「(3a)Pro」ではなく「Nothing Phone (3a)」投入の理由、楽天モバイルが扱う背景は? キーパーソンに聞く日本攻略への道筋(2/4 ページ)
Nothingが4月に発売した「Nothing Phone (3a)」は、シリーズの特徴的なデザインを踏襲しながら、ベースとなるスペックを底上げし、新たに望遠カメラも搭載。販売面も強化し、新たに楽天モバイルが取り扱う。日本市場をどう攻略していくのか、Nothing Japanでマネージングディレクターを務める黒住吉郎氏に話を聞いた。
AI機能は「ユーザーが本当に欲しいものを探すところ」からスタート
―― Nothing Phone (2a)ではその処理能力を使ったAIを載せていますが、Essential Spaceはクラウド上で処理しているような挙動にも見えます。実際には、どうしているのでしょうか。
黒住氏 一部はオンデバイスですが、一部そうではない部分もあります。音声認識は基本的にクラウドですが、オンデバイスでやっている部分もかなりあります。情報の整理などはオンデバイスですね。また、カメラ周りの処理も情報量が多く、サーバ側で処理するには無理があるのでオンデバイスAIを活用しています。
―― AIというと、文章作成だったり、音声認識だったり、翻訳だったりが多い印象ですが、Essential Spaceという形にまとめられたのはなぜでしょうか。
黒住氏 ソフトウェアを開発している人間とも話しましたが、彼とそのチームが言っているのは、大前提としてAIを使ったものは世の中にあふれているということです。われわれがプラットフォームとして使っているAndroidの中にも、既にAIが入っています。そういったものと戦うのではなく、ユーザーが本当に欲しいものをしっかり探すところからスタートしました。生活の中でも、情報はいろいろある。どのように覚えていくかのやり方も人それぞれですが、結果としてとっ散らかってしまうと、あとから思い出すことができません。Essential Spaceは、それらをAIで1カ所に集めていくというところからスタートしています。
私が説明するときも、「忙しくて忘れがちなことを忘れないためにはいろいろなやり方がありますが、それがどこにあるのかをその都度探していませんか」という説明をしています。だったら、1カ所にそれを集めてAIを使い、適切なタイミングで適切な情報量で、適切に情報を出せるようにすればいい。その情報をベースにすれば、ユーザーがやりたいと思っていたことをよりよくできるエクスペリエンスになるのではないか。Nothingでは、第2の記憶と呼んでいます。
―― 自分も使ってみましたが、メールを開いてボタンを押すだけでスクリーンショットが保存され、その中身を解釈してToDoとしてまとめてくれました。最初から日本語でこれができたことは驚きでした。
黒住氏 自社だけでのAIではなく、パートナーシップの中でこの部分はどこと、ここはどことという形でやっています。アプリを選んでやるのではなく、いかに簡単かつ直感的にやれるかが重要です。ChatGPTを統合したときもそうですが、アプリではなくウィジェットから行けるようにしています。イヤフォンはダブルクリックでChatGPTを呼び出せましたが、同じことをスマホでやるなら専用ボタンがあればいいんじゃないかという話になりました。専用ボタンは僕自身大好きですが、(実装には)勇気も必要です。コストもかかりますが、それがあることで、ユーザーが確実に、簡単に、より頻繁にアクセスできるようになります。
Essential Keyのカスタマイズは議論があった
―― ただ、Essential Keyは位置的に間違って押してしまうこともありました。
黒住氏 開発チームには背面タップもあるのではとアドバイスはしましたが、慣れやすいということだとここでいいのかもしれません。僕自身も(Xperiaを開発していたときに)カメラキーを付けたら、最初は「何でここにキーを載せるの」と言われていましたが、今ではiPhoneにもカメラコントロールが載っていますし、そういう潮流はあると思っています。
―― 設定変更でアプリを割り当てられるようにするということはしないのでしょうか。
黒住氏 そこには議論がありました。キャリアがカスタマイズできるようにするという議論もありましたが、まずはこれでやってみようということになりました。今はカスタマイズできるようにするのではなく、ユーザーにシンプルな体験を提供することでこの機能を磨いていこうということです。
―― 先ほどのようにスケジューラー的に使うと、やはりPCでも保存したデータを見たくなります。今は端末に閉じていますが、クラウドで連携させて他のデバイスからもアクセスできるようにするというようにはならないのでしょうか。
黒住氏 記憶に関わることなので、情報を端末側にとどめて、まずはプライバシーを最重要視するというのが今のスタンスです。今は閉じていますが、ここからどう進化させていくのかですが、進化させるにあたっても、プライバシーはしっかり担保しておく必要があります。
―― ドロワーのジャンル分けもオンデバイスAIですよね。
黒住氏 これこそ、まさにAIの力です。Playストアのカテゴリーや使用頻度などをベースにカテゴライズできる機能を用意しています。まだβ版ですが、機能としては悪くないですよね。ただ、まだ「ソーシャル」が「社交」に直訳されてしまったりするのですが……。この辺がリソース不足の悲しいところです(笑)。
関連記事
「Nothing Phone (3a)」の実力検証 予想外に使えたAI機能、処理能力やカメラも進化した“本気”のデバイスだ
4月15日に発売された「Nothing Phone (3a)」は、Qualcommのチップを採用して処理能力を底上げしただけでなく、カメラ機能を強化。AIを活用した新機能の「Essential Space」や、それをワンプッシュで呼び出せる「Essential Key」も搭載する。発売に先立ち、Nothing Phone (3a)を試用できたので、その実力や投入の狙いを解説する。「Nothing Phone (3)」、2025年夏に発売 価格は約800ポンド(約15万円)前後に カール・ペイCEOが明言
「Nothing Phone (3)」、2025年夏に発売。価格は約800ポンド(約15万円)前後になる見込み。5月13日に開催された「Android Show: I/O Edition」において、カール・ペイCEOが明言した。Nothingが新スマホ「Phone (3a)」発売、楽天モバイルが限定色を独占販売 5万4800円から
Nothing Japanは4月8日、スマートフォンの新製品「Phone (3a)」の日本での取り扱いを発表した。楽天モバイルが限定カラーを独占販売する。背面パネルを従来のアクリルから硬質なガラスに変更し、カメラが2眼から3眼に進化した。全方位で進化を遂げた「Nothing Phone (3a)」の見どころを解説 楽天モバイルが販売する理由は?
Nothing Japanは4月8日、スマートフォンの新製品「Nothing Phone (3a)」を日本で発表した。価格は5万4800円(税込み)からとなっている。Nothingが販売パートナーに楽天モバイルを迎えた理由とは……?新色や謎のキーがある「Nothing Phone(3a)/(3a) Pro」にいち早く触れた 2モデルは何が違う?
Nothing Technologyが3月4日、最新スマートフォン「Nothing Phone(3a)」シリーズを発表した。モバイル展示会「MWC 2025」が開催されているスペイン・バルセロナで、いち早く実機に触れることができた。新たにEssentialキーが追加され、2モデルはカメラに違いがある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.