立50周年を迎えることに触れ、新経営方針「ローソングループチャレンジ2030」に向けて「テクノロジーをはじめとしたご支援をお約束したい」と述べた。
「つなぐ力」の進化を加速、5G「HPUE」の導入で通信品質向上へ
KDDIは通信品質の優位性を数字で示した。5G基地局は10万局を超え、うちSub6・ミリ波基地局は5万局超と国内最多を誇る。また松田氏は「通信の品質にこだわってきた」成果として、Opensignalによる「つながる体感」世界評価で6部門中3部門で世界1位、日本市場では全18部門のうち13部門で最多受賞を獲得したことを強調した。
この「つなぐチカラの進化」戦略の一環として、松田氏は「HPUE」(High Power User Equipment)技術の積極導入についても言及。HPUEはスマートフォンなどの端末の送信出力を高めることで、基地局から離れた場所でも安定した上り通信を実現し、サービスエリアを拡大できる技術だ。
特にソニーの「Xperia 1 VII」(6月発売予定)がこのHPUE機能に対応することを紹介し、「5Gの高周波数帯の電波は空間や遮蔽(しゃへい)物による減衰が大きいため、こうした技術革新が重要」と説明。2024年に整備された電波関連法令を活用し、5Gエリアの品質向上を実現する方針を示した。
松田氏は「お客さまからのご期待と信頼は本業である通信にかかっている」との認識を示し、「基地局の整備だけでなく、端末側の技術革新も含めた総合的なアプローチでサービスの土台となる通信を磨き上げていく」と決意を表明した。
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