5Gマネタイズの切り札「ネットワークスライシング」始動 ドコモとソフトバンクの戦略差、海外の先行事例を読み解く:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
国内でも5G SAの普及に伴い、ネットワークを仮想的に分割するネットワークスライシングの商用化が進む。ドコモビジネスやソフトバンクは、法人向けやイベント対策での帯域確保や低遅延通信の提供を開始した。今後は海外事例のように、コンシューマー向けゲームや動画配信への応用による収益化が期待される。
5Gをマネタイズするための手段として有力視されている技術の1つである「ネットワークスライシング」が、日本でも徐々に広がり始めている。3月26日には、ドコモビジネスがドコモのネットワークで法人向けに「5Gスライシング」を開始。混雑時でも安定した通信を可能にするサービスとして、工場や放送メディアなどへの提供を視野に入れる。
ソフトバンクも、3月27日に三重県の鈴鹿サーキットで開幕した「F1日本グランプリ」で、ネットワークスライシングを導入しており、サービスごとにネットワークを切り分けて提供する。同社は2023年に「プライベート5G(共有型)」としてネットワークスライシングを提供しているが、その高度化を図る。
KDDIも2025年に放送事業向けのサービス提供を開始した。5G SAが広がりつつある中、次の一手として注目されるネットワークスライシングだが、現在は法人、それも特定業種が中心だ。一方で、導入が先行する海外キャリアではコンシューマー向けへの応用が図られているケースもある。始動しつつあるサービスや諸外国の動向から、次の一手を読み解いていきたい。
ローカル5Gより安価に安定通信を提供するドコモビジネス
ネットワークスライシングとは、仮想的にネットワークを切り分ける技術のこと。5G SAで導入された機能の1つで、端末や用途によって求められる要件に合わせてネットワークを最適化し、提供するためのものだ。通常以上の安定性が必要な場合や、遅延を低くしたいとき、さらには一定のスループットが必要なサービスを利用する際に導入される。
仮想的にネットワークを切り分けているため、ローカル5Gとは違ってその場所専用の設備を引く必要はない。一般ユーザーも混在する通常のネットワークをそのまま利用できるため、そのぶん、コストも抑えられる。実際、3月26日にサービスを開始したドコモビジネスも、ローカル5Gや通常ネットワークで優先制御を行う「5Gワイド」の中間的な特徴を持ったサービスとして5Gスライシングを導入している。
利便性の高いサービスだが、制御は5Gコアで行うため、ネットワークには5G SAが必要になる。4Gと組み合わせて使うNSAの5Gでは利用できない。ネットワークスライシングを活用したサービスの事例が増えてきた背景は、ここにある。5G SAのエリア化で先行するKDDIは、3月までに人口カバー率を90%超まで引き上げる計画。ソフトバンクは具体的な数値を明かしていないものの、2025年からエリアを急拡大させている。
こうした中、ネットワークスライシングを活用した商用サービスが徐々に増えている。上記のドコモビジネスが開始した5Gスライシングは、その1つだ。このサービスは、法人向けに常時利用プランと予約利用プランの2つを用意。一定の帯域を法人ごとに確保することで、より安定した通信を可能にする。
常時利用プランは工場や駅、空港などの敷地内で、半固定的に利用するような用途を想定。予約利用プランは、スタジアムなどでイベントの際に必要な帯域を確保するために利用する形になる。料金は確保する帯域と使用するセル(基地局がカバーする範囲)の組み合わせで決まるといい、回線ごとの課金とは異なるという。
ドコモビジネスでは、基地局などをユーザー側で設置しつつ、コアネットワークでの制御にドコモ網を使ってコストを削減した「ローカル5G TypeD」を提供しているが、これはあくまで通常のローカル5Gと比較したときの話。「月額でいうと、最終ユニット50万円ぐらいから提供している」(プラットフォームサービス本部 5G&IoT部 第二サービス部門長 岩本健嗣氏)といい、一般的な回線よりは高くなる。
これに対し、5Gスライシングは「コンシューマーも含めて通常の5G SAを構築し、その中でスライシングを含めて(帯域の)占有や安定化をやっていく」(同)ため、より安価に提供しやすい。また、通常のネットワークを利用するため、5G SAエリアであれば適用可能になる。上記の例で言えば、イベントを実施する会場を変えても利用できるメリットがある。
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