KDDIは料金値上げも「循環経済の好循環」を目指す、「5G優先接続=既存ユーザーが犠牲」発言に反論も(3/3 ページ)
KDDIは2025年3月期決算で前期比16.3%増の1兆1187億円という大幅な営業増益を達成。松田浩路社長は「単なる通信会社から通信を軸に多様な価値を提供する企業へ」という進化を掲げ、「つなぐチカラの進化」と「デジタルデータ×AIによる新たな価値創出」を成長戦略の軸とする方針を明らかにした。
「データ×AI」による価値創出 AIマーケットと大阪AIデータセンター
松田氏はKDDIの今後の成長戦略として、「デジタルデータとAIを掛け合わせた新たな価値創出」を掲げた。約40万社の法人顧客との接点や業種ごとのナレッジを生かし、「リテール」「ロジスティクス」「スマートシティ」などの分野で業種別ソリューション提供を強化する方針だ。
「AIマーケット」構想については、「スマートフォン黎明(れいめい)期に『auスマートパス』でアプリを取り放題にしたように、AIでも同様のプラットフォームを構築したい」と説明。「お客さまが『AIって何がうれしいのかな』と思うときに、アプリケーションを集め、ここに集まるパートナー様にも成長していける環境を構築したい」と意欲を示した。
さらに、RCSを活用したAIチャットbotも近日中にリリース予定であると述べた。
大阪のAIインフラとして、シャープ堺工場跡地を活用した「大阪AIデータセンター」に言及。「2025年度中の本格化を目指し、夏頃からテストを開始する」と述べ、Geminiを国内データ主権の下で提供できる体制を整えるとした。「Google CloudやGeminiの環境に慣れた方には、既存の環境の上でお使いいただける」と、自国のインフラを用いたソブリンAI環境構築に意欲を示した。
IoT累計回線数は5052万回線に
ビジネスセグメントでは、高成長が期待されるグロース領域に注力する方針を示した。IoT累計回線数は5052万回線(前期比1000万回線増)に達し、2026年3月期は5750万回線への拡大を目指す。PC向けの「ConnectIN」サービスを1月から開始し、「エンドユーザーに月々の通信料金を意識させることなく利用できる」と訴求。「今後のPC市場成長の期待が高い商品」と位置付けている。
データセンター事業では、欧州でのコネクティビティナンバーワンに加え、タイでは開業2年で国内ナンバーワンの地位を確立したと説明。「データセンター事業は引き続き売上高2000億円を目指し、基盤強化を続ける」と松田氏は述べた。
セキュリティ分野では、NECとの提携によるサイバーセキュリティ基盤構築を進める。「純国産のサイバーセキュリティナンバーワンブランドを共同構築する」と意気込みを示し、「日本企業の海外拠点を攻撃者から守り、日本企業の海外進出を支援したい」と語った。「AIの進化によって言語の壁も超えてボーダーレスになってきている」サイバー攻撃への対応強化を訴えた。
高輪新本社移転と未来への投資
松田氏は2025年夏に移転予定の高輪新本社について「つなぐチカラを進化させ、ワクワクする未来を発信し続けるコネクタブルシティー」というコンセプトを説明。KDDIグループだけでなく「お客さまやパートナーが集い、新しいアイデアを出し合い、試行錯誤する街」を目指すと述べた。
具体的には、高輪新本社に「リアルテックコンビニエンス1号店」として「未来のコンビニ」を開業し、JR東日本との取り組みによるスマートシティーの事例を積み重ね、「こうしたソリューションをWAKONX(ワコンクロス:日本の強みを生かしたビジネスプラットフォーム)として展開していく」との構想を示した。
また、社員の働き方変革や「KDDI版ジョブ型人事制度」をより推進し、「“夢中に挑戦できる会社”の実現」を目指すことも強調した。
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